デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第208回国会で成立したデジタル化関連法(3)資金決済法、電気通信事業法、高圧ガス保安法

(安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律)

 安定的かつ効率的な・・・って、すごく長い法律名だなと思ったのですが、それは誤解で、「資金決済に関する法律」等の改正でした。6月3日に成立し、10日に公布されています(法律第61号)。

 改正内容は、利用者保護等に課題があるとの指摘のある、海外における電子的支払手段(いわゆるステーブルコイン)の発行・流通の増加に対応するため、「電子決済手段等取引業等」を創設し、登録制を導入することで、適切な利用者保護等を確保することとされています。このほかに、銀行界におけるマネーロンダリング対応の共同化の動きに対応するため「為替取引分析業」の創設などの改正も行われていますが、デジタル化に関連するのは「電子決済手段等取引業等の創設」の部分かなと思います。

 以下のような条文等が新設されています。

 

(電子決済手段等取引業者の登録)
第六十二条の三 電子決済手段等取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。

 

www.fsa.go.jp

 

電気通信事業法の一部を改正する法律)

 電気通信事業法の改正法は、6月13日に成立し、17日に公布されています(法律第70号)。

 コロナ禍で、テレワークや遠隔教育などのデジタル活用の場面が増加する中で、情報通信インフラの提供を確保するため、一定のブロードバンドサービスを基礎的電気通信役務ユニバーサルサービス)に位置付け、不採算地域におけるブロードバンドサービスの安定した提供を確保するための交付金制度を創設することや、大規模な事業者が取得するインターネット利用者の情報について適正な取扱いを義務付ける規制等を盛り込んだ改正となっています。

 この法律については、経済団体からの反対で、利用者保護の規制が当初の案より後退したなどの報道もありましたので、ご存じの方も多いのではないかと思います。

 また、従来、音声通話のサービスのみがユニバーサルサービスとされてきたものを、ブロードバンドサービスにまで広げるという点で、デジタル化による社会の変化に対応した大きな意義のある改正だと思います。運用の詳細を定める省令は、ちょうど今パブコメ中のようですね。

www.soumu.go.jp

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高圧ガス保安法等の一部を改正する法律)

 高圧ガス保安法、ガス事業法、電気所業法等を改正する法律で、6月15日に成立しています。

 改正内容のうち、スマート保安の促進に関する部分については、「テクノロジーを活用しつつ、自立的に高度な保安を確保できる事業者」について、安全確保を前提に、その保安確保能力に応じて保安規制に係る手続・検査の在り方を見直すこととされています。このスマート保安の促進は、高圧ガス保安法、ガス事業法、電気所業法に共通の改正内容で、例えば、高圧ガス保安法では、以下のような条文等が新設されています。

 

(認定)
第三十九条の十三 第一種製造者は、経済産業省令で定めるところにより、第五条第一項の許可に係る事業所ごとに、高度な保安を確保することができると認められる旨の経済産業大臣の認定(以下この章において単に「認定」という。)を受けることができる。


(認定の基準等)
第三十九条の十四 経済産業大臣は、認定の申請が次の各号のいずれにも該当すると認めるときでなければ、その認定をしてはならない。
一 保安の確保のための組織がその業務遂行能力を持続的に向上させる仕組みを有することその他の経済産業省令で定める基準に適合するものであること。
二 保安の確保の方法が高度な情報通信技術を用いたものであることその他の経済産業省令で定める基準に適合するものであること。
2 (略)

 

 正に、デジタル臨調の掲げる「デジタル原則」に適合した改正内容ですね。

www.meti.go.jp

 

 今回も3つご紹介したので、とりあえずここまでにします。今回紹介した法律だけ見ても、デジタル化の進展による新しい業態への規制導入、デジタル環境のインフラ整備や利用者の保護の強化、デジタル技術の活用による規制緩和と、一口にデジタル化に関すると言っても様々な類型があることが分かりますね。(五月雨に紹介していることの表れかもしれませんが、そこはご容赦ください。閣法については、次回で、一区切りにできると思います。)

 

(参考)

www.clb.go.jp