(216回臨時国会が開会されました)
11月28日から第216回臨時国会が開会となりました。冒頭の衆参の本会議の後、当面は予算委員会での補正予算案の審議が続き、法案などを審議する各委員会の開催は12月16日頃以降となるようです。内閣法制局の法案提出件数のHPも第215回国会の状況のままです。
(学校での著作物の利用の特例)
そのような状況なので、少し過去の記事を見直そうかと思っていたところ、ちょうど1年前に、インターネットを利用して学校の需要で著作物の利用をする場合の記事を書いていました。
この記事では、先生が学校の授業のために教材(動画やワークシートのファイルなど)をアップロードして生徒に配布したり、授業で「教室外の」オンラインで接続された生徒等に配信(公衆送信)したりすることについて、著作権者の許諾は不要だが、基本的に有償になる、ということを書いています。
ただ、改めて見てみると、教室内の生徒にインターネット上の動画を見せる場合などに関する著作権法上の扱いなどの情報が不足している気がしますので、改めて整理しておこうと思いました。
上映権と伝達権
かなり昔の昭和の時代には、学校の教室にテレビが備え付けられていて、道徳の時間などに、NHKの番組などを見ることなどがあったと思います。また、もう少し時代が下ると、教室にDVDプレイヤーがあったりして、DVDで番組を見せるような対応も出てきました。
いずれも生徒からすれば同じことなのですが、著作権法上の整理では別物の扱いになっています。まずDVDで生徒に番組を見せる場合は「上映」にあたり、放送されている番組を教室で見せる場合は「伝達」になります。著作権者の持つ権利の面から見ると、「上映権」と「公の伝達権」という違いになります。(著作権者の◯◯権などの権利は、それぞれ「勝手に他人に◯◯されない権利」と置き換えるとわかりやすいです。)
DVDの上映にしても放送番組の伝達にしても、授業のために必要な範囲内で、著作物を利用することが認められています(著作権法第38条第1項、第3項)が、インターネットを使って動画などを生徒に見せる場合も、これとパラレルに考えるとわかりやすいかと思います。
インターネット上の動画の再生とダウンロードした動画の再生
まず、教室でYoutubeなどの動画を生徒に見せる場合は、「公の伝達」となります。こちらについては、著作権法第35条第1項で授業内での必要な範囲の利用が認められています。(「公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる」の部分です。)
次に、先生が事前にダウンロードしておいた動画を再生する場合は、「上映」に当たりますが、こちらは、DVDの場合と同様に、著作権法第38条第1項で認められることとなります。
◯著作権法
(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。(略)
繰り返しになりますが、これらは先生が著作物を教室の外に発信(公衆送信)するわけではないので、35条2項の適用はなく無償で行うことができます。このあたりの説明が不足していたのかなと思いましたので、改めて備忘的に記しておければと思います。
まとめ
それぞれの法律上の整理と利用を可能とする著作権法上の根拠規定等をまとめるとこんな感じでしょうか。上の4つが今回説明した部分です。(下2つが1年前の記事で書いた部分です。。)
教室でのテレビ視聴 ⇒公の伝達(第38条第3項)無償
教室でのDVD再生 ⇒上映(第38条第1項)無償
教室での動画再生(ストリーミング) ⇒公の伝達(第35条第1項)無償
教室での(ダウンロード済み)動画再生 ⇒上映(第38条第1項)無償
クラウドでの教材等の送信 ⇒公衆送信(第35条第1項、第2項)有償
プリント等のアップロード ⇒公衆送信(送信可能化)(第35条第1項、第2項)有償
なお、「有償」の場合にも、授業目的公衆送信補償金制度にほとんどの学校は参加しているため、いずれにしても先生方が授業の過程で著作物を使う場合はあまり気にする必要はないです。ということで、上記のように整理してみても実益はないかもしれませんが、あくまで備忘ですので。。
ちなみに、授業目的公衆送信補償金制度に参加している教育機関等は以下のHPで確認できます。
(参考)