(第213回国会の状況)
第213回国会では、内閣提出の法案は、62本のうち、61本が成立しました。
前回までの記事では、今国会の最後の1周間で成立したデジタル関係の法律4本のうち、地方自治法、消費生活用製品安全法の改正内容をみてみました。今回は残りの2本をみてみます。
31 地方自治法の一部を改正する法律 総務省
36 消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律 経済産業省
48 農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律 農林水産省
58 出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律 法務省
(スマート農業技術活用促進法の制定)
スマート農業技術活用促進法(農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律)の法案提出理由は、以下の通りとなっています。
農業者の減少等の農業を取り巻く環境の変化に対応して、農業の生産性の向上を図るため、スマート農業技術の活用及びこれと併せて行う農産物の新たな生産の方式の導入に関する計画並びにスマート農業技術等の開発及びその成果の普及に関する計画の認定制度を設け、これらの認定を受けた者に対する株式会社日本政策金融公庫による貸付けの特例等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
ちょうど農林水産省のHPに、説明会の案内があったのですが、そこでの説明には、「本法は、生産と開発に関する2つの認定制度を設けるもので、認定を受けた農業者や事業者の方は税制や金融等の支援措置を受けることができます。」とありました。こちらがわかりやすいですね。
スマート農業技術
法律のタイトルにもなっている「スマート農業技術」ですが、第2条で以下のように定義されています。
(定義)
第二条 この法律において「スマート農業技術」とは、農業機械、農業用ソフトウェアその他農林水産省令で定めるもの(以下この条において「農業機械等」という。)に組み込まれる遠隔操作(農業機械から離れた場所から当該農業機械に情報通信技術(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録をいう。)として記録された情報を活用する場合に用いられる情報通信技術をいう。以下この項及び次条第二項において同じ。)を用いて指令を与えることにより当該農業機械の操作をする技術をいう。)、自動制御(プログラム(情報処理の促進に関する法律(昭和四十五年法律第九十号)第二条第二項に規定するプログラムをいう。第七条第四項第一号において同じ。)により自動的に農業機械等の制御を行う技術をいう。)その他の情報通信技術を用いた技術であって、農業を行うに当たって必要となる認知、予測、判断又は動作に係る能力の全部又は一部を代替し、補助し、又は向上させることにより、農作業の効率化、農作業における身体の負担の軽減又は農業の経営管理の合理化(第三項第二号及び次条第一項において「農作業の効率化等」という。)を通じて農業の生産性を相当程度向上させることに資するものをいう。
とても長いですが、スマート農業技術とは、農業機械や農業用ソフトウェアに組み込まれる遠隔操作、自動制御などの情報通信技術を用いた技術(で、農業の生産性を相当程度向上させるもの)というのが、ポイントなのかなと思います。「スマート◯◯」という用語は、概ね、「情報通信技術を活用した◯◯」といった意味合いで、最近よく聞くものですが、法律名の中でこのようなスマート◯◯という用語が使われるのは、この法律が最初になります。
(スマートフォンという用語を含むものについては、「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」が6月12日に成立しています。)
デジタル関係の規定ぶり
その他にも、デジタル関係の規定として、遠隔操作、自動制御という用語のカッコ内での定義や、「農業を行うに当たって必要となる認知、予測、判断又は動作に係る能力の全部又は一部を代替し、補助し、又は向上させることにより、農作業の効率化、農作業における身体の負担の軽減又は農業の経営管理の合理化」といった規定ぶりなども味わい深いところですが、長くなりそうなので、またの機会にします。。
認知、予測、判断又は動作に係る能力の代替・補助というのは、他のスマート技術にも通じるものと思いますし、作業の効率化、負担の軽減、管理の合理化というのは、デジタル活用のメリットが端的に示されていますね。(デジタル手続法でも、「公共分野における情報通信技術の活用を図るとともに、情報通信技術を活用した社会生活の利便性の向上及び事業活動の効率化を促進」ということが掲げられていました。)
(入管法の改正)
入管法(出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律)の改正法案の提出理由は、以下の通りとなっています。
本邦に適法に在留する外国人の利便性の向上及び行政運営の効率化を図るため、在留カード及び特別永住者証明書と個人番号カードの一体化並びに一体化したカードに係る地方出入国在留管理局又は市町村における手続の一元的処理を可能とするとともに、在留カード及び特別永住者証明書の記載事項等を見直すほか、出入国及び在留の公正な管理に係る電磁的記録の取扱いに関し必要な事項を定める等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
以前から計画されていた、マイナンバーカードと在留カード等の一体化に関する改正が行われています。
マイナンバーカードと在留カードの一体化については、以下のような条文が新設されています。
(特定在留カードの交付等)
第十九条の十五の二 住民基本台帳に記録されている中長期在留者は、次の各号に掲げる届出又は申請を行う場合には、当該各号に掲げる届出又は申請に併せて、総務省令・法務省令で定める手続により、出入国在留管理庁長官に対し、当該各号に掲げる届出又は申請に係る在留カードの交付を、特定在留カード(この条の規定及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号。以下この条及び第十九条の十五の四において「番号利用法」という。)第十八条の五の規定に定める手続により個人番号カード(番号利用法第二条第七項に規定する個人番号カードをいう。第十九条の十五の四において同じ。)としての機能を付加するための措置が講じられた在留カードをいう。以下同じ。)の交付により行うことを求める旨の申請をすることができる。
一・二 (略)
これからは在留カードがマイナカードと一体化される、というイメージを持っていたのですが、規定を見ると「できる」となっていますので、一体化は義務ではなくて、選択できるということですね。(ちなみに、マイナンバーカードは、法律上は「個人番号カード」です。)
今回の改正内容は、以下の出入国在留管理庁のHPの資料がわかりやすいですので、こちらをご参照いただければと思います。
https://www.moj.go.jp/isa/content/001420065.pdf
とりあえず、今回はここまでにします。
(参考)