デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

プラットフォーム事業者からの情報流出と報告義務

SNSの安全性に関する質問主意書

 今国会の法案とは関係ないのですが、法案の成立状況を確認しようと思って、参議院のHPを見ていたところ、質問主意書に以下のようなものがあるのを見つけました。(一部を抜粋しています。)

質問第三号
SNSの安全性に関する質問主意書

二 LINEについて情報流出の事例が再び発生したことを踏まえ、鈴木総務大臣は令和五年十一月二十八日の記者会見で、「通信サービスにおける利用者情報保護の不備による再発事案は非常に遺憾」である旨述べ、LINEヤフー社に対し利用者への適切な周知と原因究明を求めていることを明らかにした。この事案の発生を受けて、政府はLINEヤフー社に対してどのような報告徴収、立入検査、指導を行ったか、また今後の対応計画はどのようなものか。

 

 LINEの情報流出についての質問ですが、この質問に対する答弁としては、以下のような回答がされていました。

二について
 個人情報保護委員会においては、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第百四十六条第一項の規定に基づき、令和五年十二月十二日付けで、総務省においては、電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第百六十六条第一項の規定に基づき、令和六年一月九日及び同月十七日付けで、詳細な事実関係等について報告を求めており、今後、当該報告等を踏まえて、政府として、関連法令に基づき、必要な対応を検討してまいりたい。

 

 ちなみに、質問主意書というのは、国会法第74条の規定に基づいて、国会議員の先生が内閣に対して質問をするもので、政府からの回答は閣議決定されています。

 

(プラットフォーム事業者の報告義務)

 この回答にあるように、プラットフォーム事業者からの情報流出があった場合には、個人情報保護法電気通信事業法の規定に基づいて、国は報告などを求めることができるのですね。

 参考までに、条文を見ておきたいと思います。

 

電気通信事業法

 (報告及び検査)
第百六十六条 総務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、電気通信事業者、第三号事業を営む者若しくは媒介等業務受託者に対し、その事業に関し報告をさせ、又はその職員に、電気通信事業者、第三号事業を営む者若しくは媒介等業務受託者の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、電気通信設備電気通信事業者又は第三号事業を営む者の事業場に立ち入る場合に限る。)、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

 

個人情報の保護に関する法律

 (報告及び立入検査)
第百四十六条 委員会は、第四章(第五節を除く。次条及び第百五十一条において同じ。)の規定の施行に必要な限度において、個人情報取扱事業者、仮名加工情報取扱事業者、匿名加工情報取扱事業者又は個人関連情報取扱事業者(以下この款において「個人情報取扱事業者等」という。)その他の関係者に対し、個人情報、仮名加工情報、匿名加工情報又は個人関連情報(以下この款及び第三款において「個人情報等」という。)の取扱いに関し、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、当該個人情報取扱事業者等その他の関係者の事務所その他必要な場所に立ち入らせ、個人情報等の取扱いに関し質問させ、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

 

 今更ですが、プラットフォーム事業者は、電気通信事業者個人情報取扱事業者と、双方の立場で報告の義務を負っているわけですね。勉強になりました。

 どちらも報告徴収だけでなく、立ち入り検査もできることになっていますね。いずれにしても、対応が大変そうです。。

 

(政府や自治体でのLINEの利用状況)

 全くの余談ですが、この質問主意書の回答の中には、政府や自治体でのLINEの利用状況や、国産のSNSプラットフォーム開発についての記載もありました。

一について
 (略)、政府機関については、令和五年五月一日時点で把握している限りでは、各府省庁が管理する御指摘の「LINE」のアカウントの数は二十八であり、地方公共団体については、御指摘の「ガイドライン」で示したとおり、令和三年三月十八日時点で「LINE」を業務上利用している地方公共団体の割合は六十四・八パーセントである。

五について
 御指摘の「国産のSNSプラットフォーム」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として申し上げれば、SNSを含むソフトウェアは国民生活や産業活動に不可欠であることから、国内に事業基盤を持つ事業者によるソフトウェアの開発と利活用は、重要であると考えている

 

 たまに質問主意書を見てみると、いろいろなものがあって興味深いですね。

 

(参考)

www.sangiin.go.jp