デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第213回国会のデジタル関係法(5)生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律

(生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律)

 第213回国会で成立した法律のうち、デジタル関係の法改正を見ていくという試みですが、今回は、「生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律」について見てみます。確報番号ですと第9号です。

 提出理由は、以下の通りです。

単身高齢者世帯の増加等を踏まえた安定的な居住の確保の支援、被保護世帯の子どもへの支援の充実等を通じて、生活困窮者等の自立の更なる促進を図るため、生活困窮者住居確保給付金及び進学準備給付金の支給対象者の追加、一部の被保護者を対象とした生活困窮者就労準備支援事業等の実施、社会福祉住居施設の適正な運営を図るための規定の整備等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

 この提出理由からはわからないのですが、改正内容として、都道府県が広域的観点からデータ分析等を行い、市町村への情報提供を行う仕組みの創設が含まれています。

 

(広域的観点からのデータ分析)

 今回の改正の概要資料には、以下のような内容が記載されています(下線、赤文字は当方で付記)。

3.支援関係機関の連携強化等の措置【生活困窮者自立支援法、生活保護法】
① 就労準備支援、家計改善支援の全国的な実施を強化する観点から、生活困窮者への家計改善支援事業についての国庫補助率の引上げ、生活保護受給者向け事業の法定化等を行う。
② 生活困窮者に就労準備支援・家計改善支援・居住支援を行う事業について、新たに生活保護受給者も利用できる仕組みを創設し、両制度の連携を強化する。
③ 多様で複雑な課題を有するケースへの対応力強化のため、関係機関間で情報交換や支援体制の検討を行う会議体の設置(※)を図る。
※ 生活困窮者向けの支援会議の設置の努力義務化や、生活保護受給者の支援に関する会議体の設置規定の創設など
④ 医療扶助や健康管理支援事業について、都道府県が広域的観点からデータ分析等を行い、市町村への情報提供を行う仕組み(努力義務)を創設し、医療扶助の適正化や健康管理支援事業の効果的な実施等を促進する。

 

 生活に困窮している方々へのより適切な支援のためのデータ分析などは、デジタルの強みが活かせる部分ですので、デジタル関係といってよいかと思います。

 

(具体的な条文)

 では、「広域的観点からのデータ分析」については、どのような規定振りになっているのか、今回の改正で、生活困窮者自立支援法に新設された第81条の2を見てみると、以下のようになっています。

 

 (都道府県の援助等)
第八十一条の二 都道府県知事は、市町村長が行う医療扶助及び被保護者健康管理支援事業について、市町村の区域を超えた広域的な見地から調査、分析及び評価(以下この条において「調査等」という。)を行い、市町村長に対し、医療扶助の適正な実施及び
被保護者健康管理支援事業の効果的かつ効率的な実施に関する技術的事項について、当該調査等に基づく情報の提供その他必要な援助を行うよう努めるものとする。

 

 赤文字の部分が、都道府県が広域的観点からデータ分析等を行い、市町村への情報提供を行う仕組み(努力義務)の創設に関する部分かと思います。

 広域的なデータ分析等(概要資料)→広域的な見地から調査、分析及び評価(条文)

 

 条文はデジタルっぽくないですね。。

 上記のように、「事業について・・・調査、分析」とすれば法令的には、あえてデータとか書く必要はないわけですね。。条文を確認してみれば、まあそうか・・というところではあるのですが、より直接的に「データの分析及び活用」のような規定ぶりを期待していたので、少し残念です。。

 ちなみに、データ分析の用語を使っている法令の例としては、以下のようなものがありました。

国立教育政策研究所組織規則
 (教育データサイエンスセンターの所掌事務)
第二十四条 教育データサイエンスセンターは、次に掲げる事務をつかさどる。
一 教育に係るデータの収集、分析及び活用(以下この条において「教育データ分析等」という。)に関する政策に係る基礎的な事項の調査及び研究を行うこと(研究支援課の所掌に属するものを除く。)。
二 前号の事務に関し、国内の研究機関、大学その他の関係機関との連絡及び協力を行うこと。
三 国内の教育関係機関及び教育関係者に対し、教育データ分析等に関する援助及び助言を行うこと。

 

 教育政策おけるEBPMの推進にも関わる条文ですね。各分野でデータの利活用が進んでいくとを期待したいと思います。。ということで、今回はこれで。

 

(参考)

www.mhlw.go.jp