デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

デジタル手続法の改正(2024年)について

(ガバメントクラウドの利用に関する改正)

 先の臨時国会で12月24日に成立したデジタル手続法(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律)の改正について見てみたいと思います。

 まず、提出理由ですが、内閣法制局のHPに以下のように記載されています。

クラウド・コンピューティング・サービスを適切かつ効果的に活用することにより国又は地方公共団体の事務の実施に関連する情報システムの効果的かつ効率的な整備及び運用を推進するため、内閣総理大臣国と国以外の当該情報システムの整備等を行う者とが共同して当該サービスを利用することができるようにするために必要な措置を講ずることとするとともに、当該共同利用が行われる際の金銭の保管に関する規定を整備する等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 国と地方自治体が共同でガバメントクラウドを利用するために必要な措置や、ガバメントクラウドの共同利用の際の金銭の保管について、法整備を行うものであることがわかります。

 

(ガバメントクラウドの共同利用に向けた国等の義務)

 まず、「国と国以外の者によるクラウドサービスの共同利用に関する規定の整備」についてですが、必要な措置を国が講じなければならないことが、内閣総理大臣の義務として、第18条第1項で新たに規定されています。

 (公共情報システムの整備等におけるクラウド・コンピューティング・サービスの共同利用)
第十八条 内閣総理大臣は、クラウド・コンピューティング・サービス(インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機を他人の情報処理の用に供する役務をいう。以下この項及び次項において同じ。)を適切かつ効果的に活用することにより公共情報システム(国又は地方公共団体の事務の実施に関連する情報システムをいう。以下この条及び次条第一項において同じ。)の効果的かつ効率的な整備及び運用を推進するため、公共情報システムの整備又は運用において国と国以外の当該整備又は運用を行う者(次項及び次条第一項において「公共情報システム整備運用者」という。)とが共同してクラウド・コンピューティング・サービスを利用することができるようにするために当該共同利用の条件に関する契約の締結その他の必要な措置を講じなければならない

 また、国の行政機関等については、システム整備を行う際にガバメントクラウド利用の検討を行う義務が、地方自治体には努力義務が第18条の第2項以下で定められました。

(公共情報システムの整備等におけるクラウド・コンピューティング・サービスの共同利用)
第十八条
2 国の行政機関等は、公共情報システムの整備を行おうとするときは、当該公共情報システムの効果的かつ効率的な整備及び運用その他の観点から、前項の規定に基づき講ずる措置を通じて国と公共情報システム整備運用者が共同して利用することができるものとされたクラウド・コンピューティング・サービス(以下この条及び次条第一項において「共同利用クラウド・コンピューティング・サービス」という。)を利用することについて検討を行い、その結果に基づいて当該公共情報システムの整備を行わなければな
らない
3 国の行政機関等以外の行政機関等は、公共情報システムの整備を行おうとするときは、国の行政機関等ティング・サービスが前項の規定に基づいて行う検討及び公共情報システムの整備に準じて、共同利用クラウド・コンピューの利用に関する検討及びその結果に基づく当該公共情報システムの整備に係る取組を行うよう努めなければならない
4 内閣総理大臣は、国の行政機関等以外の行政機関等が行う前項の取組を支援するため、共同利用クラウド・コンピューティング・サービスに関する情報の提供その他の必要な措置を講じなければならない。

 

地方自治体の利用料を国でまとめて支払うための規定整備)

 今回の改正では、地方自治体がクラウドサービスを共同利用する際のクラウド利用料を国が保管(してまとめて支払えるようにする)ための規定の整備も行われています。

 具体的には、内閣総理大臣(実務はデジタル庁)が、(ガバメントクラウドの利用に関するクラウドサービス提供事業者(CSP)との契約で、地方自治体がCSPに支払うべきガバメントクラウド利用料について、デジタル庁が地方自治体から納付を受けた上でデジタル庁からCSPに引き渡す旨が定められているときは、)地方自治体分のクラウド利用料を保管することができることとされました。

 具体的な新設条文は、以下のとおりです。

 (共同利用クラウド・コンピューティング・サービスの利用に関する金銭の保管)
第十九条 内閣総理大臣は、公共情報システムの効果的かつ効率的な整備及び運用を図るために、共同利用クラウド・コンピューティング・サービスの共同利用の条件に関する内閣総理大臣と当該共同利用クラウド・コンピューティング・サービスを提供する事業者との契約において、公共情報システム整備運用者が当該事業者に支払うべき当該共同利用クラウド・コンピューティング・サービスの利用に係る料金について内閣総理大臣が当該公共情報システム整備運用者から納付を受けた上で内閣総理大臣から当該事業者に引き渡す旨を
定めたときは、当該納付を受けた料金その他の公共情報システム整備運用者の当該共同利用クラウド・コンピューティング・サービスの利用に関する金銭を保管することができる
2・3 (略)

 

 これまでは、地方自治体のガバメントクラウド利用については、国の実証事業として国がその費用を負担していましたが、令和7年度以降は、自治体のの利用料は各自治体で負担することとなります。引き続きクラウドサービス事業者から大口割引を獲得するためには、利用料を国が(一旦回収して)一括で支払う形を取ることが必要となるため、必要な法整備が行われた、というのが、こちらの改正の背景のようです。

 とりあえず、今回のデジタル手続法の改正内容の確認については、以上にしたいと思います。(衆議院の審議内容が掲載されると思われる、委員会ニュースはまだ公開されていないようですし。。)

 

(参考)

www.digital.go.jp