デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

(まとめ)デジタル化に関する法制度(行政手続編)①法制度の展開

 市役所などの行政機関への申請や届出の手続がスマホなどからオンラインでできる機会が増えてきています。これは、2000年以降、徐々に進められてきた行政手続などのオンライン化の動きが、コロナ禍で一気に加速化されたものですが、その背景には手続等を定める法制度のデジタル化があります。
 こうした行政手続のデジタル化に関する法制度について、簡単にまとめておきたいと思います。

デジタル化に関する法制度の展開

基本法の制定

 これまで、2000年以降に行政手続等のデジタル化が推進されてきたと述べましたが、これは、2000年のIT基本法の制定が、デジタル化に関するその後の法制度の展開につながる大きな出発点となっていると考えられるためです。

 デジタル化に関する法制度の展開について、大雑把にいえば、まず2000年にIT基本法による政策目標等の設定がなされ、その後、行政手続のデジタル化を具体的に進める法律の制定・改正等が進められてきたという流れになっています。デジタル化に関する政策の一部分を構成するものとして、行政手続のデジタル化が進められてきたと理解してもよいのかなと思います。

 なお、IT基本法は、その後、2021年にデジタル社会形成基本法が制定された際に廃止されています。現在の法体系としては、デジタル社会形成基本法がデジタル化の推進(デジタル社会の実現)に関する政策目標等を定めています。

 また、IT基本法が成立した後に、デジタル化の進展により⽣じた社会経済構造の変化に対応するために、「サイバーセキュリティ基本法」「官民データ活用推進基本法」が制定されていますが、ここでは紹介にとどめておきます。

◯IT基本法(2000年)
◯サイバーセキュリティ基本法(2014年)
◯官民データ活用推進基本法(2016年)
◯デジタル社会形成基本法(2021年)

 

行政手続に関する主な法律

 IT基本法の第13条には、施策の実施のために必要な法制上の措置を講ずることが定められていましたが、この規定を受けて、2002年には、申請・届出等の行政手続のデジタル化を可能とする「行政手続オンライン化法」や、申請・届出等の手続をオンラインで行う際の本人確認のための仕組みを整備する「公的個人認証法」が制定されました。

 その後、行政手続オンライン化法は、2019年に、申請等のデジタル化を原則とするデジタル手続法に改正されました。また、国への納付金のキャッシュレス化を可能とする行政キャッシュレス化法や、国からの給付金等を受け取る預貯金口座をマイナポータル等から登録できる公金受取口座登録法などが制定されています。

◯行政手続オンライン化法(2002年)
◯デジタル手続法(2019年)
◯公金受取口座登録法(2021年)
◯行政キャッシュレス化法(2022年)

 また、公的個人認証に関しては、その後、マイナンバーカードが利用できるようになるなどの改正が行われています。
公的個人認証法(2002年)
マイナンバー法(2013年)

 なお、国税関係の手続については、税関系の個別法やデジタル手続法に基づいて、e-Taxを使ったオンラインでの申告等が可能となっていますが、国税関係の書類の作成・保存のデジタル化に関しては、国税関係の通則法的な形で、電子帳簿保存法が別途制定されていますので、併せてご紹介しておきます。
電子帳簿保存法(1998年)

 

最近の動き

 現在、政府のデジタル臨時行政調査会で、アナログ規制の見直しに関する取り組みが進められていますが、このうち、書面掲示規制、FD等の記録媒体規制については、令和5年の通常国会で、一括的な法改正が行われることが見込まれています。

 法改正の内容は、現時点では不明ですが、デジタル臨調の資料を見ると、一括法案での対応と併せて、デジタル手続法の適用拡大などの記載もありますので、個別法・デジタル手続法ともに、何らかの法改正が行われるものと考えられます。

デジタル臨調(第6回)資料1(P12)