デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

行政手続等の棚卸調査について(2)

 (行政手続等の棚卸調査で分かること)

 前回からご紹介している「行政手続等の棚卸調査」ですが、せっかくエクセル表が公開されていますので、どのようなことが分かるかなど、少し具体的に紹介させていただきたいと思います。

 前回にもご紹介しましたが、行政手続等の棚卸調査では、国の行政機関(24府省)が所管する法令で定める約6万件の行政手続等について、手続名、根拠法令、手続類型、手続主体、受け手、オンライン化の状況、手続件数等を調査しています。このため、この調査によって、我が国の行政手続等の全体像を把握することができます。

 例えば、HPに掲載されている概要資料では、以下のような特徴が示されています。

○法令等に基づく手続は、全体で約62,000種類、年間25億件以上。
○ 年間1万件以上の手続は、種類数ベースでは全体の4.1%だが、件数ベースで全体の99%。

 また、以下の資料のように、手続主体や受け手別(民→国等、地方→民など)の手続数や件数の状況なども把握することができます。(参考欄に、HPのリンクを貼っておきますので、詳しくご覧になりたい方は、そちらをご参照ください。)

(R2棚卸調査概要より抜粋)

 

(個別の手続の把握)

 また、上記に示したような全体状況の把握のほかにも、各省庁別に手続数を把握したり、件数の多い手続から順に並べたりすることなどもできます。そのオンライン化の状況や見込みなども確認できますので、以下のような資料を作成したりすることができるわけですね。

(デジタル臨時行政調査会作業部会(第8回)資料1より抜粋)

 

 あとは、法律別で手続を抽出すれば、その法律で、どのような手続が定められているか調べたり、手続名等から、根拠条文を探す(エクセル表の構成上少し見にくいですが)場合にも使えたりします。

 その他、少し具体的な例ですが、この調査では、キャッシュレスの対応状況や、その場合の利用料の減額についても調査対象としています。キャッシュレス法が成立して、今後、キャッシュレス化を検討する際に、利用料をどうするかということが検討課題になったりすると思うのですが、先行事例を把握する上でも活用できると思います。

 

(民民間の手続)

 最後に、少し余談になりますが、「行政手続等の棚卸」の「等」についてですが、これは、この調査が、法令で規制されている民間同士の手続についても調査対象に含めているためです。棚卸調査の概要資料では、対象手続について「法令に基づく行政手続及び民-民手続」という注記がされています。

 民間同士の手続について、法律で規制がされている具体例として、例えば、宅地建物取引業法では、不動産の売買の場合に、不動産業者(宅地建物取引業者)に対して、契約成立後の書面(契約書)の相手方等への交付が義務づけられています。条文は、以下のような感じです。

 

(書面の交付)
第三十七条 宅地建物取引業者、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない
 一〜十二 (略) 
2、3 (略)

 

 このように民間同士(民民間)の手続について、書面の交付などが法令で義務付けられていると、デジタル化の障害になりますので、デジタル化に対応するための法整備が図られています。次回以降、こうした民民間の手続のデジタル化に関する法制度について見ていければと思っています。

 

(参考)cio.go.jp

 

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