デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

官民データ活用推進基本法(2016年)について(2)総則、基本計画の策定等

(総則の規定)

 官民データ活用推進基本法の第1章「総則」は、第1条から第7条までで、以下のような事項が規定されています。

第一条(目的)
第二条(定義)
第三条(基本理念)
第四条(国の責務)
第五条(地方公共団体の責務)
第六条(事業者の責務)
第七条(法制上の措置等)

 

 他の多くの法律と同様に、まず、目的規定(第1条)、定義規定(第2条)が置かれています。定義規定の中に、「官民データ」という根幹的な用語のほか、AI、IoT、クラウドサービスといった新たな技術に関する規定が置かれているのが特徴です。実際の条文は以下のようになっています。

(定義)
第二条 この法律において「官民データ」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録をいう。第十三条第二項において同じ。)に記録された情報(国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、又は公衆の安全の保護に支障を来すことになるおそれがあるものを除く。)であって、国若しくは地方公共団体又は独立行政法人独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)若しくはその他の事業者により、その事務又は事業の遂行に当たり、管理され、利用され、又は提供されるものをいう。
2 この法律において「人工知能関連技術」とは、人工的な方法による学習、推論、判断等の知的な機能の実現及び人工的な方法により実現した当該機能の活用に関する技術をいう。
3 この法律において「インターネット・オブ・シングス活用関連技術」とは、インターネットに多様かつ多数の物が接続されて、それらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の活用に関する技術であって、当該情報の活用による付加価値の創出によって、事業者の経営の能率及び生産性の向上、新たな事業の創出並びに就業の機会の増大をもたらし、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与するものをいう。
4 この法律において「クラウド・コンピューティング・サービス関連技術」とは、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)を他人の情報処理の用に供するサービスに関する技術をいう。

 

 「官民データ」は、行政機関が、行政手続を通じて把握するデータや、民間事業者が業務上把握するデータを含んでいることや、国の安全に関わる情報は除外されていることなどが、条文からわかります。IoTで集められたデータが、クラウドに蓄積され、これらのビッグデータをAIが分析する、という関係性を以前に聞いたことがありますが、定義規定では、これらの新たな技術の用語が含まれているわけですね。

 

 次に、第3条の理念規定は、基本法ではよく見られる種類の条文です。第4条から第6条の国、自治体、事業者の責務の規定も、基本法には置かれることが多いです。(国民の責務が置かれることも多いですが、この法律では置かれていませんね。)

 第7条の法制上の措置等は、国会が政府に宿題を出すような意味合いで置かれるものです。

 いずれも大事な条文ではありますが、概要を大まかに把握するのが目的なので、ここでは、条文の引用は控えておきます。(ご関心のある方は、eGov法令検索でご確認ください。)

 

(第2章「官民データ活用推進基本計画等」の規定)

官民データ活用の推進に関する計画の策定

 第2章では、官民データ活用の推進に関する国、自治体の計画策定について規定されています。具体的な行為を義務付ける部分なので、通常の法律だと中心部分と言って良いものだと思いますが、基本法の場合はどうなのでしょうか。。理念や基本施策の方が、基本法としては主要部分という気もしますね。

 いずれにしても、これらの条文に基づいて、国と都道府県には、官民データ活用の推進に関する計画の策定義務が課されており、市町村には、努力義務が課されています。具体的な条文は以下のとおりです。

 

(官民データ活用推進基本計画等)
第八条 政府は、官民データ活用の推進に関する施策の総合的かつ効果的な推進を図るため、官民データ活用の推進に関する基本的な計画(以下「官民データ活用推進基本計画」という。)を定めなければならない
2 官民データ活用推進基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 官民データ活用の推進に関する施策についての基本的な方針
二 国の行政機関における官民データ活用に関する事項
三 地方公共団体及び事業者における官民データ活用の促進に関する事項
四 官民データ活用に関し政府が重点的に講ずべき施策
五 前各号に掲げるもののほか、官民データ活用の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するために必要な事項
3〜4 (略)
5 政府は、官民データ活用推進基本計画を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。
6〜8 (略)
9 内閣総理大臣は、個人に関する情報をその内容に含む官民データ活用の推進に関する重要事項について、個人情報保護委員会との緊密な連携を図るものとする

都道府県官民データ活用推進計画等)
第九条 都道府県は、官民データ活用推進基本計画に即して、当該都道府県の区域における官民データ活用の推進に関する施策についての基本的な計画(以下この条において「都道府県官民データ活用推進計画」という。)を定めなければならない
2 都道府県官民データ活用推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 都道府県の区域における官民データ活用の推進に関する施策についての基本的な方針
二 都道府県の区域における官民データ活用の推進に関する事項
三 前二号に掲げるもののほか、都道府県の区域における官民データ活用の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するために必要な事項
3 市町村特別区を含む。以下この条において同じ。)は、官民データ活用推進基本計画に即し、かつ、都道府県官民データ活用推進計画を勘案して、当該市町村の区域における官民データ活用の推進に関する施策についての基本的な計画(次項において「市町村官民データ活用推進計画」という。)を定めるよう努めるものとする
4 都道府県又は市町村は、都道府県官民データ活用推進計画又は市町村官民データ活用推進計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

 

 国の官民データ活用推進基本計画は、現在、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」として閣議決定され、デジタル庁のHPで公表されています。都道府県、市町村の計画についてもインターネット等で公表するよう規定されています。

 

個人情報保護委員会との連携

 なお、第8条第9項では、個人情報保護委員会との連携についての規定が置かれています(青文字の部分)が、この第9項は、2021年にデジタル社会形成基本法が制定された際に、附則で追加されたものです。データ活用の推進と個人情報の保護のバランスを取りながら施策を推進していくことが、基本計画策定の際から担保されているわけですね。

 個人情報保護については、各自治体の個人情報保護条例のルールなどがバラバラで、データ提供に関して、様々な実務上の問題が起きていました(いわゆる「2000個問題」)。このような課題を解決するために、2021年のデジタル社会形成整備法で、個人情報保護制度の見直しが行われており、その際に、この項が追加されたという背景があります。

 

 個人情報保護制度の見直しについては、また改めて見ておきたいなと思いますが、とりあえず、今回は、ここまでにしたいと思います。

 

(参考)

elaws.e-gov.go.jp

www.digital.go.jp