デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

デジタル手続法について(4)縦覧等、作成等のデジタル化

(縦覧等のデジタル化)

 デジタル手続法の第8条では、縦覧等のデジタル化を可能とする規定が置かれています。

 「縦覧」というのは、「自由に見ること」というのが国語的な意味ですが、法律の用語としては、国などの行政機関が、一定の書類などを、希望する人が見られるようにしておくことを、「縦覧に供する」と定めているような場合が、結構あります。

 一例を挙げると、「道路管理者は、道路の供用を開始し、又は廃止しようとする場合においては国土交通省令で定めるところにより、その旨を公示し、かつ、これを表示した図面を道路管理者の事務所において一般の縦覧に供しなければならない。」(道路法第18条第2項本文)といった感じです。

 さて、デジタル手続法における「縦覧等」のデジタル化に関する条文は、以下のようになっています。

 

(電磁的記録による縦覧等)
第八条 縦覧等のうち当該縦覧等に関する他の法令の規定において書面等により行うことが規定されているもの(申請等に基づくものを除く。)については、当該法令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、当該書面等に係る電磁的記録に記録されている事項又は当該事項を記載した書類により行うことができる
2 (略)

 

 法律等で、書面で行うこととされている縦覧等について、主務省令で定めることで、パソコン等を利用して作成した電磁的記録で行うことができることが定められています。(赤字の部分で、だいたい分かりますかね。)

 なお、縦覧等については、行政機関等の事務所に置かれているパソコンに表示する場合などもありますので、オンライン化ではなくて、デジタル化(「電磁的記録により行う」)できるという規定ぶりになっています。これは、先に見た第6条(申請等)、第7条(処分通知等)と違うところです。

 

(作成等のデジタル化)

 次に、デジタル手続法第9条では、「作成等」のデジタル化について定められています。(「作成等」の説明は不要ですよね。。)

 具体的な条文は、以下のようになっています。

 

(電磁的記録による作成等)
第九条 作成等のうち当該作成等に関する他の法令の規定において書面等により行うことが規定されているものについては、当該法令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、当該書面等に係る電磁的記録により行うことができる
2、3 (略)

 

 法律等で、書面で作成等を行うこととされている場合でも、主務省令で定めることで、パソコン等を利用して作成した電磁的記録で行うことができることが定められていますね。

 国などの行政機関が、登録簿や台帳などを書面で作成し、保存することを定めている法律もそれなりにありますので、行政のデジタル化にとっては、とても重要な規定です。オンラインで提供等を行う前提としても、書面の作成をデジタル化しておくことは必要ですね。

 

(適用除外)

 最後に、適用除外について定めた第10条をご紹介したいと思います。デジタル手続法では、第6条から第9条で、申請や処分通知などのデジタル化が可能であることが定められていましたが、デジタル化が適当でない手続や、個別の法令で独自にデジタル化が定められている手続については、第6条から第9条の規定を適用しないことが、第10条で定められています。

 「デジタル化が適当でない手続」としては、第10条第1号に「申請等に係る事項に虚偽がないかどうかを対面により確認する必要があること、許可証その他の処分通知等に係る書面等を事業所に備え付ける必要があること」が例示として定められています。まあ、そういうこともあるかなという感じですね。

 もう一方の「個別の法令で独自にデジタル化が定められている手続」については、第10条第2号で適用除外とされています。一見、なぜ適用が除外されるのか理由が分かりにくいかもしれませんが、すでに他の法令によってデジタル化がされていれば、あえてデジタル手続法でデジタル化する必要はありませんし、他の法令の下で、それぞれの手続の性質や行政事務の実態に即して、カスタマイズした形でデジタル化が導入されている場合には、それを尊重するという考え方になっているということです。

 

 以上で、デジタル手続法の主な条文については、だいたい読んでみることができたかなと、根拠はありませんが思います。ということで、デジタル手続法の条文の紹介は以上にしたいと思います。

 

(参考)

www.digital.go.jp

 

ura49.hateblo.jp

 

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