デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

官民データ活用推進基本法(2016年)について(3)基本的施策

(基本的施策)

 官民データ活用推進基本法の第3章「基本的施策」は、第10条から第19条までで、以下のような事項が規定されています。


第三章 基本的施策
第十条(手続における情報通信技術の利用等)
第十一条(国及び地方公共団体等が保有する官民データの容易な利用等)
第十二条(個人の関与の下での多様な主体による官民データの適正な活用)
十三条(個人番号カードの普及及び活用に関する計画の策定等)
第十四条(利用の機会等の格差の是正)
第十五条(情報システムに係る規格の整備及び互換性の確保等)
第十六条(研究開発の推進等)
第十七条(人材の育成及び確保)
第十八条(教育及び学習の振興、普及啓発等)
第十九条(国の施策と地方公共団体の施策との整合性の確保等)

 

 この中で、いくつか注目すべき条文を、独断と偏見で見ていきたいのですが、まず第10条は、行政手続のオンライン化を原則とするよう定めていて、2019年のデジタル手続法につながるものです。すでに前々回に見たので、条文の引用は省略します。

 

第十一条(国及び地方公共団体等が保有する官民データの容易な利用等)

 第11条では、国や地方自治体が保有するデータのり活用を促進する、いわゆる「オープンデータ」の取組を進めることについて規定されています。この法律の趣旨を最も直接的に体現した条項と思いますので、まずは引用しておきます。

 

(国及び地方公共団体等が保有する官民データの容易な利用等)

第十一条 国及び地方公共団体は、自らが保有する官民データについて、個人及び法人の権利利益、国の安全等が害されることのないようにしつつ、国民がインターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて容易に利用できるよう、必要な措置を講ずるものとする。

 

 なお、この条文の第2項では、事業者の責務(努力義務)、第3項では、著作権等の制度の見直しについて規定されていますが、とりあえず、省略します。

 「オープンデータ」の定義として、国のオープンデータ基本指針では、(1)営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの、(2)機械判読に適したもの、(3)無償で利用できるもの、と要件を示しています。(詳細は、デジタル庁のHPの資料を御覧ください。)

 本条文で求められている、国・自治体の「オープンデータ」の取組については、システム面での互換性が重要で、第15条とも関わりが深いので、続けて見ておきたいと思います。

 

第十五条(情報システムに係る規格の整備及び互換性の確保等)

 第15条では、国・自治体が連携して、システムの標準化等を進めるべきことが規定されています。条文は、以下の通りです。

(情報システムに係る規格の整備及び互換性の確保等)
第十五条 国及び地方公共団体は、官民データ活用に資するため、相互に連携して、自らの情報システムに係る規格の整備及び互換性の確保、業務の見直しその他の必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、多様な分野における横断的な官民データ活用による新たなサービスの開発等に資するため、国、地方公共団体及び事業者の情報システムの相互の連携を確保するための基盤の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。

 

 タイトルの通りの条文ですので、特に詳しいご説明等は不要かなと思います。本法律の第19条には、国のと自治体の施策との整合性の確保について定められていますが、この第15条は、システム面での整合性の確保を規定したものと見ることもできるかと思います。(前回少し触れた個人情報保護制度の「2000個問題」への対応は、ルール面での整合性の確保の話ですね。)

 なお、自治体のシステムの標準化については、2021年に、デジタル改革関連法の一つとして、自治体システム標準化法(「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」)が制定されています。

 

十三条(個人番号カードの普及及び活用に関する計画の策定等)

 第13条では、マイナンバーカードの普及と活用について規定されています。デジタル化を進めるための基盤的な制度ですので、ここでもさらなる取組の推進が求められているということだと思います。(これも多言は不要かと。)

 

(個人番号カードの普及及び活用に関する計画の策定等)
十三条 国は、個人番号カード(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第二条第七項に規定する個人番号カードをいう。以下この項において同じ。)の普及及び活用を促進するため、個人番号カードの普及及び活用に関する計画の策定その他の必要な措置を講ずるものとする。

 

第十四条(利用の機会等の格差の是正)

 第14条では、デジタルデバイド是正のための措置をとることが規定されています。

(利用の機会等の格差の是正)
第十四条 国は、地理的な制約、年齢、障害の有無等の心身の状態、経済的な状況その他の要因に基づく情報通信技術の利用の機会又は活用のための能力における格差の是正を図るため、官民データ活用を通じたサービスの開発及び提供並びに技術の開発及び普及の促進その他の必要な措置を講ずるものとする。

 

 デジタルデバイドについては、デジタル化に関するあらゆる取組に、必ずついて回る問題ですね。デジタル庁のミッションとして「誰一人取り残されない、人にやさしいデジタル化を。」と掲げられていることも、デジタルデバイド是正の重要性が現れていると思います。

 

 以上で十分とは言えないとは思いますが、基本的施策の半分程度の条文には当たれましたし、とりあえず、どのような規定があるかなどは、概観できたのではないかと思います。

 今回までで、当初の目的は達成できたかなと思いますが、次回に、棚卸調査との関係など、官民データ活用推進基本法に関する、少し補足的なことを記載しておきたいと思います。

 

(参考)

www.digital.go.jp

ura49.hateblo.jp