デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

e-文書法に基づく主務省令(2)法務省令

e-文書法に基づく法務省令)

 前回に続いて、e-文書法の「主務省令」について見ていきたいと思います。

 建制順に、総務省をと思ったのですが、e-文書法に基づく総務省の「主務省令」は、個別法を対象としたものが複数あるという感じで、通則法的なものはなさそうでしたので、今回は、法務省令を見てみたいと思います。

 e-文書法に基づく、法務省の「主務省令」として定められているのは、「法務省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する規則」になります。

 全体の構成としては、以下の通り、12条(と別表)で構成されています。前回ご紹介した外務省令が4条だったのと比べると、かなり多いですね。

第一条(趣旨)
第二条(定義)
第三条(保存の指定)
第四条(保存の方法)
第五条(作成の指定)
第六条(作成の方法)
第七条(作成において氏名等を明らかにする措置)
第八条(縦覧等の指定)
第九条(縦覧等の方法)
第十条(交付等の指定)
第十一条(交付等の方法)
第十二条(交付等の承諾)

 

 趣旨、定義について、第1条、第2条で、ごく簡単に規定されているのは、外務省令と同じです。その後、保存(第3条、第4条)、作成(第5条〜第7条)、縦覧(第8条、第9条)、交付(第10条〜第11条)と、e-文書法の条文の構成に対応したような作りとなっています。

 

(適用対象の指定に関する規定)

 e-文書法に基づく主務省令の適用対象の指定は、具体的には別表で定められています。このような形は、外務省令と同様なのですが、e-文章法の適用対象とならないものについても、定めているという特徴があります。

 わかりにくいと思うので、実際の条文と別表のタイトルを見てみますと、以下のようになっています。

(保存の指定)
第三条 民間事業者等が電磁的方法により行うことができる法務省の所管する法令の規定に基づく保存は、別表第一から別表第二の二までに掲げる保存とする。


別表第一(第三条関係 法の適用対象のもの)
別表第二の一(第三条関係 法の適用対象のもの)
別表第二の二(第三条関係 法の適用対象外であるが、本省令の適用対象とするもの

 

 このように、e-文書法の対象外であるものについても、併せて定めているという特徴があります。

 「e-文書法の対象外」ということの意味ですが、まず、もともとの個別法で、書面での保存が定められている場合には、e-文書法に基づいて主務省令で定めることで、電磁的記録での保存ができるわけで、これが基本です。ですが、例えば、もともとの個別法で「帳簿を保存すること」など、書面という限定がされていない場合、その方法はある程度自由に省令で定められますので、あえてe-文書法によらなくても電磁的記録で行うことを省令で定めることができるわけです。

 

 ちなみに、この省令の制定文を見ると、以下のようになっています。

民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成十六年法律第百四十九号)第三条第一項、第四条第一項及び第三項、第五条第一項並びに第六条第一項並びに民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行令(平成十七年政令第八号)第二条第一項の規定に基づき、並びに法務省の所管する法令を実施するため法務省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する規則を次のように定める。 

 

 この赤字の部分が、この省令が、e-文章法の適用対象外の法律の実施のための規定でもあるということを示しています。まあ、どうでもいいですかね。。

 

(縦覧、交付に関する規定)

 縦覧、交付に関する規定が置かれているのも、外務省例との違いになります。

 最後に、この条文を参考に見てみたいと思います。

(縦覧等の方法)
第九条 民間事業者等が、前条の縦覧等を行う場合は、民間事業者等の事務所に備え置く電子計算機の映像面に当該縦覧等に係る事項を表示する方法又は電磁的記録に記録されている当該事項を記載した書類による方法により行わなければならない。

(交付等の方法)
第十一条 民間事業者等が、前条の交付等を行う場合は、次に掲げる方法により行わなければならない。
一 電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの
イ 民間事業者等の使用に係る電子計算機と交付等の相手方の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
ロ 民間事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された当該交付等に係る事項を電気通信回線を通じて交付等の相手方の閲覧に供し、当該相手方の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該事項を記録する方法(法第六条第一項に規定する方法による交付等を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては、民間事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法)
二 磁気ディスク等をもって調製するファイルに当該交付等に係る事項を記録したものを交付する方法
2 前項に掲げる方法は、交付等の相手方がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものでなければならない

 

 まず、縦覧については、インターネットの利用などではなくて、事務所のPCの画面で見れるという形のようですね。そもそも、e-文書法がそういう規定ですし、本来書面で備え置いて閲覧させれば良いものを、インターネットで公表させるのは、民間事業者の負担増になってしまいますから仕方ないのでしょうね。

 交付については、第1項第2号では、磁気ディスクなどの記録媒体での交付も想定しているようです。また第2項にあるように、最終的には、紙に印刷して使用することを想定したような規定ぶりとなっています。

 これらの規定は、自動化・機械化も視野に入れた、今のデジタル化の水準からすると、少し旧い規定になっているように思われますね。あとから見た人間の勝手な言い分だとは思いますが。。

 

 今回の法務省令が、おそらく「主務省令」の典型的な形のような気がするのですが、もう少しだけ、他の例についても見てみたいと思います。

 

(参考)

ura49.hateblo.jp