はじめに
前回から、法令の中身・本文(本則)に当たる部分に入りましたが、いよいよ今回は、条・項・号について扱います。法令のいわばメインコンテンツの部分です。
(「条・項・号」の階層構造)
法令の形式として真っ先に思い浮かぶのは、「第1条、第2条……」という条文のイメージではないかと思います。
法令のメインコンテンツの部分を「本則」と言いますが、通常は、条に区分して内容が記載されます。(本則の後に、附則がありますが、こちらは別の回に譲ります。)さらに、「条」が「項」に区分されたり、条や項の中で何かを箇条書きしたいときに「号」が置かれます。
このようなことは整理するまでもないかもしれませんが、念のため、以下のような階層構造になっています。
- 条(Article):ルールの最小単位
- 項(Paragraph):条の中の段落
- 号(Item):項の中の箇条書き
(条について)
条の見出し、前段・後段など
法令では、ひとつの固まりとなる内容を一条ごと表現するのが原則です。(契約書等でも同様と思います。)そして、それぞれの条の冒頭に、その条の内容を要約した「見出し」が付けられます。
法令の基本単位となる「条」ですが、内容が多くなると「項」に分けられます。(「項」は、もともと段落の意味合いで、日本国憲法などの正規の法文を見るとそれがよく分かります。)しかし、条の内容を複数の文章に区切る場合でも、関連が強い場合などは、条(項)の中で複数の文章を続けて書きます。文章が2つのときは、前の文章を「前段」、後の文章を「後段」といいます。(3つのときは「前段」「中段」「後段」、4つ以上のときは「第一段」「第二段」「第三段」「第四段」・・・・と呼ばれます。)
また、後段の文章が、「ただし」から始まる場合には、前段を「本文」、後段を「ただし書」といいます。通常は、原則と例外を示す内容となっています。(前段、後段、本文、ただし書は、法令XMLでも区別されます。)
条の枝番号
法令を見ているときに、「第15条の2」のような条名を見たことがないでしょうか? このように「条」や「号」には、「枝番号」を付けることができます。 16条の前に新条文を追加する際、16条以降の条文を一つずつずらさなくてもすむように、15条の2として追加するわけです。
法令XMLでは、枝番号の場合は、アンダースコアでつないで、例えば「第三十八条の三の二」の場合は、Num="38_3_2"のように属性を記載します。
(項について)
一つの条を規定の内容に従って更に区分する必要がある場合には、「項」に分けて記載されます。以下のようなイメージです。
(不動産及び動産)
第八十六条 土地及びその定着物は、不動産とする。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。
条名(第86条)の直下に続く部分が第1項、項番号「2」で始まる部分が第2項となります。
「項番号」がない第1項
ここで、条文の最初の段落には「1」という数字が付いていないことに気づかれると思います。(第2項以降は「2」「3」・・・と数字が付きます)。これは、条名(第◯条)に続く部分は、第1項であることは自明だから、という説明がされています。しかし、見た目に数字(項番号)がなくても、ここは第1項ですので、法令XMLのタグでは必ず項番号の属性を記載する(第1項の場合は<Paragraph Num="1">)こととなっています。
なお、項には枝番号はありません。
(号について)
最後に、「号」についてです。号は、条又は項の中でいくつかの事項を箇条書きしたい場合に「一、二、三...」と漢数字の番号を付けて列記するものです。条の直下に置かれることも、項の下に置かれることもあります。
法律では、第2条あたりに、その法律で使われる用語の定義規定が置かれることが多いのですが、このような場合に、号で列記されるのが典型例です。
例えば、児童虐待防止法第2条では、児童虐待について、保護者が18歳未満の児童に対して行う身体的暴行、性的行為、ネグレクト(育児放棄)、心理的外傷を与える言動(DV目撃含む)を指すことが規定されていますが、以下のように虐待の4つの種類が第1号から第4号までに列記されています。
(児童虐待の定義)
第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
号の中での再列挙
号の中で更に細かくいくつかの列記事項を設ける必要がある場合には、「イ、口、ハ...」を使います。これを更に細分して列記するときには、「(1)、(2)、(3)...」などが使われています。これを更に細分して、「(i)、(ii)、(iii)...」を用いて列記される例もあります。
(法令XMLでの表現:条・項・号)
<MainProvision>(本則)
前回の繰り返しになりますが、法令のメインコンテンツは、この <MainProvision>(本則)要素の中に格納されます。本則<MainProvision>の直下には、前回扱った「編・章・節など」だけでなく、条 <Article> ・項 <Paragraph> も子要素として並ぶことができます。
通常、日本の法律は「条」から始まりますが、非常に短い法律(例:失火責任法など)では条を置かずに「項」だけで構成される場合があるため、<Paragraph> も <MainProvision> の直下の子要素として定義されています。
<Article>(条)、<Paragraph>(項)、<Item>(号)
法令の基本単位といえる条・項等の要素は、以下のような親子関係(入れ子構造)で構成されます。
1. <Article>(条)
「条」は、法令の基本単位です。
<Article>の子要素は、 <ArticleCaption>(条見出し) | <ArticleTitle>(条名:第1条など) | <Paragraph>(項)などです。
<Article>の属性は、以下のとおりです。
- Num(required): 条番号(例:"1"、"1_2")
- Delete: 削除された条(枝番維持など)の場合に true
- Hide: 非表示にする場合に true
2. <Paragraph>(項)
「条」の子要素として「項」が置かれます。
<Paragraph>の子要素は、 <ParagraphCaption>(項見出し) | <ParagraphNum>(項番号) | <ParagraphSentence>(項の本文) | <Item>(号)などです。
<Paragraph>の属性は、 項番号が必須(Num(required))であるほか、古い形式に対応するための属性が設定されています。
条文の本文は、<ParagraphSentence>(項の本文)の中に格納されます。(項に分かれていない条文の場合も第1項の本文という扱いで格納されます。)
<ParagraphSentence>の下には、更に子要素 <Sentence>が置かれます。この<Sentence>こそが、条文の文章を格納する部分で、属性にNum(文章の番号:前段・後段が分かる)、Function(機能:「本文」の場合は"main"、「ただし書」の場合は"proviso"を指定する)などの情報を追加できます。
3. <Item>(号)
「項」の子要素ととして「号」が置かれます。
<Item>の子要素は、 <ItemTitle>(号名:一、二など) | <ItemSentence>(号の本文) | <Subitem1>(細別:号の中にさらにリストがある場合)などです。
号の本文(列挙事項の記載)は、<ItemSentence>(号の本文)に格納されます。また、号の下に更に列記が必要な場合、子要素<Subitem1>(号の細分)が使われます。
具体的な例
抽象的な説明だと分かりにくいので、実際の条文構造を見てみます。例として、先程の児童虐待防止法の「第2条 (第1項) 第1号・・・」という構造を考えます。
なお、「号 <Item>」は直接「条 <Article>」の子要素になりませんが、項のない条文の直下に号が並ぶ場合(この児童虐待防止法第2条のような場合)でも、XMLでは条名(第2条)に続く文章が「第1項」の扱いになりますので、「項 <Paragraph>」の下に号を記述するという法令XMLのルールで問題は生じません。
【法律の記載】
(児童虐待の定義)
第二条 この法律において、「児童虐待」とは、・・・・次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 ・・・・
【法令XMLでの表記(一部簡略化)】
<Article Num="2">
<ArticleCaption>(児童虐待の定義)</ArticleCaption>
<ArticleTitle>第二条</ArticleTitle>
<Paragraph Num="1">
<ParagraphNum/>
<ParagraphSentence>
<Sentence Num="1">この法律において、「児童虐待」とは、・・・・次に掲げる行為をいう。</Sentence>
</ParagraphSentence>
<Item Num="1">
<ItemTitle>一</ItemTitle>
<ItemSentence>
<Sentence Num="1">児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。</Sentence>
</ItemSentence>
</Item>
<Item Num="2">
<ItemTitle>二</ItemTitle>
<ItemSentence>
<Sentence Num="1" WritingMode="vertical">・・・・</Sentence>
</ItemSentence>
</Item>
</Paragraph>
</Article>
このように、「条」の中に「項」があり、「項」の中に「号」があるという入れ子構造によって、法令データが正確に記録されています。「見出し」の記載方法や、第2条の本文が第1項扱いになっていることなども確認いただけるかと思います。
まとめ
今回は、条文のまとまりを示す章・節等がどのようにXMLで記録されるかを見てきました。
入れ子構造も含めた対応関係は、以下のとおりです。

次回は、別表と附則について説明できればと思います。法令標準XMLについては、次回で一通り終えられるかと思っています。
(参考)