デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

法令標準XML入門(11)法令改正とXMLデータの管理

はじめに

 法令XMLの理解に必要な法令の知識をここまでひと通り見てきましたが、法令データがどのようにアップデートされるのかを理解する上で、法令改正の仕組みを知ることは避けて通れないことに気づきました。

 エンジニアやデータサイエンティストが法令データを扱う際に知っておくべき、日本の法制執務の「独特な更新プロセス」を見ておきたいと思います。

 

(なぜ「改正法令」は消えるのか?)

 アプリが「アップデート」によって最新版に書き換わるように、法令の内容も更新されていきます。そして、そのプロセスは 「溶け込み方式」という伝統的な手法で行われています。


法令を改正するには「新しい法令」が必要

 まず大原則として、法令の内容を改正するには、別の「法令」で改正する必要があります。 これを一部改正法と呼びます。例えば、「A法」の一部を変えたいときは、「A法の一部を改正する法律」というタイトルの法律を国会で成立させなければなりません。

 

「改め文」と「溶け込み方式」

 改正法の中身は、私たちが普段読むような条文とは少し違う形をしています。
「第〇条中『A』を『B』に改める」
「第〇条の次に次の一条を加える」
 このように、既存の法律に対する「書き換え指示書」のような形式で改正を行います。このような形式の条文を「改め文」と呼びます。改正法(改め文)の指示に従って、元の法律に改正後の内容が反映される(組み込まれる)ことから、「溶け込み方式」とも呼ばれます。内容の溶け込みが完了すると、改正法(改め文)の役目は終わります。(法律を例として見ましたが、政令・省令等も同じです。)

 

改正法の「附則」だけが本法に蓄積される

  データのアップデータの際のポイントとして、溶け込みが完了すると、改正法の「本則(書き換え指示)」は消えてしまいますが、「附則」だけは元の法律の末尾に引き取られて残ります。なぜなら、改正法の附則には「この改正はいつから有効か(施行期日)」や「改正前の規定の適用をどうするか(経過措置)」などの情報が書かれているからです。結果として、古い法律ほど、歴代の改正法の「附則」が末尾に積み重なっていくことになります。

 

(法令XMLでの改正の扱い)

 「e-Gov法令検索」に掲載されている法令データの「始点」は、法律・政令は2015年8月、府省令・規則は2016年10月です。この「基準日」時点の状態で法令データがXML化され、これ以降の改正履歴がXMLとして管理されています。

 ある法令で改正が行われた場合、溶け込み作業がすべて完了した後の「施行日時点」での状態を、いわばスナップショットのように、「e-Gov法令検索」のXMLデータとして追加していきます。「古い版のXML」を書き換えるのではなく、「新しい施行日バージョンのXML」が別個に生成されるイメージです。

 

(法令履歴IDによるXMLデータの管理)

法令IDとは

 法令IDは、法令番号と1対1対応するように設計された15桁の機械可読な文字列で、法令を識別するために用いられます。

 法令IDの基本的な構造は次のとおりです。

YYYTTTTTTTTTNNN <- 法令ID
↓  ↓        ↓
YYY 年
  TTTTTTTTT 法令の種類
        NNN 番号

年:法令番号に含まれる和暦の年です。元号を表す1桁と、年数を表す2桁(0埋め)から構成されます。元号は、1: 明治、2: 大正、3: 昭和、4: 平成、5: 令和です。

法令の種類:法令番号に含まれる法令の種類を表すコードです。(法律AC、政令COなど)

番号:法令番号に含まれる数値の番号3桁(0埋め)です。

 

「法令履歴ID(Law RevisionID)」によるデータ管理

 法令XMLデータは、「法令履歴ID」で管理されています。「法令履歴ID」とは、一意の「法令ID」と、その内容が有効になる「施行日」、どの改正法令による改正版かの情報が付加されたものです。法令履歴IDは、以下のような形となります。

 その法令の「法令ID」_施行日(YYYYMMDD)_改正法令の「法令ID」

 なお、「基準日」時点のXMLデータの場合は、改正法令の「法令ID」の部分が0埋めになります。

 

 例えば、基準日以降改正のない「国旗国歌法」のXMLをダウンロードしてみると、そのファイル名は以下のようになっています。 

411AC0000000127_19990813_000000000000000.xml

 平成11年法律第127号で、1999年8月13日施行、ということがファイル名から分かります。

 もう一つの例として、デジタル社会形成基本法のXMLをダウンロードしてみますと、ファイル名は以下のようになります。

503AC0000000035_20250401_506AC0000000046.xml

 こちらは、令和6年法律第46号による改正が行われ、2025年4月1日に施行された時点でのデータであることが分かります。(あえてダウンロードしなくても、e-GOV法令検索の上部には、改正情報と改正履歴IDが掲載されています。)

 ちなみに、施行日が未定の間は、ダミーの日付(29991231)でデータを登録しておき、政令等で施行日が確定したら日付を更新する扱いのようです。

 

 

まとめ

  • 法令の改正は、改正法令によって行われ、改正内容は元の法令に溶け込む。
  • 法令XMLとして、基準日以降の改正データが蓄積されている。
  • 法令履歴IDで、XMLデータは管理されている。

 

(参考)

houseikyoku.sangiin.go.jp

laws.e-gov.go.jp