デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

電子帳簿保存法について

電子帳簿保存法とは?)

 前回まで、民間事業者等に義務付けられたの文書の保存等のデジタル化を可能とするe文書法について見てきましたが、今回は、帳簿書類などの電子データでの保存を可能とする「電子帳簿保存法」を見てみたいと思います。
 e文書法はデジタル庁の所管する法律でしたが、電子帳簿保存法国税庁所管の法律です。正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」で、1998年に制定されています。

 電子帳簿保存法は、法人税法所得税法などの国税関係の法律で定められている帳簿や書類の保存を電子データで保存することを認める法律です。電子データでの保存を認める具体的な要件は、財務省令(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則)で定められています。

 なお、国税関係書類については、この電子帳簿保存法が適用され、e文書法は適用されません(電子帳簿法の第6条に適用除外の規定が置かれています。)。

 

(法律の構成等)

 電子帳簿保存法は、全8条で構成されています。

第一条(趣旨)
第二条(定義)
第三条(他の国税に関する法律との関係)
第四条(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等)
第五条(国税関係帳簿書類の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存等)
第六条(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の適用除外)
第七条(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
第八条(他の国税に関する法律の規定の適用)

 

 第1条、第2条は、どの法律でもだいたい共通で、法律の趣旨や用語の定義が置かれています。

 第4条、第5条で、電子データやマイクロフィルム(ってなんですか?)での保存が可能であること、第7条で電子取引については、電子データで記録を保存すること、が定められてます。

 第6条は、先ほど書いた「適用除外」で、その他は、他の国税に関する法律との細かい適用関係などです。

 デジタル化に関わるのは、赤字の第4条、第5条、第7条です。これらの規定でデジタル化が可能となっていることと、国税関係書類には、e文書法は適用されないということが分かっていれば、まあいいのではないでしょうか。

 その他の細かいところや、詳細に要件を定めた省令などは、勝手なことを言うと、有資格者の方などが出てきて、「〇〇!」と怒られそうなので(特に、この法律を「でんちょうほう」などと略称してる人には要注意です。)、今回はこのくらいで勘弁してください。デジタル庁の法律ではないですし。

 

(その他)

 さて、どうでもいいことかもしれませんが、前回まで見たe文書法、デジタル手続法、キャッシュレスでは、名称に「情報通信技術」または「情報通信の技術」とありましたが、この法律では「電子計算機」となっていますね。電子帳簿法は、e文書法より前、1998年に制定されているからかもしれませんね。

 これまで見てきた法律を成立順に見ると以下のようになっています。

 

1998年 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法

2002年 行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(行政手続オンライン化法)

2004年 民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(e文書法)

2019年 情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(デジタル手続法)

2022年 情報通信技術を利用する方法による国の歳入等の納付に関する法律(キャッシュレス法)

 

 以上のように、何となく、書面での各種手続のデジタル化を可能とする法律を、過去に遡って見てきましたが、実は、電子帳簿保存法(1998)と行政手続オンライン化法(2002)の間に、IT書面一括法という、49本の個々の法律のデジタル化をまとめて行った法律(一括法)があります。せっかくなので、次回から、そのIT書面一括法での49本の改正を見ていこうかなと思います。

 

(参考)

www.nta.go.jp