デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

電気通信事業法(1984年)について

 これまで、デジタル化に関する法制度を備忘的に紹介してきましたが、社会のデジタル化には、それを支える基盤となるネットワークインフラの存在が不可欠です。こうしたネットワークのインフラに関する法制度という観点から、電気通信事業法について見てみたいと思います。

(そもそも、どんな法律か?)

 「電気通信事業法」は、電気通信の健全な発達と国民の利便の確保を図るため、電気通信事業に関する規制等について定めている法律です。

 電気通信事業というと、通信回線の設備を有している事業者が行う、固定電話などの電気通信サービスが想定されるのれはないかと思いますが、法律上の定義は、電気通信役務電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供すること)を提供する事業とされていて、オンラインサービスなども含む幅広い概念となっています。

 電気通信事業法は、このような電気通信事業の登録・届出や監督の制度について定める、いわゆる「業法」なのですが、ユニバーサルサービスという観点からの事業者への義務や、電気通信設備の技術水準の確保等についても定められていて、これらの規定によって、安定的にネットワークのインフラが確保されるような仕組みが整えられています。

 また、電気通信事業者の取扱中の通信を侵してはならない旨の条文も置かれており、サイバーセキュリティに関係する法律でもあります。

 

ユニバーサルサービスの確保)

 電気通信事業のためのネットワークの整備については、電話回線の整備という形で、戦前から、国(電電公社)によって進められてきました。時代が下って、1985年に、電電公社が民営化されると、民間主体でネットワークのインフラが整備・提供されることとなっています。

 電気通信に関するネットワークの整備は、国民生活に不可欠で全国にあまねく提供が必要なユニバーサルサービスであるという観点から、電気通信事業法の第7条では、一定の電気通信サービスを提供する事業者についての義務が定められています。

 

 (基礎的電気通信役務の提供)
第七条 基礎的電気通信役務(国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における提供が確保されるべきものとして総務省令で定める電気通信役務をいう。以下同じ。)を提供する電気通信事業者は、その適切、公平かつ安定的な提供に努めなければならない。

 

 また、第32条では、事業者間の相互接続の義務が規定されています。

 (電気通信回線設備との接続)
第三十二条 電気通信事業者は、他の電気通信事業者から当該他の電気通信事業者電気通信設備をその設置する電気通信回線設備に接続すべき旨の請求を受けたときは、次に掲げる場合を除き、これに応じなければならない。
一 電気通信役務の円滑な提供に支障が生ずるおそれがあるとき。
二 当該接続が当該電気通信事業者の利益を不当に害するおそれがあるとき。
三 前二号に掲げる場合のほか、総務省令で定める正当な理由があるとき。

 

(通信の秘密の保護)

 通信の秘密については、憲法第21条第2項で保護されているものですが、この趣旨を踏まえ、電気通信事業法第4条では、(広く通信当事者以外の第三者が)電気通信事業者の取扱中の通信を侵してはならない旨の規定が置かれており、罰則も定められています。これらの規定は、サイバーセキュリティにも関する規定と言えると思います。

 

  (秘密の保護)
第四条  電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。
2  電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。

第百七十九条  電気通信事業者の取扱中に係る通信(第百六十四条第二項に規定する通信を含む。)の秘密を侵した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2  電気通信事業に従事する者が前項の行為をしたときは、三年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
3  前二項の未遂罪は、罰する。

 

 以上、電気通信事業の登録・届出などに関する規定については、大幅に省略してしまいましたが、デジタル化に関する法制度としてのポイントは、とりあえず上記のようなことかなと思います。