デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第219回国会のデジタル関係法(3)ストーカー規制法の改正

ストーカー規制法の一部を改正する法律)

 第219回国会へのデジタル関係法案の提出状況を以前に見た際にも触れましたが、最近のストーカー被害の深刻化を踏まえ、スマートフォン連携の「紛失防止タグ」(AirTag等)などを規制対象に加える、ストーカー規制法の一部改正法が、12月3日に成立し、12月10日に公布されました。第219回国会の閣法第1号で提出されていたものです。

 法案の提案理由は、以下の通りとなっています。

最近におけるストーカー行為等の実情に鑑み、紛失時における発見のために用いられる識別情報を送信する機能を有する装置の位置情報を、当該装置を所持する者の承諾を得ないで取得する行為等を規制の対象に加えるとともに、警告等に係る違反行為の相手方に係る一定の情報の保有等をする者が当該警告等を受けた者に対して当該情報を提供するおそれがある場合の措置に関する規定を整備する等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

 赤文字にしている部分にあるとおり、情報通信技術の進展により、従来の「見張り」や「つきまとい」とは異なる新たな手段が用いられるようになってきていることに対応するものです。

 

(位置情報無承諾取得等)

 GPSなどを使って相手の位置情報を取得することなどは、改正前のストーカー規制法でも、「位置情報無承諾取得等」として規制対象とされています。これは、 2020年の最高裁判決で、自動車へのGPS取り付けによる遠隔監視は「見張り」に当たらないとされたことから、GPS機器の悪用を明確に禁止するため、2021年の法改正で規定されたものです。

 今回の改正前の現行の条文は、以下のようになっています。

 (定義)
第2条
3 この法律において「位置情報無承諾取得等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
 一 その承諾を得ないで、その所持する位置情報記録・送信装置(当該装置の位置に係る位置情報地理空間情報活用推進基本法(平成十九年法律第六十三号)第二条第一項第一号に規定する位置情報をいう。以下この号において同じ。)を記録し、又は送信する機能を有する装置で政令で定めるものをいう。以下この号及び次号において同じ。)(同号に規定する行為がされた位置情報記録・送信装置を含む。)により記録され、又は送信される当該位置情報記録・送信装置の位置に係る位置情報を政令で定める方法により取得すること。
 二 その承諾を得ないで、その所持する物に位置情報記録・送信装置を取り付けること、位置情報記録・送信装置を取り付けた物を交付することその他その移動に伴い位置情報記録・送信装置を移動し得る状態にする行為として政令で定める行為をすること。

 

 「位置情報記録・送信装置」というのが、GPS機器のことを指していまして、GPS機器などを使った相手の承諾なしでの位置情報取得が規制対象としされています。

 ですので、無断でGPS機器を車や持ち物に取り付けたり、スマホアプリで位置情報を取得する行為は処罰の対象となっているわけですが、「紛失防止タグ」自体は位置情報を送信する機能を有しないため、現行の「位置情報記録・送信装置」という定義の下では、法規制の対象外となっていました。

法改正概要資料(警察庁HPより抜粋)

 

(位置特定用識別情報送信装置)

 上記のような背景もあって、今回の改正で「紛失防止タグ」の悪用を規制対象とするため、「位置特定用識別情報送信装置」についての定義が新たに設けられ、「位置情報無承諾取得等」の対象に加えられました。

 具体的には、「位置情報無承諾取得等」について定める第2条第3項の第2号として以下の規定が置かれました。(もとの第2号は、少し内容が変わって第3号に移動しています。)

 

 (定義)
第2条
3 この法律において「位置情報無承諾取得等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
 一 (略)

 二 その承諾を得ないで、その所持する位置特定用識別情報送信装置(当該装置を識別する情報を送信する機能を有し、当該装置の周辺において当該情報を受信した識別情報送受信装置(位置情報記録・送信装置その他の装置であって、当該情報を受信し、及び送信する機能を有するものをいう。)の位置に係る位置情報を利用して、その所在する地点又は区域の位置を特定するために用いられる装置をいう。以下この号及び次号において同じ。)(同号に規定する行為がされた位置特定用識別情報送信装置を含む。)の位置に係る位置情報を取得すること。
 三 (略)

 

 (あまり良く分かっていないので不正確かもしれませんが、)紛失防止タグはBluetoothで近くにあるスマホと接続することができ、スマホが離れてタグと接続できなくなると、最後に接続された場所をスマホに記録する、ということができるようです。そして、この機能を利用して、多くの利用者のスマホがタグを検知することで、クラウド経由で位置を特定し、持ち主へ通知する仕組みが可能となるのだとか。。いずれにしても、タグ自体にはGPS機能が備わっているわけではないため、従来の「位置情報記録・送信装置」の定義では、規制の対象外となってしまうわけですね。

 一方で、新たに設けられた「位置特定用識別情報送信装置」の定義では、「当該装置を識別する情報を送信する機能を有し、当該装置の周辺において当該情報を受信した識別情報送受信装置・・・・の位置に係る位置情報を利用して・・・・」となっていますので、紛失防止タグも対象となります。

 

 とりあえず、条文の確認は以上にしたいと思います。

 なお、「位置情報無承諾取得等」は、警告や禁止命令の対象となります。また、反復して行うと「ストーカー行為」として罰則(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金、等)の対象となります。

 

(参考)

www.npa.go.jp