デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

学校とデジタル化:文化祭や音楽会での演奏の配信(著作権(8))

(文化祭や音楽会での演奏は著作物の利用か?)

 CDなどでプロの音楽家の演奏を流す場合には、著作権の問題になることは容易に想像できますが、文化祭や音楽会で生徒が音楽を演奏する場合なども著作権の問題は生じます。

 具体的には、著作権法第22条で定められている「演奏権」が問題となります。楽曲などの著作物を公衆に聞かせることを目的として演奏する権利は、著作者が専有していると定められているためです。

 (上演権及び演奏権)
第二十二条 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。

 

 ですが、この上演権・演奏権については、権利制限規定が置かれており、「非営利・無料」の場合の著作物の上演、演奏、上映等については、第 38 条第 1 項で、著作権者の許諾なく行うことができることとされています。

 (営利を目的としない上演等)
第三十八条 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。

 

 この規定は、「学校の学芸会、市民グループの発表会、公民館での上映会など、非営利・無料で出演者等に報酬が支払われないとき」を想定した規定であることが、文化庁著作権テキストでも示されています。いずれにしても、文化祭などでの通常の形での演奏は、著作権を気にせずに行うことが可能です。

 

(文化祭での演奏をインターネットで配信してよいか?)

 一方で、生徒が行う演奏をネットで配信することは、「公衆送信」にあたり、別の問題が生じます。

 文化祭や音楽会などの学校行事は、教育課程(学習指導要領)上、「特別活動」として位置づけられますので、授業の一環ということで、オンライン授業の場合と同様に、第35条の問題となります。

 (学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

2 前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置する者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない
3 前項の規定は、公表された著作物について、第一項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合において、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信を行うときには、適用しない。

 まず第1項の下線部の通り、授業を受ける生徒へのインターネット配信は可能です。この場合、第2項にあるように、基本的に有償(授業目的公衆送信補償金の支払いが必要)となりますが、さらに第3項で、授業を同時に受ける生徒(欠席した生徒など)への同時配信の場合は無償とされています。

 また、条文上は、授業を受ける生徒への配信に限られるように見えますが、授業を参観する保護者等への配信も可能である旨が、「改正著作権法第35条運用指針」で示されています。

sartras.or.jp

 

 なお、保護者への配信の場合も、有償(授業目的公衆送信補償金の支払いが必要)となりますが、ほとんどの学校は授業目的公衆送信補償金制度に申請済みと思われますので、有償・無償はあまり気にする必要はないかもしれません。

 

YouTubeでの配信)

 全く余談ですが、仮にYouTubeで同時配信を行う場合、どのような処理が必要になるのだろう・・と思って調べてみたところ、JASRACのホームページに、演奏動画をYouTube配信する場合のフローチャートが示されていました。

www.jasrac.or.jp

 結論から申し上げると、文化祭や音楽会での生徒の演奏の場合、特に手続きなく配信することが可能なようです。(これはYouTubeJASRACが利用許諾契約を締結しているためで、すべての動画配信サービスで同じ扱いになるとは限りませんので、確認が必要です。)

 

(ポイント)  

・文化祭などでの生徒の演奏は、著作権者の許諾なく行うことが可能。

・「特別活動」である学校行事の配信は、オンライン授業と同様に可能。

・文化祭などでの生徒の演奏をYouTubeで配信する場合、通常は手続不要。

 

(参考)

www.bunka.go.jp