デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第213回国会のデジタル関係法(20)まとめ

(主な法改正等)

 今年の第213回国会においても、様々なデジタル関係の法改正等が行われていることをこれまで見てきました。多少なりともデジタルが関わっているということだと、相当数のものがあったわけですが、今一度、どのようなものがあったかを振り返ってみようかなと思いました。

 全くの独断と偏見ですが、デジタル関係の主な法改正・新法の制定を選ぶとすると、以下のようなものが思い浮かびます。

◯デジタル手続法、マイナンバー法の改正
地方自治法の改正
プロバイダ責任制限法の改正
放送法の改正
スマホ新法の制定

 

(行政手続のデジタル化に関する法律)

 デジタル関係の法制度では、行政手続(役所への申請や料金の支払いなど)に関して、国民の利便性向上と行政手続の効率化のために定められているものがありますが、今回の国会でも、行政手続のデジタル化に関する法改正が行われています。

 

デジタル手続法

 まず、正に行政手続のデジタル化を目的とする「デジタル手続法」(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律)では、国がベースレジストリ(「公的基礎情報データベース」)を作成・整備する旨が規定されました。そのうえで、様々な法令の規定で変更届出を行わなければならない法人に係る登記事項(名称、所在地等)について、行政機関等がデータ連携により入手した場合は、当該変更届出が行われたものとみなし、変更届出を不要とする、ということも定められました。

 これまでは、法人登記の変更を行った後で、様々な法律に基づいて変更事項の届出などを、それぞれの行政機関等に行う必要があったわけですが、今後、法人登記に関する事項のベースレジストリが整備されれば、法人登記の変更さえ行えば、そのデータをそれぞれの行政機関等が確認できるため、様々な法律に基づいて、法人側で何度も変更届出をするというような手間がなくなります。

 

マイナンバー法の改正

 デジタル手続法の改正と併せて、今回、マイナンバー法行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)の改正も行われています。 

 マイナンバー法の改正では、マイナンバーカードに係る機能のスマートフォンへの搭載のために必要な事項が整備されました。このことにより、今後は、スマートフォンだけでマイナンバーカードと同様にマイナンバー法上の本人確認ができるようになります。

 

地方自治法の改正

 地方自治法の改正では、公金の収納事務のデジタル化にに関して、(地方税以外の)公金の収納にeLTAX(地方税の手続のためのシステム)を活用てきるようにするための改正が行われました。今後、地方税以外の公金の収納についても、全国共通の仕組みとして、統一QRコードなどを使ってeLTAXを活用した収納を行うことができるようになります。

 また、今回の地方自治法の改正では、情報システムの適正な利用に関する条文も新設されています(第244条の5等)。

 

 ほかにも、入管法在留カード等とマイナカードの一体化)や車庫法(車庫証明シールの廃止)なども、行政手続に関するものと思いますが、とりあえず、主なものということで3つ挙げさせていただきました。。

 

(デジタル社会に対応した新たなルール)

 デジタル関係の法制度では、手続き面などの従来の規制を緩和するものがある一方で、デジタル化に対応して新たなルール(規制)を設けるものもあります。これまでは、サイバーセキュリティやネットワークインフラ整備の観点から、新たなルールが設けられることが多かったと思います。今国会で制定されたものは、物理的なネットワークインフラではないですが、広い意味でのデジタル基盤の整備のために必要なルールと言えるかもしれません。。

 

プロバイダ責任制限法(情報流通プラットフォーム対処法)

 今回の改正で、プロバイダ責任制限法は、情報流通プラットフォーム対処法(特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律)へと名称が変更となり、大規模プラットフォーム事業者(「大規模特定電気通信役務提供者」)への新たな規制が設けられました。

 大規模プラットフォーム事業者(「大規模特定電気通信役務提供者」)に対しては、誹謗中傷などの送信防止措置について、実施手続の迅速化や実施状況の透明化を図るための義務が課されることとなります。

 

放送法の改正

 放送法の改正では、インターネットを通じた番組の提供をNHKの必須業務にすることなどが定められました。

(インターネット配信の受信を開始したら、NHKの受信契約締結の義務に関する改正もあるようですが・・)いずれにしても、インターネットを通じた番組の提供が、ユニバーサルサービス的になってきているという社会のデジタル化の表れかな、とも思い、デジタル関係として、とらえさせていただきました。。

 そういえば、以前にブログで条文を今度見る、、と言った切りになっていたかもしれません。。具体的には、NHKの業務を定める第20条に、第3号、第4号が追加されています。

 

 (業務)
第二十条 協会は、第十五条の目的を達成するため、次の業務を行う。
 三 協会が放送する全ての放送番組(著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第九号の七に規定する著作権者等その他の配信に係る許諾の権利を有する者から配信の許諾を得ることができなかつたものその他配信をしないことについてやむを得ない理由があるものを除く。次号において同じ。)について、放送と同時に当該放送番組の配信を行うこと。
 四 協会が放送した全ての放送番組について、放送の日から総務省令で定める期間が経過するまでの間、当該放送番組の配信を行うこと。

 

 言うまでもないかもしれませんが、第3号が「同時配信」、第4号が「見逃し配信」についての定めとなっています。

 

スマホ新法の制定

 新たに新設された、いわゆるスマホ新法(スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律)では、スマホアプリ市場での競争環境の整備のため、一定規模以上のスマホOS事業者に対する規制(禁止事項と遵守事項を規定)が設けられています。

 法律名に「スマートフォン」という言葉が使われている法律は、このスマホ新法がはじめてです。

 

 とりあえず、以上です。各法改正等については、各所管省庁のHPをご参照いただければと思います。過去の記事も参照いただければ幸いです。

 

(参考) 

法令|デジタル庁

総務省|国会提出法案

国会提出法案 | 公正取引委員会

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