デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

デジタル法令用語:記録媒体(電磁的記録媒体)

(だいたいの意味)

 「記録媒体」というのは、DVDやUSBメモリなどの、データを保存する媒体のことです。より明確に「電磁的記録媒体」としている例や、「磁気ディスク」等の個別の名称で規定されている場合もありますが、コンピューターで読み込んで使うことが前提のデータを記録する媒体です。(「電磁的記録」を参照ください。)IT関係の用語だと、記憶媒体も多く用いられるようですが、法令用語としては「記録」媒体の語が使われます。

 一般的に、記録媒体・記憶媒体という場合には、ハードディスクなども含めて、電磁的情報を記録、伝達するための物や装置を広く指すことも多いですが、法令用語としては、「記録媒体を交付」「記録媒体を添付」「記録媒体を発送」のように、データの物理的な受け渡しの手段として用いられる物を指している場合が多いです。

 

(法令上の定義)

 法令上の定義としては、公的個人認証法などにおいて、「電磁的記録に係る記録媒体」という定義が置かれています。だいたい、文字通りですね。

電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号)
(署名用電子証明書の発行)
第三条 
4 住所地市町村長は、前項の規定により署名利用者確認をしたときは、主務省令で定めるところにより、当該申請者の署名利用者符号及びこれと対応する署名利用者検証符号を作成し、これらを当該申請者の個人番号カード(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第七項に規定する個人番号カードをいう。第二十二条第四項及び第三十八条の二第一項において同じ。)その他の主務省令で定める電磁的記録媒体(電磁的記録に係る記録媒体をいう。以下同じ。)に記録するものとする。

 

 なお、機器に内蔵する記録媒体を含むような規定ぶりのもの(著作権法第47条の4第2項第1号)、記憶機器と区別する規定ぶりのもの(不正競争防止法第19条第1項第9号)、記録媒体を使用する方法とネットワークを通じた方法とを区別する規定ぶりのもの(サイバーセキュリティ基本法第2条)などがありますが、内蔵される場合は、「内蔵記録媒体」と別の定義が置かれていますし、単に記録媒体という場合には、可動性のある物を指していると考えるのが自然だと思われます。以下、それぞれの例です。

 

著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)
(電子計算機における著作物の利用に付随する利用等)
第四十七条の四
2 
一 記録媒体を内蔵する機器の保守又は修理を行うために当該機器に内蔵する記録媒体(以下この号及び次号において「内蔵記録媒体」という。)に記録されている著作物を当該内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録し、及び当該保守又は修理の後に、当該内蔵記録媒体に記録する場合

 

不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)
(適用除外等)

第十九条 
九 第二条第一項第十七号及び第十八号に掲げる不正競争 技術的制限手段の試験又は研究のために用いられる同項第十七号及び第十八号に規定する装置、これらの号に規定するプログラム若しくは指令符号を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、若しくは当該プログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為又は技術的制限手段の試験又は研究のために行われるこれらの号に規定する役務を提供する行為

◯サイバーセキュリティ基本法(平成二十六年法律第百四号)
(定義)

第二条 この法律において「サイバーセキュリティ」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式(以下この条において「電磁的方式」という。)により記録され、又は発信され、伝送され、若しくは受信される情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の当該情報の安全管理のために必要な措置並びに情報システム及び情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保のために必要な措置(情報通信ネットワーク又は電磁的方式で作られた記録に係る記録媒体(以下「電磁的記録媒体」という。)を通じた電子計算機に対する不正な活動による被害の防止のために必要な措置を含む。)が講じられ、その状態が適切に維持管理されていることをいう。

 

(その他の用例)

◯預託等取引に関する法律(昭和六十一年法律第六十二号)
(確認の申請)
第十条 
3 前項の場合において、定款、貸借対照表又は損益計算書が電磁的記録で作成されているときは、書類に代えて電磁的記録に係る記録媒体を添付することができる。

 

保険業法(平成七年法律第百五号)
(保険契約の申込みの撤回等)
第三百九条 
4 次の各号に掲げるものにより行う保険契約の申込みの撤回等は、当該各号に定める時に、その効力を生ずる。
一 書面 当該書面を発した時
二 記録媒体に記録された電磁的記録 当該記録媒体を発送した時

 

 当初、単純に考えていたのですが、一般的な用語・用法とずれてると思われる例もあって、少し苦労しました。。今回はとりあえず、ここまでで。