デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第211回国会のデジタル関係法(10)次世代医療基盤法の改正

(医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律の一部を改正する法律)

 今年の通常国会で成立した法律のうち、デジタル関係の法改正を見ていく10回目です。今回は、閣法38号として提出された「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律の一部を改正する法律」(次世代医療基盤法の改正)について見てみます。

 提出理由は、以下の通りです。

健康・医療に関する先端的研究開発及び新産業創出の促進を図るため、医療情報に含まれる記述等の削除等により他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように加工した仮名加工医療情報の取扱いに関する規定を整備するとともに、匿名加工医療情報を匿名医療保険等関連情報等と連結して利用することができる状態で提供するための仕組みの創設、国が実施する匿名加工医療情報及び仮名加工医療情報に関する施策への協力に関する医療情報取扱事業者の責務規定の創設等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

 医療情報を匿名加工して、ビッグデータとして利活用するための仕組みが、この法律では定められているのですが、匿名加工する際に、個人が特定されるような特異値などは削除する必要がありました。ですが、このようなデータも研究などで利用する際に重要な情報であるため、そうした情報も含めることができる「仮名加工医療情報」の制度が新たに設けられています。また、匿名加工情報を医療保険等の公的なデータベースの情報と連結して分析できるようにする仕組みも新たに設けられています。

 

 あまりうまく説明できていないと思いますので、より正しく分かりやすい説明は、ニュースなどでの説明をご参照ください。。

www3.nhk.or.jp

 

(仮名加工医療情報とは?)

 新しく設けられた「仮名加工医療情報」とは、他の情報と照合しない限り、個人を特定できないよう加工した情報のことです。個人情報から氏名やID等を削除したものですが、匿名加工医療情報とは異なり、特異な値や希少疾患名等の削除を行いませんので、研究などでのデータの有用性をより確保することができます。ですが、一方で個人情報の保護が必要なため、仮名加工医療情報の作成事業者や、仮名加工医療情報の利活用者は、国が認定する仕組みとなっています。

 

 用語の定義は以下のようになっています。

 (定義)
第二条
3 この法律において「匿名加工医療情報」とは、次の各号に掲げる医療情報の区分に応じて当該各号に定める措置を講じて特定の個人を識別することができないように医療情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該医療情報を復元することができないようにしたものをいう。
一・二 (略)4 この法律において「仮名加工医療情報」とは、次の各号に掲げる医療情報の区分に応じて当該各号に定める措置を講じて他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように医療情報を加工して得られる個人に関する情報をいう。
一・二 (略)

 「他の情報と照合しない限り」というところがポイントですね。匿名加工、仮名加工については、個人情報保護法の考え方と同様と思っていただいてよいと思います。

 

(連結可能匿名加工医療情報の提供)

 次に、匿名加工医療情報を匿名医療保険等関連情報等と連結して利用できるように提供する仕組みについてですが、概要資料では以下のような説明となっています。

本法に基づく匿名加工医療情報と、NDB※や介護DB等の公的データベースを連結解析できる状態で研究者等に提供できることとする。 ※高齢者医療確保法に基づき、国民の特定健診や特定保健指導情報、レセプト情報を管理するデータベース

 

 「匿名加工情報と公的データベースを連結解析できる状態」というのが、どういう規定ぶりなのか、気になったので見てみると、以下の通りでした。

 (連結可能匿名加工医療情報の提供)
第三十一条 認定匿名加工医療情報作成事業者は、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第十六条の二第一項の規定により匿名医療保険等関連情報(同項に規定する匿名医療保険等関連情報をいう。以下この項において同じ。)の提供を受けることができる者その他の政令で定める者に対してする場合に限り、第十九条第一項又は第四十七条第一項の規定により作成した匿名加工医療情報について、匿名医療保険等関連情報その他の政令で定めるものと連結して利用することができる状態で提供することができる。

 

 情報と情報とを連結して利用できる状態、というような言い方になるのですね。。

 前回は、「データ連携基盤」という用語が出てきましたが、データは連携、情報は連結なんでしょうかね。。そうしたことは、とりあえず今度にして、今回はこれまでとします。

 

(参考)

 

 www.cao.go.jp

ura49.hateblo.jp