デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第208回国会で成立したデジタル化関連法(8)まとめ

(これまでのまとめ)

 本年1月17日から6月15日までの会期で開催された第208回通常国会では、行政キャッシュレス化法の制定や、自動運転等に対応する道路交通法の改正、民事裁判手続のデジタル化を進める民事訴訟法の改正など、デジタル化に関する重要な法律が成立しています。

 前回までで、成立したデジタル化に関連する法律について、ひと通り見てきたところですが、デジタル化に関連すると言っても、様々なものがありましたので、今回、少し類型ごとに整理して見てみたいと思います。

 

(行政手続等のデジタル化を進めるもの)

 まず、申請・交付などの行政手続や、民間間での手続に書面や対面を求める規制について、ITを活用したデジタル化を進めるという類型のものがあります。
 この類型の法律については、行政手続のオンライン化に関するデジタル手続法や、民民間の手続のデジタル化に関するe文書法などを、これまでもご紹介してきましたが、今国会では、国への納付金についてキャッシュレスでの支払いを可能とする「行政キャッスレス化法」が新たに制定されました。パスポートの申請のオンライン化を可能とする旅券法の改正もこの類型ですね。

 また、民間に求めている対面規制を緩和するものとしては、スマート保安を促進する高圧ガス保安法等の改正や、電子処方箋に関する医師法等の改正がありました。

 このほか、判決書の電子化など、民事裁判手続のデジタル化を進める民事訴訟法の改正も、デジタル化を大きく進めるものでした。

 こうやって振り返ると、結構、多くの改正がされているなと思います。なお、これらの類型については、以前ご紹介した「行政手続等の棚卸調査」でもデジタル化の状況が公表されています。

 

(デジタル化の進展に伴う人々の行動や業態の変化に対応するもの)

 次に、デジタル化の進展に伴う人々の行動や業態の変化に対応して、新たなルールを制定するものがありました。こうした類型としては、自動運転等に対応した道路交通法の改正が、最も大きなものだったかなと思います。

 また、ネット上の公表情報を収集する求人メディア等の届出制を設ける職業安定法の改正、暗号資産に関する取引を資本取引規制の対象に加える外為法の改正、「電子決済手段等取引業等」を創設し、登録制を導入する資金決済法の改正、博物館資料のデジタルアーカイブ化を博物館の事業に加える博物館法の改正、オンライン資料の収集に関する国立国会図書館法の改正なども、業態の変化に対応するものとして、この類型に入ると思います。

 このほか、サイバー犯罪への対応体制を強化する警察法の改正や、ネット上での被害の拡大防止を図るAV出演被害防止・救済法も、人々の行動(犯罪も含めて)の変化等に対応するということで、この類型に整理できるかなと思います。

 

(情報通信技術の利活用の促進を図るもの)

 三つ目の類型として、デジタル社会の実現に向けて、情報通信技術の利活用の促進を図るために、理念的な規定等を設けるものもありました。

 こども基本法、在外教育施設教育基本法、困難な女性への支援に関する法律、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律が、この類型に当たると思います。

 これらの中では、最後の「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」が、デジタル社会の形成なども念頭に置かれた理念規定が置かれていますし、情報の取得・利用の推進という法律の趣旨からも、デジタル化との関連が最も強いものかなと思います。

 

(社会的な基盤の整備に関するもの)

 最後に、デジタル化を推進するための社会的な基盤の整備に関するものとして、情報通信インフラの提供を確保する電気通信事業法の改正がありました。

 社会的基盤の整備は、情報通信技術の利活用の促進を下支えするもので、表裏一体のものとして、一つ前の「情報通信技術の利活用促進」に含めて考えることもできるかもしれませんが、システムやインフラなどは、より具体的なものですし、少し性格が違うかとも思い、とりあえず今回は、別の類型にしてみました。(このあたりの整理は、引き続き、考えてみたいと思います。)

 

(まとめ)

 以上を踏まえて、先の国会で成立したデジタル化関連法をまとめてみると、以下のような形に整理できるかと思います。

デジタル化関連法の類型整理

 とりあえず、今回で、通常国会の振り返りは終わりたいと思います。

 

(参考)

ura49.hateblo.jp

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