デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第213回国会のデジタル関係法(14)6月第2週までの状況(スマホ新法、等)

(第213回国会の状況)

 6月の第2週(6月12日まで)の、内閣提出法案の成立状況ですが、内閣法制局のHPを見ると、成立は52本となっていて、先週の時点から8本が新たに成立したことになります。確認が大変そうですが、ミスをしないようにカウントしてみますと、、

 新たに成立したものは、以下の8本かと思います。。

30 銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律 警察庁
35 学校教育法の一部を改正する法律 文部科学省
41 再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律 厚生労働省
42 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律 環境省
51 建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律 国土交通省
55 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 内閣府
57 事業性融資の推進等に関する法律 金融庁
62 スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律 公正取引委員会

 

 デジタル化に関係するものとしては、下線の3つの法律が該当するかと思います。以下で、簡単に見ておきたいと思います。

 

(建設業法等の改正)

 建設業法等の改正については、以下のような提出理由となっています。

建設業を取り巻く社会経済情勢の変化等に鑑み、建設工事の適正な施工の確保を図るため、建設業者による通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金とする請負契約又は著しく短い期間を工期とする請負契約の締結の禁止、監理技術者等の専任に関する規制の合理化、建設工事の適正な施工を確保するために必要な情報通信技術の活用に関する国土交通大臣による指針の策定、公共工事における施工体制台帳の提出に関する規制の合理化等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。 

 提出理由では、適正な施工を確保するために必要な情報通信技術の活用についての記載があるだけですが、法律案の要綱を見ると、以下のような改正内容が確認できます。

第一 建設業法の一部改正
 七 情報通信技術を活用した建設工事の適正な施工の確保

第二 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部改正
 四 情報通信技術を利用した公共工事における施工体制台帳の写しの提出義務の緩和
 五 情報通信技術を活用した公共工事の適正な施工の確保

 情報通信技術の活用と規制の緩和とセットで改正がされているとわかりますね。法改正を機に、建設業界でのデジタル化が更に進むことを期待したいと思います。

 

母子保健法の改正)

 「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」では、何本かの法律が一括改正されているのですが、そのうちの一つとして、母子保健法が改正されています。概要資料を見ると、改正内容は、「里帰り出産等における情報連携の仕組みの構築(母子保健法)」となっています。

 現行法の下では、「里帰り先と住所地の市町村間で、妊産婦等の健康診査等に関する情報共有の仕組みが整備されていない」という課題があるため、今回の法改正で、「過去の居住の有無に関係なく、里帰り先と住所地の市町村間で情報提供を求めることを可能とする」ことや、「今後、母子保健DXの推進により、社会保険診療報酬支払基金等の情報連携基盤を活用できるようにし、オンライン上で情報共有を可能にする仕組みを整備」するといった見直しが図られるようです。

第14次地方分権一括法案概要資料(抜粋)

https://www.cao.go.jp/houan/pdf/213/213gaiyou_5.pdf

 すべて、上記の概要資料の受け売りですが、デジタル化による情報連携は、行政サービスの充実に大変効果的ですので、とても意義深い改正と思います。

 ちなみに、条文を見てみると、「情報の提供」とか「情報収集」といった文言になっていまして、デジタル化を連想させるような「情報通信技術」とか「電気通信回線」とか「公衆送信」といった規定ぶりにはなっていませんでした。。

 

(巨大IT規制法の成立)

 こちらは、以前にも、報道があった際に一度取り上げていたものなのですが、「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」が6月12日に成立しました。

ura49.hateblo.jp

 

 デジタル化の関係であることは明らかですが、、、提出理由は以下のとおりとなっています。

スマートフォンが国民生活及び経済活動の基盤となっていることに鑑み、スマートフォンを利用した事業に係る競争環境を整備するため、スマートフォンの利用に特に必要な特定ソフトウェアの提供等を行う事業者を指定し、特定ソフトウェアに係る競争を制限するおそれのある行為を禁止する等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 内容については、以前の記事や各種の報道等をご参照いただければと思いますが、法律名に「スマートフォン」という言葉が使われていることに、個人的には、とても時代の流れを感じます。。(もちろん、名称にスマートフォンを含む法律は初めてものもです。)

 ちなみに、この法律でのスマートフォンの定義は以下のようになっています。

 (定義)
第二条 この法律において「スマートフォン」とは、次の各号のいずれにも該当する端末をいう。
 一 常時携帯して利用できる大きさであること。
 二 当該端末にソフトウェア(プログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)の集合体であって、特定の目的のために電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この条及び第八条第三号において同じ。)を追加的に組み込み、当該ソフトウェアを当該端末で利用できること。
三 当該端末を用いて電話及びインターネットの利用ができること。

 なるほど、、と思ったのですが、、数年前にド◯キホーテで購入した格安のタブレットはSIMを入れたら通話ができるので、、こういうのもスマホの定義に含まれそうですね。。(買ってすぐの頃は、常時携帯していました。。)ただ、「常時携帯して利用できるのか?」と言われると、人によるかもしれませんが。。まあいずれにしても、この法律では、スマホ向けのOSやアプリストアに関することを定めているわけですから、別にそこは区別する必要はないですね。。

 

 少し余計なことを書きすぎて長くなってしまいましたが、今回は、とりあえずここまでにします。まもなく会期末ですね。。

 

(参考)

ura49.hateblo.jp