(NTT法の一部を改正する法律)
第213回国会で成立した法律のうち、デジタル関係の法改正を見ていくという試みですが、今回は、改正内容自体は、あまりデジタルに関係ないのですが、NTT法の改正について見てみます。正式な法案名は「日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案」で、閣法番号は第33号です。
提出理由は、以下の通りです。
近年における日本電信電話株式会社、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社を取り巻く社会経済情勢の変化に鑑み、これらの会社について、電気通信技術に関する研究に係る責務を廃止するとともに、商号の変更を可能とするほか、日本の国籍を有しない人が取締役又は監査役に就くことを禁止する規制を緩和する等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
この提出理由からもわかるように、今回のNTT法の改正は、商号変更を可能とすることや、外国人役員に関する規制の緩和など、特殊会社であるNTTに課されている規制を緩和する内容のものです。
(NTT法とは?)
そもそもの話ですが、NTT法は、1985年に、電電公社が民営化された際に制定された法律です。
電気通信回線(当時は電話回線網ですが)を全国に整備するには、国家事業規模の資金と期間が必要となりますので、当初は国(電電公社)の主導で、電話回線網が整備されていきましたが、1985年に電電公社が民営化されて東西のNTTになると、電気通信回線設備もNTTに引き継がれました。
一方で、事業の公共性を踏まえて、NTT法によって、民営化後も業務内容や経営に関する事項について、一定の規制や国の関与が定められました。
具体的には、NTT(持株会社及び東西のNTT)に、通話サービスを全国一律に提供する義務(ユニバーサルサービス)を定めている(第3条)ほか、NTT(持株会社)の株式の政府の所有割合を1/3以上とする規定(第4条)や、NTT(持株会社及び東西のNTT)の役員の選任や事業計画の策定について総務大臣の認可が必要とする規定(第10条、12条)などが置かれています。
NTT法では、このような一定の規制や国の関与の下で、国の政策の方向性を踏まえた事業が特殊会社によって展開されるという仕組みになっているのですが、これらの規制の一部が今回緩和されたということです。
ちなみに、NTT法については、以下の書籍から引用しています。
デジタル関係法のツボとコツがゼッタイにわかる本 / 法務図書WEB
(具体的な改正内容)
総務省のHPの法案概要資料を見ると、以下のような改正内容となっています。(文字のコピペができないので、画像で貼り付けます。。)
特殊会社としてNTTに課されている規制が緩和されていることがわかります。①は、ちょっとわかりにくいですが、研究成果の開示義務が廃止されると言い換えるとわかりやすいかと思います。(NTTの研究所はすごい、というイメージを個人的に勝手に持っているのですが、ググってみると、以下のような記事も出てくるので、やはりすごいのだろうと思いますね。。)
また、⑤にあるように、会社名の変更も、今後は法改正なくできるようになるのですね。確かに「電信電話」というのは、今の時代にそぐわない気がしますが。。
なお、今回の改正法の附則には、以下のような検討条項が盛り込まれていました。特殊会社という形態も含め、今後更に規制の見直しが進められていくものと思われます。
(検討)
第四条 政府は、この法律の施行の状況並びに電気通信技術の進展の状況及びその利用の動向、電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第五号に規定する電気通信事業者間の競争の状況その他内外の社会経済情勢の変化を勘案し、国民生活に不可欠な同条第三号に規定する電気通信役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保、電気通信事業(同条第四号に規定する電気通信事業をいう。以下この条において同じ。)の公正な競争の促進、電気通信事業及びその関連事業の国際競争力の強化、電気通信事業に係る安全保障の確保等を図る観点から、日本電信電話株式会社等に関する法律の廃止を含め、日本電信電話株式会社、新法第一条の二第二項に規定する東日本電信電話株式会社及び同条第三項に規定する西日本電信電話株式会社(以下この条において「日本電信電話株式会社等」という。)に係る制度の在り方について検討を加え、その結果に基づいて、令和七年に開会される国会の常会を目途として、日本電信電話株式会社等に対する規制の見直しを含む電気通信事業法の改正等必要な措置を講ずるための法律案を国会に提出するものとする。
(参考)