(資金決済法の改正法案の提出理由)
第217回通常国会(1月24日〜6月22日)で成立したデジタル関係の法律をみていく流れですが、今回が最後になります。最後は、資金決済法の改正(資金決済に関する法律の一部を改正する法律)について見てみます。
資金決済法は、電子マネーなどの決済サービスや、送金サービスを行う資金移動業(◯◯ペイなども含まれる)の規制などを行う法律・・・という程度のことしかわかりませんが、情報通信技術の発達や利用者のニーズの多様化に対応するために、改正が重ねられていってる印象がありますね。。
今回の改正理由は以下のとおりです。
金融のデジタル化等の進展に対応し、利用者保護を確保しつつ、イノベーションを促進するため、債権者から委託等を受けた者が、債務者等から資金を受け入れ、債権者等に移動させる行為等であって、国内から国外又は国外から国内へ向けて資金を移動させるものの一部を資金移動業等の規制の対象とするほか、暗号資産交換業者に対する資産の国内保有命令の創設、電子決済手段・暗号資産サービス仲介業の創設等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
正直あまり理解できているわけではないですが、提出理由の文面を見ると、クロスボーダー収納代行(というらしいです。)を規制の対象として明確化するほか、仮想通貨(暗号資産)の交換業者に対する国内保有命令の創設(海外に本拠のある交換業者が破綻した際に、顧客資産の海外流出を止めるため、らしいです)や、仮想通貨(暗号資産)の仲介を行う業種の新設などが主な内容となっていることが示されています。
(クロスボーダー収納代行の規制の明確化)
こちらについての詳細は、本年1月に公表されている「金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」報告書」を参照いただければと思いますが、従来(2019年のWG報告書など)は、国境を跨ぐ収納代行に関して明示的に示されていなかったところ、こうした類型の収納代行がマネーロンダリングに利用されるリスク等を踏まえ、今回のWG報告で対応の考え方が示された、ということが背景のようです。
こうした背景を踏まえた今回の改正で、クロスボーダー収納代行のうち、一定の適用除外(内閣府令で今後定められます)以外は、「為替取引に該当する」こと等が資金決済法で明記されました。
具体的には、第2条の2が改正され、第2号という形で、クロスボーダー収納代行が「為替取引」に該当することが明記されています。
第二条の二 金銭債権を有する者(以下この条において「受取人」という。)からの委託(国内から国外へ向けて資金を移動させ、又は国外から国内へ向けて資金を移動させる行為に係る場合にあっては、二以上の段階にわたる委託を含む。)、受取人からの金銭債権の譲受けその他これらに類する方法により、当該金銭債権に係る債務者又は当該債務者からの委託(二以上の段階にわたる委託を含む。以下この条において同じ。)その他これに類する方法により支払を行う者(以下この条において「債務者等」という。)から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、当該受取人又は当該受取人からの委託その他これに類する方法により支払を受ける者(以下この条において「受取人等」という。)に当該資金を引き渡すことによって、債務者等から受取人等に当該資金を移動させる行為(債務者等から現金の交付を受け、当該現金を受取人等に交付することにより当該資金を債務者等から受取人等に移動させる行為を除く。)であって、次の各号のいずれかに該当するものは、為替取引に該当するものとする。
一 受取人が個人(事業として又は事業のために受取人となる場合におけるものを除く。)であることその他の内閣府令で定める要件を満たす行為(次号に該当する行為を除く。)
二 国内から国外へ向けて資金を移動させ、又は国外から国内へ向けて資金を移動させる行為(当該行為の態様その他の事情を勘案し、利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定めるものを除く。)
なお、今回の資金決済法の改正の施行時期は、「公布の日(※6月13日)から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています(附則第1条)が、こちらのクロスボーダー収納代行に関しては、附則第2条で、現在こうした取引を業として営んでいる者は、この法律の施行の日から起算して六月間」は、「当該行為を業として営むことができる」旨が経過措置として定められています。
(暗号資産取引仲介業の登録制度)
「暗号資産等取引に係る仲介業の創設」については、法案の概要資料で以下のような説明が記載されています。
■暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者と暗号資産等の売買・交換を行いたい利用者を引き合わせる行為(媒介)のみを行う仲介業(登録制)を創設する。
新しく、登録制度が設けられているようなので、最後にその条文を確認しておければと思います。今回の改正で「第三章の四 電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」という章が新たに設けられ、その最初の条文(第63条の22の2)に以下のように定められています。
(電子決済手段・暗号資産サービス仲介業者の登録)
第六十三条の二十二の二 内閣総理大臣の登録を受けた者は、第六十二条の三及び第六十三条の二の規定にかかわらず、電子決済手段・暗号資産サービス仲介業を営むことができる。
(登録の申請)
第六十三条の二十二の三 前条の登録を受けようとする者は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した登録申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。
一〜十一 (略)
登録制度の条文は典型的なものでした。。「登録簿」という用語が使われていますが、こちらは、デジタル手続法(デジタル行政推進法)第9条の規定を踏まえて、電磁的記録で運用されているものと思われます。
とりあえず、以上にします。
(参考)