(押印義務の廃止)
コロナ禍で、押印を求める行政手続の押印義務の廃止が進められていますが、このうち、法律に基づく押印義務については、2021年のデジタル社会形成整備法の中で、一括改正が行われています。
これまで、金融庁、総務省関係を見てきましたが、今回は、法務省と財務省の関係法律を見ていきたいと思います。
(法務省関係の法律)
法務省関係では、デジタル社会形成整備法で、5つの法律の押印義務が廃止されています。以下、具体的な改正内容を見ていきます。
◯民法
(外国に在る日本人の遺言の方式)
第九百八十四条 日本の領事の駐在する地に在る日本人が公正証書又は秘密証書によって遺言をしようとするときは、公証人の職務は、領事が行う。この場合においては、第九百六十九条第四号又は第九百七十条第一項第四号の規定にかかわらず、遺言者及び証人は、第九百六十九条第四号又は第九百七十条第一項第四号の印を押すことを要しない。
海外で遺言をする場合の遺言者と証人の押印廃止に関するものです。一方で、国内の場合は、押印の規定ぶりは特段何も変わっていないようですね。外国の方は、印鑑持ってないでしょうし、実情には即してると思いますが。。
第四条 申請書ニハ左ノ事項ヲ記載シ申請人之ニ記名捺印スル記載スルコトヲ要ス
抵当証券交付申請書への押印廃止に関する規定です。「記名捺印」を削除して、申請書の記載事項にある「申請人ノ氏名」で対応しています。
◯戸籍法
第二十九条 届書には、左の次の事項を記載し、届出人が、これに署名し、印をおさなければ署名しなければならない。
一〜四 (略)
戸籍の届書への押印廃止に関するものです。この第29条のほか、第33条、第37条、第38条、第55条でも、同様に「署名・押印」を「署名」のみとする改正が行われています。
(議事録)
第四十二条
3 前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければ署名しなければならない。
4 第二項の場合において、議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報については、議長及び集会に出席した区分所有者の二人が行う法務省令で定める署名押印署名に代わる措置を執らなければならない。
区分所有者の集会の議事録における押印の廃止に関して、「署名押印」を「署名」のみとする改正となっています。
◯刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
(審査の申請)
第百五十七条 次に掲げる刑事施設の長の措置に不服がある者は、政令で定めるところにより、書面で、当該刑事施設の所在地を管轄する矯正管区の長に対し、審査の申請をすることができる。
一〜十六 (略)
刑事収容施設における審査の申請等に係る書面への押印廃止に関して、政令で規定したものを廃止することで対応しています。なお、第162条、第229条、第230条、第275条、第276条でも、同様の改正が行われています。
法務省関係の法律は以上です。
(財務省関係の法律)
デジタル社会形成整備法で、押印の見直しが行われた財務省関係の法律は、通関業法のみでした。以下が、改正内容です。
◯通関業法
(通関士の審査等)
第十四条 通関業者は、他人の依頼に応じて税関官署に提出する通関書類のうち政令で定めるもの(通関士が通関業務に従事している営業所における通関業務に係るものに限る。)については、通関士にその内容を審査させ、かつ、これに記名押印させなければ記名させなければならない。
(押印等の効力)(記名等の効力)
第二十一条 第十四条の規定による通関士の記名押印記名又は第十五条若しくは第十六条の規定による税関長の措置の有無は、これらの条に規定する通関書類又は更正若しくは検査に係る処分の効力に影響を及ぼすものと解してはならない。
通関士の業務における押印廃止に関するものですが、「記名押印」が「記名」のみで足りることとなっています。署名と違って、記名だと印字とかでもいいはずなので、記名だけで大丈夫なのかな、、と一瞬思ったのですが、第21条を見ると、処分等の効力に影響を及ぼさないとありますし、記名で十分という判断があったんでしょうね。
今回は、ここまでにします。これで、改正された22法律中、11法律をご紹介できました。ちょうど半分です。。
(参考)