デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

契約書面の電子化とクーリングオフ(2021年特定商取引法改正)

(9月13日の河野デジタル大臣会見)

 昨日、発言概要がアップされた9月13日の河野デジタル大臣の会見で、契約書面の電子化とクーリングオフの起算点について、繰り返し質問がされていました。昨年改正された特定商取引法に関することらしいのですが、まずは、該当部分を抜粋しておきます。

(問)書面電子化について質問させてください。消費者庁の検討会で全く俎上に上がっていなかったものが突然導入されて、180を超える消費者団体や地方議会から反対の意見が出て取りあえず削除を求めたのですが、国会では施行期日が1年延長されて今検討されています。よりによってなんですけれども、メールの到着時点がクーリングオフの起算点に繋がる契約書面の電子化が、高齢者の消費者被害が多い訪問販売や電話勧誘販売から導入されることになっています。クーリングオフの起算点になる到着時点ていうのがプロバイダーのデータサーバーに到着した時点で、このプロバイダーはログを提供してくれませんし、内容も確認させていただけないため、到着したことの立証は非常に難しいです。そういう状況の中で、消費者が見落として気づかなければクーリングオフ期間が過ぎてしまうような状況があります。大臣はこの問題点をどういうふうにお考えになりますか。

(答)ごめんなさい。あんまりよくわかんないんだけど・・・

(問)要するに、その勝手に真意の同意を取るっていうことが条件になっているんですけれども、そのメールが到着したことを気づかなければ、8日間のクーリングオフ期間が過ぎてしまうということがあるということです。ここの仕組みを何とかもうちょっと工夫していただかないと、なかなか難しい状況があると。高齢者が勝手に騙されて、その書面電子化の方に誘導されないっていうことは、当然、何らかの措置が必要になるとは思うんですが、高齢者はその契約書面があることで、周りの人が被害に気づいてくれる状況がありましたので、その辺もぜひご配慮をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

(答)高齢者がなかなかデジタルの利用に不慣れだよね、デジタルの中だけで完結すると周りの人が気づかなかったりということがあるよね、というのは仰る通りだと思いますので、そういう方の不利益にならないように、どういう方策をとったらいいのという議論を今してもらっているというふうに思っておりますので、もう少々議論の行方を見守っていただきたいと思います。

(問)先程の起算点のところの仕組みも、もうちょっと見直していただきたい。高齢者だけの問題ではないんじゃないかなと思っているところがありますので、よろしくお願いします。メールが到着した時点からクーリングオフが始まるということです。だから気づかなければ、メールに気づかなければ、クーリングオフが過ぎてしまうということです。

(答)メールと郵便と違うルールが・・・違わないよね。ちょっとみてみましょう。

 

(契約書面の電子化とは?)

 なんか、予告もなく質問されて、河野大臣も困っているような感じですが、調べてみたところ、2021年に成立した「消費者被害の防⽌及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の⼀部を改正する法律」によって、特定商取引法の一部が改正され、従来、事業者が消費者に対して書面で交付することとされていた契約書面の電子化が図られたことの関係のようです。

 この改正で、特定商取引法の第4条に第2項が追加となり、従来の書面での交付に代えて、契約書面等の電磁的方法(電子メールの送付等)による提供も可能となりましたが、電磁的方法に不慣れな高齢者層への配慮やクーリングオフの起算日の検討などが必要ということで、衆議院で施行期日が延期される修正がなされています。結果、施行日は「公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日」(2023年6月15日までの政令で定める日)となっています。現時点では未施行です。

 未施行部分の条文は以下のとおりです。

(訪問販売における書面の交付)
第四条 (略)
2 販売業者又は役務提供事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該申込みをした者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて主務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により提供することができる。この場合において、当該販売業者又は当該役務提供事業者は、当該書面を交付したものとみなす。

 

 こうした背景を知って、会見の質問を見ると意味が分かってくるのですが、やはり唐突感はありますね。。

 

クーリングオフの通知の電子化)

 このときの改正で、クーリングオフの通知の電子化も可能となったようです。

 従来、クーリングオフの通知は書面によることが必要でしたが、改正によって電子メール等の電磁的方法での通知が可能となりました。こちらは、消費者の側がクーリングオフをするときの書面の話ですね。契約書面のような消費者側に不利な事情もなく、今年の6月に施行になっています。

 条文が異常に長いのですが、、一応、載せておきます。

(訪問販売における契約の申込みの撤回等)
第九条 販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた場合若しくは販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等において特定顧客から商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合(営業所等において申込みを受け、営業所等以外の場所において売買契約又は役務提供契約を締結した場合を除く。)若しくは販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等において特定顧客と商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合におけるその購入者若しくは役務の提供を受ける者(以下この条から第九条の三までにおいて「申込者等」という。)は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によりその売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又はその売買契約若しくは役務提供契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、(略)
2 申込みの撤回等は、当該申込みの撤回等に係る書面又は電磁的記録による通知を発した時に、その効力を生ずる。

 

 以上のような背景があって、消費者庁で関連の検討会が行われている、ということですね。何が起きているか分かりましたので、今回はここまでにします。そういえば、河野大臣は消費者担当大臣でもありましたね。

 

(参考)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/meeting_materials/review_meeting_002/

www.digital.go.jp