(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律)
今年の通常国会で成立した法律のうち、デジタル関係の法改正を見ていく8回目です。今回は、閣法30号として提出された「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律」(ADR法の改正)について見てみます。
提出理由は以下の通りとなっています。
我が国における裁判外紛争解決手続の利用を一層促進し、紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図るため、認証紛争解決手続において成立した和解に基づく強制執行を可能とする制度を創設する等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
提出理由を見る限り、デジタル化とは関係なさそうですが、改正後の条文では、デジタル化に対応した規定が設けられていますので、備忘的に記録しておきます。
今年の通常国会での内閣提出法案は60本でしたので、これで半分です、、と言いたいところですが、デジタル庁の提出法案2本(マイナンバー法、デジタル規制改革一括法)があるので、まだまだ序盤という感じです。。
(特定和解の申立書面のデジタル化)
この法案については、概要資料がないので、その引用ができないのですが、「特定若い」という、執行力のある和解の手続の申立てについて、「書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録に係る記録媒体の提出をもっ て、当該書面の提出に代えることができる」という規定が設けられています。
実際の条文は、以下のようになっています。
(特定和解の執行決定)
第二十七条の二
3 前項の書面については、これに記載すべき事項を記録した電磁的記録に係る記録媒体の提出をもって、当該書面の提出に代えることができる。この場合において、当該記録媒体を提出した申立人は、当該書面を提出したものとみなす。
行政手続での申請等のデジタル化に関するデジタル手続法の規定と同じかな、、と思ったのですが、よく見ると記録媒体の提出が必要なので、オンラインでの申立てはできないようですね。。
(認証紛争解決事業者の公示のデジタル化)
さて、裁判外紛争解決手続ですが、民間機関が手続を行うこともできますが、その場合は、ADR法で認証を受けた者のみが手続を実施できることとなっています。そのような認証を受けた事業者を「認証紛争解決事業者」といいますが、この認証紛争解決事業者が認証事業者であることや、業務の内容等を利用者に情報提供する場合の方法について、インターネットの利用を可能とする規定が設けられています。
実際の条文の規定ぶりは、以下のとおりです。
(認証の公示等)
第十一条
2 認証紛争解決事業者は、認証紛争解決手続を利用し、又は利用しようとする者に適正な情報を提供するため、法務省令で定めるところにより、認証紛争解決事業者である旨並びにその認証紛争解決手続の業務の内容及びその実施方法に係る事項であって法務省令で定めるものを、認証紛争解決手続の業務を行う事務所において見やすいように掲示し、又はインターネットの利用その他の方法により公表しなければならない。
様々な法律で、事業者に対して、一定の事項を事業所等で掲示するよう定めている、いわゆる「書面掲示規制」については、今回、デジタル規制改革一括法で、一括的に見直しが行われ、インターネット等での公表が義務付けられましたが、それに近い内容です。ただ、こちらは、「又は」となっているので、インターネット利用という選択肢が増えるという形になっています。
以上、簡単ですが、今回はこれで終わりにします。