デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第217回国会のデジタル関係法(10)電気通信事業法の改正

電気通信事業法改正法案の提出理由)

 第217回通常国会(1月24日〜6月22日)で成立したデジタル関係の法律を見ていく流れで、次に資金決済法の改正を見て終わりにしようと思っていのですが、前回の電波法・放送法の改正内容を確認した際に、総務省のHPを見たところ、電気通信事業の改正を見落としていたことに気づきました。そこで今回は、電気通信事業の改正電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律)について見てみたいと思います。

 法案の提出理由は、以下のとおりです。

近年の社会経済情勢の変化を踏まえ、基礎的電気通信役務のあまねく日本全国における提供及び電気通信事業者間の適正な競争関係を確保しつつ、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社の経営の自由度の向上等を図るため、基礎的電気通信役務について他の電気通信事業者が提供しない区域における提供の義務を負う最終保障電気通信事業者について規定するほか、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社の地域電気通信業務の範囲を見直す等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 ここにある、「基礎的電気通信役務」というのは、文化的な生活に不可欠最低限の電気通信サービスで、ユニバーサルサービスとも呼ばれるものです。「役務」というのは、法令用語でサービスのことですので、「基礎的な電気通信サービス」と置き換えてもらうと少しわかりやすいかもしれません。

 

ユニバーサルサービスに関する条文)

 せっかくの機会なので、ユニバーサルサービスに関する条文を改めて確認しておければ思います。「基礎的電気通信役務」については、電気通信事業法の第7条で以下のように定められています。

 (基礎的電気通信役務の提供)
第七条 基礎的電気通信役務国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における提供が確保されるべき次に掲げる電気通信役務をいう。以下同じ。)を提供する電気通信事業者は、その適切、公平かつ安定的な提供に努めなければならない。
 一 電話に係る電気通信役務であつて総務省令で定めるもの(以下「第一号基礎的電気通信役務」という。)
 二 高速度データ伝送電気通信役務(その一端が利用者の電気通信設備と接続される伝送路設備及びこれと一体として設置される電気通信設備であつて、符号、音響又は影像を高速度で送信し、及び受信することが可能なもの(専らインターネットへの接続を可能とする電気通信役務を提供するために設置される電気通信設備として総務省令で定めるものを除く。)を用いて他人の通信を媒介する電気通信役務をいう。第百十条の五第一項において同じ。)であつて総務省令で定めるもの(以下「第二号基礎的電気通信役務」という。)

 

 第一号で音声通話のサービスが、第二号でインターネット(ブロードバンド)のサービスが、「国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における提供が確保されるべき」ものとされています。

 第二号は、2022年の第208回国会での法改正で新設されたもので、このブログでも紹介していたと思います。

ura49.hateblo.jp

 

ユニバーサルサービスに関する改正の概要)

 今回の法改正では、ユニバーサルサービス制度に関して、複数事業者が連携して全国をカバーする最終保障提供責務を設けるという改正が行われています。

法案概要資料(抜粋)

 

 新たに設けられた「最終保障電気通信事業者の提供義務」に関する条文は、以下のとおりです。

 (最終保障電気通信事業者の提供義務)
第二十五条の二 最終保障電気通信事業者は、その最終保障業務区域において、当該最終保障業務区域に係る基礎的電気通信役務の届出契約約款に定める料金その他の提供条件による基礎的電気通信役務の提供の求めがあつた場合において、当該提供の求めに係る提供場所において当該基礎的電気通信役務に係る同一区分基礎的電気通信役務を提供する区域内電気通信事業者がいないときは、経営上の理由がある場合であつても、当該同一区分基礎的電気通信役務のうちいずれかの基礎的電気通信役務の提供を開始しなければならない。ただし、当該提供の求めをした者がこれを拒んだ場合又は当該提供場所の特殊性その他の事情に照らして特にやむを得ない理由がある場合は、この限りでない。
2 最終保障電気通信事業者は、区域内電気通信事業者により前項に規定する提供の求めに係る提供場所において当該同一区分基礎的電気通信役務が提供されるまでは、同項の規定により開始した基礎的電気通信役務の提供を継続しなければならない。ただし、当該基礎的電気通信役務の提供の相手方の同意がある場合又は正当な理由(経営上の理由を除く。)がある場合は、この限りでない。

3 (略)

 

 この「最終保障電気通信事業者」として指定されると、経営上の理由があっても、サービス提供を開始し、継続しなければならないということで、なかなか大変だなあと思いました。なお、その財源に充てるため「交付金」の制度が設けられています。詳しくは総務省のHPをご参照ください。

総務省|ユニバーサルサービス制度

 

 とりあえず、今回は以上にします。次回の資金決済法で一応第218回国会の分は終了になります。世間では、参議院選挙を経て、第218回国会が開会し、すでに閉会されていますが、なんとか次の臨時国会までには、終えられそうです。。

 

(参考)

www.soumu.go.jp