(第213回国会の状況)
第213回国会における内閣提出法案の状況をこれまで見てきましたが、議員立法でも、デジタル化に関する改正が行われているものがありました。
・公共工事の品質確保の促進に関する法律等の一部を改正する法律
・障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律の一部を改正する法律
上記の2つの法改正について簡単に見てみたいと思います。
(公共工事品質確保法の改正)
公共工事品質確保法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)は、平成17年に制定された法律で、議員立法です。この法律では、公共工事の品質確保に関して、基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、公共工事の品質確保の促進に関する基本的事項が定められています。
今回、この基本理念を定める第3条の第11項が改正されて、第13項に移動しているのですが、その際に下線部が追加されています。
(基本理念)
第三条
13 公共工事の品質確保に当たっては、調査等、施工及び維持管理の各段階における情報通信技術(デジタル社会形成基本法(令和三年法律第三十五号)第二条に規定する情報通信技術をいう。以下同じ。)の活用(当該各段階におけるデータ(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録に記録された情報をいう。以下この項において同じ。)の適切な引継ぎ及び多様かつ大量のデータの適正かつ効果的な活用を含む。以下同じ。)等を通じて、その生産性の向上が図られるように配慮されなければならない。
もともと、「情報通信技術の活用等を通じて、」その生産性の向上を図る、ということは定められていたのですが、今回、「情報通信技術」について、デジタル社会形成基本法第2条を引用する形で定義するとともに、ビッグデータの活用(「多様かつ大量のデータの・・・活用」)なども含む概念であることが明記されています。
デジタルの活用というと、ペーパレスやロケーションフリーなどによる負担軽減や利便性向上がまず思い浮かんでしまうのですが、データの利活用のほうが強調されることが増えてきている気がしますね。。(この改正とは関係ないただの感想ですが。。)
(教科書バリアフリー法の改正)
教科書バリアフリー法(障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律の一部を改正する法律)は、平成20年に制定された法律で、こちらも議員立法です。
障害のある児童生徒向けに、教科書を拡大したり、点字を付けたりした特別な教科書(教科用特定図書)を普及・促進するための法律ですが、こうした障害のある児童生徒向けの教科用特定図書は、日本語に通じない外国人の児童生徒等にとっても有用であることから、障害のある児童生徒と日本語に通じない児童生徒の双方の学習の用に供するために行う教科用特定図書の発行も、この法律の対象に含むこととする改正が行われています。
あまりデジタルと関係ないですが、、この法律の第5条には、教科書のデジタルデータを文部科学大臣等に提供することを、教科書発行者に義務づける規定があります。このデータは、ボランティア団体など障害のある児童生徒向けの教科用特定図書等の作成者に提供されるのですが、今後は、日本語に通じない児童生徒向けの図書等の作成のためにも提供できるように、今回の改正で、附則第3条が改正されています。
(教科用図書発行者による電磁的記録の提供等)
第五条 教科用図書発行者は、文部科学省令で定めるところにより、その発行をする検定教科用図書等に係る電磁的記録を文部科学大臣又は当該電磁的記録を教科用特定図書等の発行をする者に適切に提供することができる者として文部科学大臣が指定する者(次項において「文部科学大臣等」という。)に提供しなければならない。
2 教科用図書発行者から前項の規定による電磁的記録の提供を受けた文部科学大臣等は、文部科学省令で定めるところにより、教科用特定図書等の発行をする者に対して、その発行に必要な電磁的記録の提供を行うことができる。
3 国は、教科用図書発行者による検定教科用図書等に係る電磁的記録の提供の方法及び当該電磁的記録の教科用特定図書等の作成への活用に関して、助言その他の必要な援助を行うものとする。
附則
(第五条第二項の規定による電磁的記録の提供の特例)
第三条 第五条第二項の規定により電磁的記録の提供を行うことができることとされた教科用特定図書等の発行には、当分の間、障害のある児童及び生徒並びに日本語に通じない児童及び生徒の双方の学習の用に供するために行う教科用特定図書等の発行を含むものとする。
以上の通り、改正の内容はデジタル関係ということではないのですが、このような仕組みがあることを知りませんでしたので、備忘的に残しておこうと思った次第です。
余談ですが、公立の小中学校で、日本語指導が必要な児童生徒の数は、年々増加しています。隔年の調査なので、直近ではR5の状況があると思うのですが、見つけられなかったので、とりあえず、R3までのグラフを貼っておきます。
デジタル技術の進展が、これらの子どもたちの教育機会のより実質的な確保にも寄与することを期待しています。
(参考)