デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

情報処理促進法(1985年)について

(どんな法律なのか)

 情報処理促進法(情報処理の促進に関する法律)は、独立行政法人情報処理推進機構IPA)の設置や、IPAの実施する情報処理技術者試験の根拠について定めている法律です。

 もともとは、1970年に、「情報処理振興事業協会等に関する法律」として制定された法律ですが、1985年に今の題名に変わっています。その後、サイバーセキュリティに関する国家資格である、情報処理安全確保支援士に関する規定(第6条から第28条)の追加などがされています。全体構成は以下のような感じです。

第一章 総則
第二章 電子計算機の高度利用等
 第一節 電子計算機利用高度化計画の策定等(第三条―第五条)
 第二節 情報処理安全確保支援士等
  第一款 情報処理安全確保支援士(第六条―第二十八条)
  第二款 情報処理技術者試験(第二十九条)
第三章 情報処理システムの運用及び管理に関する指針等(第三十条―第三十七条)
第四章 独立行政法人情報処理推進機構
 第一節 総則(第三十八条―第四十五条)
 第二節 役員及び職員(第四十六条―第五十条)
 第三節 業務等(第五十一条―第五十四条)
 第四節 雑則(第五十五条―第五十八条)
第五章 罰則(第五十九条―第六十三条
附則

 直近の改正としては、今年の通常国会の「デジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律」で、ベースレジストリの関係の改正がなされた際に、データ連携促進等の観点から、情報処理推進機構IPA)の業務に、国の行政機関等のシステムに関するデータ標準化に係る基準の作成等の業務が第51条に追加されています。

 

(情報処理の定義)

 この法律は、もともとIPAの前身の機関である情報処理振興事業協会について定めていたこともあって、内容的には、IPAの業務に関することが中心になっています(この辺のことはウィ◯◯ディアなどにも詳しくありますので譲ります。。)が、その他のデジタル関係の条文として、情報処理、プログラムなどについての定義規定が置かれていますので、規定ぶりを見ておければと思います。

 

 (定義)
第二条 この法律において「情報処理」とは、電子計算機(計数型のものに限る。以下同じ。)を使用して、情報につき計算、検索その他これらに類する処理を行うことをいう。
2 この法律において「プログラム」とは、電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。
3 この法律において「情報処理システム」とは、電子計算機及びプログラムの集合体であつて、情報処理の業務を一体的に行うよう構成されたものをいう。
4 この法律において「情報処理サービス業」とは、他人の需要に応じてする情報処理の事業をいい、「ソフトウェア業」とは、他人の需要に応じてするプログラムの作成の事業をいう。

 

 情報処理、プログラム、ソフトウェア、電子計算機といった用語を使ったのは、この法律が最初ではないかと思うのですが、、確証はありません。。

 ちなみに、ソフトウェアという用語を名称に含む法律が、今年の通常国会で成立しています。いわゆるスマホ新法(スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律)です。

 

(ベースレジストリ関係の改正内容)

 先にも述べましたが、情報処理促進法についても、今年の通常国会で成立した「デジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律」で改正が行われています。

 改正内容としては、ベースレジストリ関係の改正の一つとして、IPAの業務を定める第51条に、国の行政機関等のシステムに関するデータ標準化に係る基準の作成等の業務に関する規定(第9号、第16号)が追加されました。

 具体的な規定ぶりは以下の通りとなっています。

 

 (業務の範囲等)
第五十一条 機構は、第四十条の目的を達成するため、次の業務を行う。
 九 行政機関等(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成十四年法律第百五十一号)第三条第二号に掲げる行政機関等をいう。)及び特定公共分野(デジタル社会形成基本法(令和三年法律第三十五号)第三十九条第二項第十三号に規定する特定公共分野をいう。)の民間事業者の情報処理システムの整備及び管理に関し、データの標準化(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律第四条第二項第五号イに規定するデータの標準化をいう。)に係る基準の作成、技術的助言、情報の提供その他必要な協力を行うこと。
 十六 情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律第二十条第二項の規定による協力を行うこと。

 ちなみに、第16号にあるデジタル手続法(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律)第二十条第二項の規定というのは、以下のとおりで、国の行政機関等がベースレジストリ(公的基礎情報データベース)の整備等を行う際にIPAの協力を求めることができる旨が定められています。こちらも、今年の通常国会での改正で新設された条文です。

 

◯デジタル手続法
 (国の公的基礎情報データベースの整備及び改善等)

第二十条 国の行政機関等は、公的基礎情報データベース整備改善計画に従って国の公的基礎情報データベースの整備及び改善を行わなければならない。
2 国の行政機関等は、前項の規定による国の公的基礎情報データベースの整備及び改善に当たっては、国の公的基礎情報データベースを構成するデータの加工、記録、保存及び提供に関する事項にあっては独立行政法人国立印刷局に対し、当該データについてのデータの標準化に係る基準に関する事項にあっては独立行政法人情報処理推進機構に対し、技術的助言、情報の提供その他の必要な協力を求めることができる
3〜5 (略)

 

 とりあえず、以上にします。

 全く余談ですが、「電子計算機」という用語を名称に含む法律は、意外にも電帳法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)のみです。(電帳法・インボイス対応・・というCMを見るたびに思い出します。)かつては、「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」というものがあり、こちらの方が古い法律だったのですが、個人情報保護法に一本化され、廃止されました。

 

(参考)

ura49.hateblo.jp

 

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