(AI活用推進法の提出理由)
今回は、第217回通常国会(1月24日〜6月22日)で成立したデジタル関係の法律のうち、「AI活用推進法」(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)について見てみます。(e−GOV法令検索では、略称名として「AI法」が登録されていますが、報道等でよく使われてる略称を使わせていただきます。)
まず、法案の提出理由は、以下のとおりです。
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与するため、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策について、基本理念並びに人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する基本的な計画の策定その他の施策の基本となる事項を定めるとともに、人工知能戦略本部を設置する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
かなり大雑把ですが、AIの研究開発と利活用(実装)を、国の主導で推進するための基本的な枠組み(基本計画の策定、戦略本部の設置など)を整備することが目指されているところかと思います。
AI技術は、社会の様々な分野での活用が進んでいますが、一方で、ディープフェイクや著作権侵害、個人情報保護をめぐるリスクも顕在化してきています。国際的にも、EUが「AI規則(AI Act)」を導入して、リスクレベルに応じた規制を進めたり、中国や米国でもAIに関する国家戦略が強化されています。こうした国際的な動きに後れを取らないよう、日本でもAI活用の推進とリスク対応に関する取組が求められていた、といったことが今回の新法提出の背景になります(報道等の受け売りですが。。)。
いずれにしても、今回のAI活用推進法の成立によって、AIの開発と利活用を国家戦略として進めるための枠組みが確立されたと言えるかと思います。
(AI活用推進法の概要)
法案の概要資料については、内閣府のHPに掲載されています。法案の概要部分を抜粋すると以下のとおりとなっています。

こちらを見ても、国家戦略としてのAI政策の推進のための項目(基本理念・基本的施策の法定、戦略本部・基本計画などの枠組みの規定、等)が、主要な内容となっており、基本法的な内容になっていることがわかります。
こうした内容に加え、地方自治体や民間との連携の強化や、ガイドライン策定や行政指導等によるリスク対応の規定も置かれています。
(具体的な条文の例)
具体的な条文については、ちょうど上で記載した自治体等との連携やリスク対応の条文を見てみたいと思います。(条文は、完全に個人の関心で選んでます。)
地方自治体や民間との連携の強化
まず、自治体等との連携については、第9条に以下の条文が置かれています。
(連携の強化)
第九条 国は、国、地方公共団体、研究開発機関及び活用事業者が相互に連携を図りながら協力することにより人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進が図られることに鑑み、これらの者の間の連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。
地方公共団体や民間事業者の責務を定め、連携の強化について定めるのは、他の基本法などでもよく見られる形ですね。
ソフトロー的なリスク対応
次に、リスク対応についてですが、こちらは、罰則付きの規制ではなく、ガイドラインや行政指導等による「ソフトロー」的な対応に関する規定が設けられています。指針(ガイドライン)の策定については第13条で、事業者への調査・指導・助言については第16条で以下の通り定められています。
(適正性の確保)
第十三条 国は、人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正な実施を図るため、国際的な規範の趣旨に即した指針の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。
(調査研究等)
第十六条 国は、国内外の人工知能関連技術の研究開発及び活用の動向に関する情報の収集、不正な目的又は不適切な方法による人工知能関連技術の研究開発又は活用に伴って国民の権利利益の侵害が生じた事案の分析及びそれに基づく対策の検討その他の人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に資する調査及び研究を行い、その結果に基づいて、研究開発機関、活用事業者その他の者に対する指導、助言、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。
なお、リスク対応に関する一定の懸念事項(例:生成AIによる児童画像の悪用)については、附帯決議でも明記されており、今後の運用で重点的に対応される見通しです。
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。
三 生成AIを含むAI技術は、社会や経済に対して便益をもたらすとともに様々なリスクを有していることに鑑み、AIの利活用に際しての留意点やリスクの回避策等について、事業者や国民に対して十分に周知すること。また、リスクの把握を含めたAIの適切な利活用の方法について、学校教育や社会教育等の場を活用することにより、AIに関するリテラシー教育を積極的に推進すること。
四 AI技術を悪用したディープフェイクポルノ、とりわけ児童の画像等を使用したものへの対策については、各種法令の適用による厳正な取締り及び被害者の保護を行うとともに、サイト管理者等への違法な情報の削除依頼を強化すること。また、同対策の実効性を高めるための方策の在り方について検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。
とりあえず、今回はここまでにします。
(参考)