(デジタル手続法に基づく主務省令)
デジタル手続法については、以前に法律の構成や主な条文について見てきましたが、実際に申請や処分通知などの行政手続をデジタル化するには、各省庁で省令等を定めることが必要でした。その「主務省令」の一覧も以前に乗せておいたのですが、実際にどのような定め方になっているのか、少しその内容を見ておければと思います。
主務省令については、デジタル手続法の第18条に定められていて、様々な形のものがありますが、各省の所管法令に通則的に適用されるものが、典型的なものかと思いますので、まずは、法務省令を例に見てみたいと思います。
(主務省令)
第十八条 この法律における主務省令は、手続等に関する他の法令(会計検査院規則、人事院規則、公正取引委員会規則、国家公安委員会規則、個人情報保護委員会規則、カジノ管理委員会規則、公害等調整委員会規則、公安審査委員会規則、中央労働委員会規則、運輸安全委員会規則及び原子力規制委員会規則を除く。)を所管する内閣官房、内閣府、デジタル庁又は各省の内閣官房令、内閣府令、デジタル庁令又は省令とする。ただし、会計検査院、人事院、公正取引委員会、国家公安委員会、個人情報保護委員会、カジノ管理委員会、公害等調整委員会、公安審査委員会、中央労働委員会、運輸安全委員会又は原子力規制委員会の所管に係る手続等については、それぞれ会計検査院規則、人事院規則、公正取引委員会規則、国家公安委員会規則、個人情報保護委員会規則、カジノ管理委員会規則、公害等調整委員会規則、公安審査委員会規則、中央労働委員会規則、運輸安全委員会規則又は原子力規制委員会規則とする。
(デジタル手続法に基づく法務省令)
デジタル手続法に基づく、法務省の「主務省令」として定められているのは、「法務省の所管する法令の規定に基づく情報通信技術を活用した行政の推進等に関する規則」になります。
全体の構成としては、以下の通り、6条で構成されています。意外と単純ですね。
第一条(趣旨)
第二条(定義)
第三条(申請等の指定)
第四条(電子情報処理組織による申請等)
第五条(処分通知等の指定)
第六条(電子情報処理組織による処分通知等)
趣旨、定義については、特に触れるようなことはないのですが、第1条で、デジタル手続法(正式名称:「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」)を「情報通信技術活用法」と略称していることが、少し新鮮でした。
第3条、第4条は、申請関係、第5条、第6条は、処分通知関係となっています。条文は、それぞれ対になっていて、対象となる手続は、第3条と第5条で定められていて、オンラインでの手続を行う際の要件などは、第4条と第6条で定められています。
ちなみに、第3条の条文は、以下のとおりです。
(申請等の指定)
第三条 電子情報処理組織を使用して行うことができる法務省の所管する法令の規定に基づく申請等は、他の法令に定めのあるものであって、行政機関等が定める条件に適合するものとする。
「行政機関の定める条件に適合する」との要件がありますので、実際に対象になる手続か否かは、さらに下位の規定等を確認しないといけないですね。なお、第5条には、このような要件はありませんので、主に、申請時の本人確認などの必要性の観点から、このような留保がついているのかなと思っているのですが、、どうでしょうか。。
次に、第4条の条文は、以下のとおりです。
(電子情報処理組織による申請等)
第四条 情報通信技術活用法第六条第一項に規定する主務省令で定める電子情報処理組織は、行政機関等の使用に係る電子計算機と申請等をする者の使用に係る電子計算機であって行政機関等の定める技術的基準に適合するものとを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。
2 前条の申請等を行う者は、行政機関等の定めるところに従い、当該申請等に関する法令の規定において申請等の際に通知すべきこととされている事項に係る情報を、これについて電子署名を行い、送信しなければならない。ただし、電子署名以外の行政機関等の指定する方法により当該申請等を行った者を確認するための措置を講ずる場合は、この限りでない。
3〜5 (略)
6 情報通信技術活用法第六条第六項に規定する主務省令で定める場合は、次の各号に掲げる場合とする。
一 申請等をする者について対面により本人確認をする必要があると行政機関等が認める場合
二 申請等に係る書面等のうちにその原本を確認する必要があると行政機関等が認める場合
こちらも、実際の判断基準は、行政機関等の定めに委任されているので、下位の定め等を確認してみないといけないですね。第6条も概ね同様の作りになっています。
(行政機関等の裁量)
以上のように、法務省の「主務省令」は、単純な作りでしたが、実質的な要件等については、(より下位の規定である)行政機関等の定め等に大きく委任している結果のようですね。手続きに関しては、行政機関等の裁量に任されている部分が大きいと言ってもいいのかもしれません。
なお、「行政機関等」の定義は、デジタル手続法第3条第2号に置かれていますが、国の省庁のほか、地方自治体も含まれています。戸籍関係など、市町村が扱う事務も数多くありますので、地方自治体の判断に委ねている部分も大きいのかなと思いました。(これも僕の勝手な推察ですが。。)
この法務省令を受けて、各行政機関がどのような定め等を置いているのかが気になるところですが、そもそも、このような規定ぶりが通常なのかも気になりますので、次回は、他の省の例も確認してみたいと思います。
(参考)