デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第213回国会のデジタル関係法(2)所得税法等の一部を改正する法律

所得税法等の一部を改正する法律)

 第213回国会で成立した法律のうち、デジタル関係の法改正を見ていくという試みですが、今回は、「所得税法等の一部を改正する法律」について見てみます。

 提出理由は、以下の通りです。

賃金の上昇が物価高に追い付いていない国民の負担を緩和し、物価の上昇を上回る持続的な賃金の上昇が行われる経済の実現を目指す観点からの令和六年分における所得税額の特別控除の実施及び給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度の強化等並びに資本の蓄積の推進及び生産性の向上による供給力の強化のための産業競争力基盤強化商品生産用資産を取得した場合の税額控除制度及び特許権等の譲渡等による所得の課税の特例の創設を行うとともに、新たな産業の創出及び育成を推進するための特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等の適用要件の見直し並びに経済のグローバル化を踏まえた特定プラットフォーム事業者を介して行う電気通信利用役務の提供に関する消費税の課税の特例の創設を行うほか、既存の特別措置の整理合理化を図り、あわせて住宅用家屋の所有権の保存登記等に対する登録免許税の特例等期限の到来する特別措置について実情に応じ適用期限を延長する等、所要の措置を一体として講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

 この赤文字の部分は、グローバルに活動するプラットフォーム事業者への課税を行うというものですが、その前提としては、デジタル化の進展があってのことと思います。ということで、デジタルに関係するものとして改正内容を見てみたいと思います。

 

(プラットフォーム課税の導入)

 今回の改正の概要資料を見ると、以下のような内容が記載されています。

消費課税
○ プラットフォーム課税の導入
・ 国外事業者がデジタルプラットフォームを介して国内向けに行うデジタルサービスについて、国外事業者の取引高 50 億円超のプラットフォーム事業者に消費税の納税義務を課す制度の導入

 

 近年、大規模なプラットフォームの存在を背景に、デジタル市場が拡大(アプリの市場規模は2024年に5兆円強にも達する予想らしいです。)しているところ、プラットフォームを介して数多くの国外事業者が国内市場に参入している中で、国外事業者の捕捉や調査・徴収に課題があることから、プラットフォームを運営する事業者の役割に着目して消費税の納税義務をプラットフォーム事業者に課す制度(プラットフォーム課税)を一定規模以上の事業者に導入する、ということのようです。(「国境を越えたデジタルサービスに対する消費税の課税のあり方に関する研究会」の報告書の受け売りですが。。)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/PF_gaiyou.pdf

研究会報告書概要より抜粋

 ア◯ゾンなどで商品を販売している事業者がいるとして、(ア◯ゾンは場を提供しているだけなので)納税義務は実際に販売している事業者が負う、というのが現行の制度ですが、海外の事業者の場合などは補足や調査が困難なので、一定規模のプラットフォーム事業者には納税の義務を課す(プラットフォーム課税)ことにする、というなのですね。。

 すごく大雑把な理解でしかないので、正確な解説などは、財務省から出される論文などをご参照いただければと思います。。

 

(具体的な条文など)

 今回の改正で、消費税法に新設された第15条の2は、かなりの長さと複雑さなので、プラットフォーム事業者の定義のある第1項だけ引用してみます。以下のように、見出し(カッコ書きの部分)からして、相当に長いものになっています。。

 (特定プラットフォーム事業者を介して行う電気通信利用役務の提供に関するこの法律の適用)
第十五条の二 国外事業者が国内において行う電気通信利用役務の提供(事業者向け電気通信利用役務の提供に該当するものを除く。以下この条において同じ。)がデジタルプラットフォーム(不特定かつ多数の者が利用することを予定して電子計算機を用いた情報処理により構築された場であつて、当該場を介して当該場を提供する者以外の者が電気通信利用役務の提供を行うために、当該電気通信利用役務の提供に係る情報を表示することを常態として不特定かつ多数の者に電気通信回線を介して提供されるものをいう。以下この条において同じ。)を介して行われるものであつて、その対価について当該デジタルプラットフォームを提供する事業者(次項において「プラットフォーム事業者」という。)のうち同項の規定により国税庁長官の指定を受けた者(以下この条において「特定プラットフォーム事業者」という。)を介して収受するものである場合には、当該特定プラットフォーム事業者が当該電気通信利用役務の提供を行つたものとみなして、この法律の規定を適用する。

 赤文字の部分が、デジタルプラットフォームの定義になっています。こうした「デジタルプラットフォーム」を提供する事業者が「プラットフォーム事業者」とされています。

 

 個人的には、インターネット上で「場」を提供しているというプラットフォームの特徴が、「不特定かつ多数の者が利用することを予定して電子計算機を用いた情報処理により構築された場で」「不特定かつ多数の者に電気通信回線を介して提供されるもの」という規定ぶりになっているあたりが、たいへん味わい深いですが。。

 すみません、ただの個人の感想です。。

 

(参考)

www.mof.go.jp