(情報処理促進法の改正法案の提出理由)
第217回通常国会(1月24日〜6月22日)で成立したデジタル関係の法律をみていく流れの続きですが、今回は、電波法・放送法の改正について見てみます。電波法や放送法も、情報通信技術の進展等に伴って、毎年のように改正されていますね。。
今回の改正法案の提出理由は、以下のようになっています。
電波の有効利用を促進し、及び情報通信技術の進展等に対応した規制の合理化を図るため、特定高周波数無線局を開設することのできる者を価額競争により選定する制度の創設、無線局の免許状等及び基幹放送事業者の認定証のデジタル化、電波利用料制度の見直し等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
規制の合理化の中の一つですが、無線局の免許状等及び基幹放送事業者の認定証のデジタル化については、典型的な書面規制の見直しになるので、内容を見ておきたいと思います。
(免許状・認定証のデジタル化(書面規制の見直し))
無線局の免許状等及び基幹放送事業者の認定証のデジタル化について、総務省のHPにある、今回の法案の概要資料を見ると、以下のように記載されています。

こちらの1つ目の・にあるのが免許状等のデジタル化に関するものですね。
ちなみに、これまでは、「紙の免許状」等が法律上で定められていて、具体的には以下のような規定ぶりとなっています。
(免許状)
第十四条 総務大臣は、免許を与えたときは、免許状を交付する。
この「免許状」というのが、書面前提(書面を義務付ける)の規定だったわけですね。そして、こちらの条文が、今回の改正で、以下のように変わります。
(免許記録)
第十四条 総務大臣は、免許を与えたときは、当該免許に係る次に掲げる事項を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成し、総務省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨及び総務省令で定める事項を当該免許に係る免許人(無線局の免許を受けた者をいう。以下同じ。)に通知するとともに、当該電磁的記録に記録されている事項を、当該免許の有効期間中、当該免許人が閲覧することができる状態に置かなければならない。
一〜十一 (略)
こちら、条文の見出しから「免許記録」と変わっていますね。
なお、免許を受けた事業者の側が、紙で欲しい場合に備えて、第14条の2として、証明書の交付に関する規定が新たに設けられています。
(証明書の交付)
第十四条の二 免許人は、総務省令で定めるところにより、総務大臣に対し、前条又は第二十七条の五第二項の規定により作成された当該免許人に係る電磁的記録(以下「免許記録」という。)に記録されている事項を証明した書面の交付を請求することができる。
以上、電波法についての例について見ましたが、放送法においても、第94条の「認定証」を「認定記録」に見直したり、第94条の2に「証明書の交付」の規定を新設するなど、電波法と同趣旨の内容の改正が行われています。
(オンライン手続の義務付け(書面・対面規制の見直し))
先ほど引用した、総務省HPの法案概要を見て、お気づきなった方もいらっしゃると思いますが、2つ目の・を見ると、今回の改正では、免許状・認定証のデジタル化に加え、国や大規模な免許人(事業者)については、書面による手続きを廃止し、オンライン手続きが義務付ける内容の改正も行われています。
最後にこちらの条文を確認して見ますと、以下のような条文が新設されています。
(国の機関等による申請等の特例)
第百二条の十九 国の機関、独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人及び包括免許人その他の相当数の無線局を開設している者として総務省令で定めるものは、次の各号に掲げる手続については、当該各号に規定する規定において当該手続を書面等(書面、書類、文書その他文字、図形その他の人の知覚によつて認識することができる情報が記載された紙その他の有体物をいう。)により行うこととされているかどうかにかかわらず、総務省令で定めるところにより、総務省令で定める電子情報処理組織を使用する方法により行わなければならない。
一〜三十六 (略)
従来の書面・対面前提の手続きについて、デジタル・オンラインの利用を可能とするものは数多くありますが、義務付ける例というのは、まだ例が少ないと思いますし、とても先進的な規定ぶりと思いました。(なお、こちらの条文は、改正法の附則第6条で経過規定が設けられています。)
とりあえず、今回はここまでにします。
(参考)