デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第208回国会で成立したデジタル化関連法(7)困難な問題を抱える女性への支援に関する法律、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律

(困難な問題を抱える女性への支援に関する法律)

 ここからは、参法です。

 困難な問題を抱える女性への支援に関する法律は、5月19日に成立し、25日に公布されました(法律第52号)。

 困難な問題を抱える女性への支援に関する必要な事項を定め、支援施策を推進することを目的とする法律です。困難な問題を抱える女性への支援施策の実施に関する基本理念(第3条)や国・地方自治体の責務(第4条)について定めているほか、厚生労働大臣が基本方針を定め(第7条)、都道府県が基本方針に即して、基本的な計画を定めなければならない(第8条)こと等が定められています。

 デジタル化に関しては、都道府県と民間団体との協働に関して、インターネットの活用が明示されていることがあります。情報通信技術の活用で、プッシュ型支援の充実などが図られることを期待したいですね。

 

(民間の団体との協働による支援)
十三条 都道府県は、困難な問題を抱える女性への支援に関する活動を行う民間の団体と協働して、その自主性を尊重しつつ、困難な問題を抱える女性について、その意向に留意しながら、訪問、巡回、居場所の提供、インターネットの活用、関係機関への同行その他の厚生労働省令で定める方法により、その発見、相談その他の支援に関する業務を行うものとする。

2 (略)

 

 なお、この法律では、困難な問題を抱える女性の立場に立った相談、一時保護等を行う「女性相談支援センター」を都道府県が設置しなければならないこととされています(第9条)が、現在、売春防止法に基づいて設置されている婦人相談所が、女性相談支援センターとみなされるようです(附則第8条)。また、婦人補導院法が、附則で廃止されています(附則第10条)。デジタル化とは関係ありませんが、時代の変化に合わせて、これまでの女性支援施策を整理・発展させるような趣旨なのだろうなと、勝手ながら思いました。

houseikyoku.sangiin.go.jp

 

(障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律)

 障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律は、5月19日に成立し、25日に交付されました(法律第50条)。こちらも大変長い名称ですね。。

 この法律では、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにすること等を目的としています。

 基本理念に関する第3条は、以下のような内容となっており、デジタル社会の形成が念頭に置かれた規定ぶりとなっています。

 

(基本理念)
第三条 障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進は、次に掲げる事項を旨として行われなければならない。
一 障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る手段について、可能な限り、その障害の種類及び程度に応じた手段を選択することができるようにすること。
二 全ての障害者が、その日常生活又は社会生活を営んでいる地域にかかわらず等しくその必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができるようにすること。
三 障害者が取得する情報について、可能な限り、障害者でない者が取得する情報と同一の内容の情報を障害者でない者と同一の時点において取得することができるようにすること。
四 デジタル社会(デジタル社会形成基本法(令和三年法律第三十五号)第二条に規定するデジタル社会をいう。)において、全ての障害者が、高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術の活用を通じ、その必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができるようにすること。

 

 また、障害者による情報取得等に資する機器等の開発及び普及の促進を図るため、規格の標準化等の施策を講ずることとされており、関係機関として、デジタル庁も記載されていました。デジタル庁を応援する趣旨から、ご紹介しておきます。

 

(障害者による情報取得等に資する機器等)
第十一条 国及び地方公共団体は、障害者による情報の十分な取得及び利用並びに円滑な意思疎通に資する情報通信機器その他の機器及び情報通信技術を活用した役務(以下この条及び第十五条において「障害者による情報取得等に資する機器等」という。)の開発及び普及の促進を図るため、障害者による情報取得等に資する機器等に関し、開発及び提供に対する助成その他の支援、規格の標準化、障害者又はその介助を行う者(次項及び第三項において「障害者等」という。)に対する情報提供及び入手の支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 国及び地方公共団体は、障害者等が障害者による情報取得等に資する機器等の利用方法を習得することができるようにするため、障害者による情報取得等に資する機器等の利用に関し、障害者の居宅における支援、講習会の実施、障害者等からの相談への対応その他の必要な取組を自ら行うとともに、当該取組を行う者を支援するために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
3 国は、障害者による情報取得等に資する機器等の開発及び普及の促進並びに質の向上に資するよう、内閣府デジタル庁総務省厚生労働省経済産業省その他の関係行政機関の職員、障害者による情報取得等に資する機器等を開発し又は提供する者、障害者等その他の関係者による協議の場を設けることその他関係者の連携協力に関し必要な措置を講ずるものとする。

 

 「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」ということは、デジタル庁の重点計画のHPの冒頭でも掲げられています。デジタル社会の実現に向けて、とても重要な内容と思いました。

 参法については、以上の2つになります。

 

 これで、第208国会で成立したデジタル化に関する法律は、一通り見れたのではないかと思いますが、もし漏れがあったらすみません。気づいたら補足するようにします。。

 ここまで一通り法律を見てきて、デジタル化に関する規定が含まれるといっても、規定の趣旨や関連度合いは様々ということが分かりましたので、次回、少し自分なりに類型等の整理を考えてみたいと思います。

 

(参考) 

www.digital.go.jp