デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

第211回国会のデジタル関係法(15)デジタル社会形成基本法等の改正

(デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律)

 今年の通常国会で成立した法律のうち、デジタル関係の法改正を見ていく15回目です。今回は、閣法47号として提出された「デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律」について見てみます。

 提出理由は、以下の通りです。

デジタル社会形成基本法に基づくデジタル社会の形成に関する施策として、情報通信技術の進展を踏まえたその効果的な活用のための規制の見直しを推進するため、デジタル社会形成基本法、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律等の関係法律について所要の規定の整備を行う必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

 デジタル庁から提出されているもので、デジタル社会形成基本法、デジタル手続法の改正のほか、書面掲示規制を定める個別の法律62本の一括改正が行われています。

 

(改正の概要)

 デジタル庁のHPを見ると、改正の概要としては、以下の3点が記載されています。

1. デジタル技術の進展等を踏まえた自律的・継続的な規制の見直しの推進
2. 記録媒体による申請等のオンライン化
3. 書面掲示規制の見直し

 

 このうち、1のデジタル技術の進展等を踏まえた自律的・継続的な規制の見直しの推進(デジタル規制改革の推進)については、デジタル社会形成基本法の「第4章 施策の策定に係る基本方針」の中に、「デジタル技術の効果的な活用のための規制の見直し」に関する条文(第36条)が新たに追加されました。また、政府が策定する「デジタル社会の形成に関する重点計画」の中に、デジタル規制改革に関して政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策について盛り込むことも明記されました(第38条第2項第15号)。

 これらの改正によって、デジタル化に関する国の基本方針として、デジタル規制改革を推進するということが明確に位置づけられました。

◯デジタル社会形成基本法
 (情報通信技術の効果的な活用のための規制の見直し)
第36条 デジタル社会の形成に関する施策の策定に当たっては、最新の情報通信技術の活用により国民の利便性の向上及び行政運営の改善を図る観点から、国、地方公共団体及び事業者の業務の処理について、これに関連する規制により情報通信技術の進展の状況を踏まえたその効果的な活用が妨げられないようにするために必要な措置が講じられなければならない。

 (デジタル社会の形成に関する重点計画の作成等)
第38条
2 重点計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
 十五 情報通信技術の効果的な活用のための規制の見直しに関し政府が迅速かつ重
点的に講ずべき施策

 

 また、デジタル手続法には、新たに「情報通信技術の効果的な活用の推進に関する施策」に関する第4章が設けられ、国や地方自治体が、情報通信技術の進展の状況を踏まえて、情報通信技術の効果的な活用のための施策を講じなければならないことが定められました(第16条)。

◯デジタル手続法
 (情報通信技術の進展への対応)
第16条 国は、情報通信技術の進展の状況を踏まえ、手続等並びにこれに関連する行政機関等の事務及び民間事業者の業務の処理において、国民の利便性の向上及び行政運営の改善を図る観点から情報通信技術を効果的に活用することができるようにするため、必要な施策を講じなければならない。
2 地方公共団体は、国が前項の規定に基づき講ずる施策に準じて、条例又は規則に基づく手続並びにこれに関連する行政機関等の事務及び民間事業者の業務の処理において、国民の利便性の向上及び行政運営の改善を図る観点から情報通信技術を効果的に活用することができるようにするため、必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

 

(書面掲示規制の一括改正)

 上記のほか、今回の法改正では、何らかの情報について特定の場所に書面で掲示することが定められている規定(書面掲示規制)について、インターネットによる閲覧等を可能とするため、そのような書面掲示規制を定める個別の法律62本の一括改正も行われました。これらの改正によって、いつでもどこでも、インターネットを通じて必要な情報が確認できるようになり、利用者の利便性の向上が図られることとなります。

 書面掲示の主体は、行政だけでなく、民間事業者の場合もあります(利用料金を掲示する場合など)ので、民間事業者にインターネットでの情報発信などの新たな対応を求めるという側面もありますが、対応困難な一部の零細事業者等については、適用除外の規定が設けられています。

 今回の法改正では、このように数多くの法律の一括改正が行われているため、「デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律」は、「デジタル規制改革推進一括法」の略称で呼ばれています。

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