デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第211回国会のデジタル関係法(9)国家戦略特区法の改正

国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律)

 今年の通常国会で成立した法律のうち、デジタル関係の法改正を見ていく9回目です。今回は、閣法37号として提出された「国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律」(このうち、国家戦略特区法の改正)について見てみます。

 提出理由は、以下の通りです。

産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関する施策の総合的かつ集中的な推進を図るため、補助金等交付財産の処分の制限に係る承認の手続の特例を定める等のほか、経済社会の構造改革及び地域の活性化を図るため、国家戦略特別区域法に規定されている法人農地取得事業に係る農地法の特例措置を構造改革特別区域において実施することを可能とするための規定の整備を行う必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 はい。全くデジタル化に関することが見当たらなそうなのですが、「承認の手続きの特例を定める等」の「等」の部分で、データ連携基盤の整備に関する支援内容の追加や、オンライン服薬指導に関する規定の削除などが含まれています。

 

 国家戦略特区とか、構造改革特区とか、色々出てきていますが、いずれも、規制改革のために特例を定めるような制度です。詳しくは、以下の内閣府のホームページをご参照ください。

www.chisou.go.jp

 

(データ連携基盤の整備に関する支援)

 さて、以下は、概要資料からの抜粋ですが、今回の国家戦略特区法の改正では、データ連携基盤の整備に関する支援に関する規定について、安全性と信頼性の確保に関する情報提供についても支援対象に加える、という改正が行われているようです。

 分野横断的な先端的サービスの実施に必要なデータ連携基盤を整備する者に対して国が行う援助の内容として、これまでの互換性の確保の取組(データ仲介機能の開発・無償提供等による基盤 整備コストの抑制など)に加え、データ連携基盤の利用における安全性と信頼性の確保に関する情報の提供等を追加

 

 実際の条文は、以下のとおりです。

 (情報システム相互の連携を確保するための基盤に係る規格の整備及び互換性の確保に関する援助)

第三十七条の八 国は、先端的技術利用事業活動の実施の促進を図るため、国家戦略特別区域において、先端的技術利用事業活動を実施する主体の情報システムと先端的技術利用事業活動の実施に活用されるデータを保有する主体の情報システムとの相互の連携を確保するための基盤を整備する者に対し、当該基盤に係る規格の整備及び互換性の確保並びに当該基盤から提供されるデータの内容の正確性の確保その他の当該基盤の利用における安全性及び信頼性の確保に関する情報の提供、相談、助言その他の援助を行うものとする。

 下線部が今回追加された部分となります。「データ連携基盤」は、「情報システム相互の連携を確保するための基盤」なのですね。(規定ぶりは意外に素直な形のような気がします。。)

 

(オンライン服薬指導の規定の削除)

 次に、オンライン服薬指導の規定ですが、今回の改正で、国家戦略特区法からは削除されています。以下も概要資料の抜粋ですが、すでに全国展開されたからということで、大変良いことかなと思います。

※ その他、オンライン服薬指導が全国展開されたことに伴い、国家戦略特別区域法における特例措置の規定 を削除する

 

 なお、今回削除された規定ですが、以下のような条文でした。(かなり長いので、一部のみ抜粋しています。)

 (医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の特例)
第二十条の五 国家戦略特別区域会議が、第八条第二項第二号に規定する特定事業として、国家戦略特別区域処方箋薬剤遠隔指導事業(国家戦略特別区域において、薬局開設者(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第一条の四に規定する薬局開設者をいう。以下この条において同じ。)が、その薬局(医薬品医療機器等法第六条に規定する薬局をいう。以下この条において同じ。)の所在地の都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長。以下この条において同じ。)が管轄する区域内の次項に規定する特定区域に居住する者に対して、特定処方箋(医師又は歯科医師から対面以外の方法による診察に基づいて交付された処方箋をいう。以下この項及び次項において同じ。)により調剤された薬剤を販売し、又は授与する場合に、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に薬剤遠隔指導等(テレビ電話装置その他の装置(第十五項において「テレビ電話装置等」という。)を用いて行われる当該薬剤の適正な使用のための情報の提供及び薬学的知見に基づく指導をいう。以下この条において同じ。)を行わせる事業であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。以下この条及び別表の八の五の項において同じ。)を定めた区域計画について、内閣総理大臣の認定を申請し、その認定を受けたときは、当該認定の日以後は、当該国家戦略特別区域処方箋薬剤遠隔指導事業を行おうとする薬局開設者は、当該国家戦略特別区域処方箋薬剤遠隔指導事業を行おうとするその薬局ごとに、その薬局の所在地の都道府県知事の登録を受けることができる。

 

 オンライン服薬指導は、「薬剤遠隔指導等」で、「テレビ電話装置その他の装置を用いて行われる当該薬剤の適正な使用のための情報の提供及び薬学的知見に基づく指導」という規定ぶりなのですね。「テレビ電話装置」というのが、リアルタイムというか、ライブというか、そういう対面に代替するやりとりのための機器として規定されているとわかりました。。

 

 とりあえず、いずれも読むのに難儀する長さですね。今回はこれまでとします。

 

(参考) 

www.cao.go.jp