デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

デジタル法令用語:公的個人認証

(だいたいの意味)  

 公的個人認証サービスとは、オンラインで行政手続等を行う際に、他人による「なりすまし」などを防ぐために用いられる本人確認の手段で、申請等の手続の際に、マイナンバーカード等を使った「電子利用者証明」を利用できるようにするための仕組みです。この公的個人認証の仕組みは、公的個人認証法(電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律)で定められていますが、法律の名前にある通り、地方公共団体システム機構(J-LISが、認証局としての業務を行う形の仕組みが定められています。)

 少し細かく言うと、マイナンバーカード等のICカード部分に「電子証明書」と呼ばれるデータを記録し、その電子証明書を利用することで、申請等の手続の際に、申請者が本人であることなどの証明を行うものです。電子証明書の発行は、J-LISが行います。

 

 電子証明書には、署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書の2種類があります。

 「署名用電子証明書」は、いわゆる電子署名のためのもので、例えば、e-tax等で電子文書を作成・送信する際などに利用するものです。「作成・送信した電子文書が、利用者が作成した真正なものであり、利用者が送信したものであること」を証明することができます。(実際の契約で言えば、実印での押印+印鑑証明書の添付に近いでしょうか。)

 「利用者証明用電子証明書」は、利用者の本人確認のためのもので、例えば、住民票の写し等のコンビニ交付などの際に、コンビニ交付の端末等にログインする際に利用するものです。、「ログインした者が、利用者本人であること」を証明することができます。(実際の手続では、本人確認のための免許証の提示などに近いでしょうか。)

 

(法令上の定義)

 「公的個人認証」の仕組みについては、「電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律」で定められていて、「電子利用者証明」「署名用電子証明書」「利用者証明用電子証明書」等について、以下のように定義されています。

(定義)
第二条 
2 この法律において「電子利用者証明」とは、電気通信回線に接続している電子計算機を利用しようとする者がその利用の際に行う措置で、当該措置を行った者が機構が当該措置を行うことができるとした者と同一の者であることを証明するものであって、主務省令で定める基準に適合するものをいう。

(署名用電子証明書の発行)
第三条 住民基本台帳に記録されている者は、その者が記録されている住民基本台帳を備える市町村(特別区を含む。以下同じ。)の市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)を経由して、機構に対し、自己に係る署名用電子証明書(署名利用者検証符号が当該署名利用者のものであることを証明するために作成される電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)をいう。以下同じ。)の発行の申請をすることができる。

 (利用者証明用電子証明書の発行)
第二十二条 住民基本台帳に記録されている者は、住所地市町村長を経由して、機構に対し、自己に係る利用者証明用電子証明書(利用者証明利用者検証符号が当該利用者証明利用者のものであることを証明するために作成される電磁的記録をいう。以下同じ。)の発行の申請をすることができる。

 

(用例)

◯特定複合観光施設区域整備法(平成三十年法律第八十号)学校教育の情報化の推進に関する法律(令和元年法律第四十七号)
(入退場時の本人確認等)
第七十条 カジノ事業者は、入場者について、当該入場者がカジノ行為区画に入場しようとする時及びカジノ行為区画から退場しようとする時ごとに、当該入場者から行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第七項に規定する個人番号カード(本邦内に住居を有しない日本人及び外国人並びに本邦内に住居を有する外国人であって住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第三十条の四十五の表の上欄に掲げる者(以下この項において「中長期在留者等」という。)以外のものにあっては、旅券(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第二条第五号に掲げる旅券をいう。)その他の特定の入場者を識別することができるものとしてカジノ管理委員会規則で定めるもの)の提示を受け、当該入場者から当該個人番号カードに記録された署名用電子証明書電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号)第三条第一項に規定する署名用電子証明書をいう。)の送信を受ける方法その他の特定の入場者の識別及び当該入場者に係る入場等回数の確認をすることができるものとしてカジノ管理委員会規則で定める方法により、本人特定事項(氏名、住所等(本邦内に住居を有する日本人及び中長期在留者等にあっては住所を、本邦内に住居を有しない日本人にあっては本籍地都道府県名を、中長期在留者等以外の外国人にあっては国籍をいう。)、生年月日及び写真をいう。以下この条において同じ。)及び当該入場者が前条の規定によりカジノ施設に入場させ、又は滞在させてはならないこととされている者(以下この節において「入場禁止対象者」という。)に該当しないことの確認をしなければならない。この場合において、カジノ事業者は、カジノ管理委員会規則で定めるところにより、次に掲げる事項について記録を作成し、これを保存しなければならない。

 

航空法関係手数料令(平成九年政令第二百八十四号)(無人航空機の登録等に係る手数料の額)
第八条 
2 前項の規定にかかわらず、同項に規定する者が当該登録等の申請を電子申請(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成十四年法律第百五十一号)第六条第一項の規定により同項に規定する電子情報処理組織を使用して行う申請をいう。以下同じ。)により行う場合における手数料の額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
一 当該登録等の申請を行う者が国土交通大臣に対し、個人番号カード(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第七項に規定する個人番号カードをいう。)に記録された利用者証明用電子証明書電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号)第二十二条第一項に規定する利用者証明用電子証明書をいう。)を送信する方法により本人であることの確認を受ける場合その他これに類するものとして国土交通省令で定める場合 九百円(当該登録等の申請を行う者が同時に他の登録等の申請を行う場合における当該他の登録等の申請にあっては、八百九十円)

 

 上記の用例からも分かるように、個人認証用の電子証明書(データ)は、マイナンバーカードのICチップに記録されているわけですが、ICチップには、氏名や住所、顔写真などのマイナンバーカードの券面の情報が格納されいるので、このデータが使われることになります。(ICチップに税や年金などの情報が入っているの誤解されている方もいるようですが、そういう情報はICチップには記録されていません。)
 なお、ICチップは、法令用語では「半導体集積回路」と表現されていて、公的個人認証法の施行規則では「個人番号カードその他の半導体集積回路を一体として組み込んだカード」との規定があります。これは、またにします。