デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

巨大IT企業に関する法規制について

 今年の通常国会では、巨大IT企業に対する規制を課す法改正が数多くありました。

 その時々で、それぞれ新しい規制が必要になるのだな、という程度に思っていたのですが、最近、2019年に出版された本を読んでいたところ、「【キーワード】 GAFA規制」という項目があり、以下のような記載がありました。

データ寡占を強めるGAFAなど巨大IT企業に、世界で規制強化が広がっている。注目が集まるのが、プライバシーを守る個人情報保護、健全な競争環境を保つための独占禁止法(競争法)、適切に課税するための法人税のあり方の3分野だ。

日本経済新聞データエコノミー取材班・編「データの世紀」P61)

 

 巨大IT企業への世界的な規制強化は、

①プライバシーを守る個人情報保護

②健全な競争環境を保つための独占禁止法(競争法)

③適切に課税するための法人税のあり方

の3つの分野ですすめられている、ということで、今年の法改正も含め、近年の巨大IT企業に関する法規制についても、こうした動きの延長線上のものとして見直してみると、わかりやすいかもしれないなと思いましたので、以下振り返ってみたいと思います。

 

(プライバシーを守る個人情報保護)

 まず、1つ目の個人情報保護については、上記の本の中で以下のような説明が続いていました。

個人情報保護の分野で先行するのはEUだ。EUは2018年に世界で最も厳しい 保護ルールといわれる一般データ保護規則(GDPR)を施行した。

日本も2020年にも予定される個人情報保護法の改正に向け、個人が企業に自分のデータ利用の停止を求められる「使わせない権利」の導入などを検討している。

 

 そしてその後、2020年(令和2年)の個人情報保護法改正では、「外国にある第三者への提供」「個人データの利用の停止・消去等の請求」「個人関連情報」などに関する改正が行なわれています。

 このうち、「個人関連情報」の規定は、ウェブサイトの閲覧履歴、商品購買履歴やサービス利用履歴、位置情報などを念頭に設けられたものです。

令和2年改正個人情報保護法リーフレット個人情報保護委員会)より抜粋

 

(健全な競争環境を保つための競争法)

 次に、巨大IT企業のデータ寡占が進む中での、健全な競争環境を保つための競争法的な規制としては、巨大IT事業者の取引の公正性・透明性を高める目的で、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が、同じく2020年に制定されています。

 加えて、今年の通常国会では、巨大IT企業によるスマホ向けの基本ソフト(OS)やアプリストアなどで、競合他社のサービス利用を妨げるような行為を禁止行為として定める「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」が成立しています。(こちらは、スマホ新法という略称で報道されていたものです。)

ura49.hateblo.jp

 

(適切に課税するための税制度)

 3つ目の、適切に課税するための法人税のあり方については、2021年にOECDによって、国際課税の新ルール(デジタル課税)が国際的に合意されています。現在、2025年の開始に向けて準備が進められていますが、調整が難航しているというような報道等も散見されるところです。いずれにしても、今後の動向に注目したいと思います。

 なお、デジタル課税に関する日本国内での対応としては、令和5年度税制改正で「グローバル・ミニマム課税」というものが制度化されているようです。

www.nta.go.jp

 

 このほか、法人税ではありませんが、今年の所得税法等の改正では、一定規模以上の国外プラットフォーム事業者に対して、消費税の納税義務を課す制度が導入されています(プラットフォーム課税)。適切な税制度を整備するという点では、共通する面があるかと思います。

ura49.hateblo.jp

 

 以上雑駁ですが、巨大IT企業の規制について、国際的な動向と同様に、日本国内でも、それぞれの面で法制度が整備されてきていることがわかります。

 これまで、漫然と法改正の状況を追いかけていたのですが、①個人情報の保護、②健全な競争環境の確保、③適切な課税制度、という視点で見てみると、より理解が進む気がしましたので(これまでの理解不足はおいておくとして)、備忘的に記録しておきたいと思います。。

 

(参考)

www.kinokuniya.co.jp