(縦覧等のデジタル化)
前回の保存、作成に続いて、となりますが、e文書法の第5条では、民間事業者等に義務づけられた「縦覧等」のデジタル化を可能とする規定が置かれています。
以前に、デジタル手続法の第8条でも出てきましたが、「縦覧」というのは、法律の用語としては、一定の書類などを、希望する人が見られるようにしておくというような意味で、「縦覧に供する」というような形で定められている例が数多くあります。
一例を挙げると、「協会は、会員の名簿を公衆の縦覧に供しなければならない。」(老人福祉法第30条第4項)といった感じです。(適当に検索したので、趣旨や文脈は分かりませんが。。)
e文書法における条文は、以下のようになっています。
(電磁的記録による縦覧等)
第五条 民間事業者等は、縦覧等のうち当該縦覧等に関する他の法令の規定により書面により行わなければならないとされているもの(主務省令で定めるものに限る。)については、当該法令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、書面の縦覧等に代えて当該書面に係る電磁的記録に記録されている事項又は当該事項を記載した書類の縦覧等を行うことができる。
2 (略)
法律等で、書面で行うこととされている縦覧等について、省令等で定めることで、電子データ(電磁的記録)で行うことができることが定められています。(赤字の部分にあるとおりです。)
なお、縦覧等に供するには、保存されていることが大前提ですので、作成、交付等のデジタル化の規定(第4条、第6条)のように、「保存をしなければならないとされているもの」というような限定は、この条文では定められていません。
(交付等のデジタル化)
次に、e文書法の第6条では、「交付等」のデジタル化について定められています。民間事業者等が文書等を交付したり、提供したりする場合のことで、日本語的な意味と変わりませんので、特段のご説明は不要かなと思います。
具体的な条文は、以下のようになっています。
(電磁的記録による交付等)
第六条 民間事業者等は、交付等のうち当該交付等に関する他の法令の規定により書面により行わなければならないとされているもの(当該交付等に係る書面又はその原本、謄本、抄本若しくは写しが法令の規定により保存をしなければならないとされているものであって、主務省令で定めるものに限る。)については、当該他の法令の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、当該交付等の相手方の承諾を得て、書面の交付等に代えて電磁的方法であって主務省令で定めるものにより当該書面に係る電磁的記録に記録されている事項の交付等を行うことができる。
2 (略)
他の法律で書面での交付等を行うことと定められている場合でも、相手方の承諾を得て、省令等で定めることで、電子データでの交付等ができるようになる、ことが定められています。
なお、交付等の場合には、文書を受け取る相手方のことも考えてあげる必要がありますので(パソコンやインターネットが利用できない場合もありますし。。)、交付等の相手方の承諾を得ることが必要とされています(青字の部分です。)。デジタル手続法の第7条(処分通知等)でも、相手方の承諾が要件とされていましたが、同じような考え方と思ってもらってよろしいかと思います。
また、交付等の場合も、文書の保存のデジタル化というe文書法の目的にかんがみて、「法令の規定により保存をしなければならないとされているもの」に限ることとされています(条文中の下線の部分です。)。どんな文書でも、省令等で定めればデジタル化できるわけではなく、あくまで保存が義務づけられている文書が対象、ということは、誤解のないようお願いいたします。
以上で、e文書法の主な条文については、だいたい読んで、何となく理解できた感じではないかと、勝手ながら思っています。e文書法の解説は、文書管理のシステム等を提供する企業等のHPでも結構紹介されているのですが、具体的な条文に当たってみるということに、独自性とデジタル庁へのリスペクトがあると信じて、e文書法については終わりたいと思います。
次回は、e文書法に似ていて混乱しがちな電子帳簿保存法について見てみます。
(参考)