デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

デジタル法令用語:電子契約

(だいたいの意味)  

 電子契約は、インターネットなどを通じて、パソコンやスマホで行う契約のことです。紙での契約書に変わって、電子文書で電子署名を用いて行うものという説明を聞く場合もありますが、日常的な生活での契約についても、契約書なんてかわさないほうが多いですし、そこまで狭く限定する必要はないのではないかなと思います。

 電子署名は、電子契約の重要なツールだと思いますが、それを前提にすると、アマ◯ンや楽◯で買い物をするのは、電子契約ではなくなってしまいますね。まあ、僕の個人的な考えを聞きたい人もいないと思うので、関係の条文の方を見てみたいと思います。

 

(法令上の定義)

 「電子契約」については、電子委任状の普及の促進に関する法律(平成二十九年法律第六十四号)」で以下の定義が置かれています。これだと契約書が前提にされていますね(笑)。

(定義)
第二条 
2 この法律において「電子契約」とは、事業者が一方の当事者となる契約であって、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により契約書に代わる電磁的記録が作成されるものをいう。

 

 また、「特定商取引に関する法律施行規則(昭和五十一年通商産業省令第八十九号)」では、以下の定義となっています。こちらは、括弧内で定義を置く方法ですね。

(通信販売における禁止行為)
第十六条 法第十四条第一項第二号の主務省令で定める行為は、販売業者又は役務提供事業者が、電子契約(販売業者又は役務提供事業者と顧客との間で電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信技術を利用する方法により電子計算機の映像面を介して締結される売買契約又は役務提供契約であつて、販売業者若しくは役務提供事業者又はこれらの委託を受けた者が当該映像面に表示する手続に従つて、顧客がその使用する電子計算機を用いて送信することによつてその申込みを行うものをいう。以下この項及び第三項において同じ。)の申込みを受ける場合において、申込みの内容を、顧客が電子契約に係る電子計算機の操作(当該電子契約の申込みとなるものに限る。)を行う際に容易に確認し及び訂正することができるようにしていないこととする。

 

 さらに、「電子契約」ではないですが、「電子消費者契約」の定義について、「電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律(平成十三年法律第九十五号)」で、以下のように定義されています。

(定義)
第二条 この法律において「電子消費者契約」とは、消費者と事業者との間で電磁的方法により電子計算機の映像面を介して締結される契約であって、事業者又はその委託を受けた者が当該映像面に表示する手続に従って消費者がその使用する電子計算機を用いて送信することによってその申込み又はその承諾の意思表示を行うものをいう。
3 この法律において「電磁的方法」とは、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。

 

 結論として、法律の目的に応じて、多義的な使われ方がされているわけですが、情報通信技術を利用する方法で、電子計算機を使用して行うということが、ポイントになっているかと思います。

 なお、電子契約の根拠となる規定としては、民法522条2項が挙げられることが多いです。

民法(明治二十九年法律第八十九号)
(契約の成立と方式)
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない

 ちなみに、この下線の部分は、2020年に施行された改正民法で明文化されたものです。

 

(用例)

◯電子委任状の普及の促進に関する法律(平成二十九年法律第六十四号)
(目的)
第一条 この法律は、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により契約に関する書類の作成、保存等の業務を行う事業者の増加、情報通信ネットワークを通じて伝達される情報の安全性及び信頼性の確保に関する技術の向上その他の電子契約を取り巻く環境の変化の中で、電子委任状の信頼性が確保されることが電子契約における課題となっていることに鑑み、電子委任状の普及を促進するための基本的な指針について定めるとともに、電子委任状取扱業務の認定の制度を設けること等により、電子契約の推進を通じて電子商取引その他の高度情報通信ネットワークを利用した経済活動の促進を図ることを目的とする。

 

 電子契約については、実は、数えるほどしか用例がありません。今日は、とりあえず、ここまでで。

 

(参考)

ura49.hateblo.jp