デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

デジタル教科書の使用制限は書面規制?

(デジタル教科書が使えないのは書面規制?)

 先日、ある会合の場で、「紙の教科書とデジタル教科書を、現場の実態に応じて、選択的に使えるようにすべき。デジタル教科書の使用が限定される書面規制はなくすべき。」といった、有識者の方のご発言をお聞きしました。

 これまで規制改革の文脈などで、書面規制・対面規制が議論されてきたものは、いずれも役所への申請(パストートの申請など)や役所からの文書交付(車検証の交付など)などの行政手続の場面が念頭に置かれていたので、紙の教科書で授業を行うことを定めている規定などはあまり考えたことがなかったのですが、見方によっては「書面規制」に見えるなあ・・と改めて思いました。

 だとすると、オンライン授業の制限は対面規制になるのでしょうかね・・。高校・大学などでは、通信制課程との区別の話なので、規制ではないかもしれませんが。。よくわかりません。。(そういえば、コロナ禍で、バーチャルオンリー株主総会が認められるのか、といった議論もあった気がします。)いずれにしても、書面や対面を前提としていたことに、デジタル技術の活用ができるというのは、行政手続に限ったことではないですね。

 

(デジタル教科書に関する規制)

 デジタル教科書の導入がどんどん進んでいるという記事を見ることがある一方で、正式な教科書としては認められていないとか、紙がPDFになっただけ、などという話も聞いたりするのですが、実際の制度はどうなっているのでしょうか。

 ちょうど文科省の検討会(デジタル教科書推進ワーキンググループ)の資料にわかりやすい資料がありました。

第3回デジタル教科書推進WG参考資料3より抜粋

 赤字の部分が、制度改正に関することかと思います。現在の位置づけとしては、「紙の教科書の代替として利用できる」ということで、以前設けられていた使用制限(授業時数の半分まで)は撤廃されている、ということのようです。

 

 実際の学校教育法の規定ぶりを見ると以下のようになっていました。

第三十四条 小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない。
② 前項に規定する教科用図書(以下この条において「教科用図書」という。)の内容を文部科学大臣の定めるところにより記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)である教材がある場合には、同項の規定にかかわらず、文部科学大臣の定めるところにより、児童の教育の充実を図るため必要があると認められる教育課程の一部において、教科用図書に代えて当該教材を使用することができる

 

 「文部科学大臣の定めるところにより記録」「教育の充実を図るため必要があると認められる教育課程の一部」など、法文を見るとまだまだ制限があるようですね。。こうしたことも含めて、現在WGで検討中なのだろうと思います。。

 

(デジタル教科書の普及率)

 ちなみに、デジタル教科書の普及率については、以下のような記事がありました。

reseed.resemom.jp

 整備率87.4%というと、もうほぼすべての学校で使っているのかな、と思ってしまいそうですが、この数字は、一種類でもデジタル教科書を使用していればカウントされるようですので、実際には、まだまだこれからというところなのかもしれません。

 諸外国では、全面的にデジタル教科書に移行したり、一度導入して紙に戻ったり、いろいろあるようですが、それらはまたの機会に見てみたいと思います。

 

(参考)

www.mext.go.jp