デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

学校とデジタル化:教育データの利活用(個人情報(4))

(教育データの利活用ロードマップ)  

 前回、令和5年3月の「教育データの利活用に係る留意事項」について見てみましたが、その前年の令和4年1月には、デジタル庁が中心となって「教育データの利活用に向けたロードマップ」が策定されています。

www.digital.go.jp

 子どもたちの教育データを国が一元管理するのか? ということで話題になったので、ご記憶の方もいらっしゃるかもしれませんが、このことについては、以下のようなQAがデジタル庁のHPに記載されていました。

 

Q2 政府は、個人の教育データを一元管理することを考えているのですか。
A2
政府が学習履歴を含めた個人の教育データを一元的に管理することは全く考えておりません。例えばロードマップ11頁には、学校や自治体、民間事業者といった主体(関係者)ごとに「分散管理を基本」とする旨明記をしておりますし、同頁の利活用の関係者に国は列記されておりません。また、こどもに関する教育・保育・福祉・医療等のデータ連携の箇所でも、「国が一元的にこどもの情報を管理するデータベースを構築することは考えていない」旨赤字で明記をしております。

 

 分散管理が基本、ということは、当時、繰り返し強調されていたような気がします。。

 このロードマップでは、「教育データ利活用のルール・ポリシー」について、検討の方向性として「教育データの利活用の原則のほか、1人1台端末を安全・安心に利活用するためのガイドラインや教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインの方向性、個人情報などデータの取扱いが問題となる局面について整理。」(P2)とされています。

 P37では、教育データ利活用のルール・ポリシー(データの取扱いが問題となる局面)について、論点が記載がされています。「個人情報として蓄積・利活用する側面と、非個人情報として利活用する側面を分けて考える必要」「教育分野固有の論点(例:児童生徒本人が契約主体となれないこと)についても検討を深める」など、大変興味深い内容になっていますので、ご関心のある方はご一読いただくことをおすすめします。

 ちなみに、後ろの方のロードマップを見ると、「必要に応じ、・・・検討」「課題を踏まえ、必要な措置を実施」などとなっていて(P51)、あまり具体的なことはわからないのですが、、いずれにしても、今後検討が必要な課題として、個人情報のことも記載されています。

 

(教育データは誰のものか?)  

 子どもの教育データを国が一元管理するという誤解から、当時、やや炎上したような形になってきた気がするのですが、それはそれとして、日々の学校教育活動で蓄積されていく教育データは、いったい誰のものなのでしょうか。。

 まず、データについては、有体物と違って、所有という概念がないので、、どのように情報を管理するかのルールが重要になってきます。この点について、教育データ利活用のロードマップでは、「教育データの利用パターンは、関係者毎に多岐にわたっており、情報種類別に保存先も異なっている。必要な情報を適切に関係者に流通させるためには、データの分散管理を基本としつつ、データの標準化や流通のための基盤・ルールが必要」(P11)という結論に落ち着いたようです。

 具体的なルールがいずれ定まっていくものと思いますが、当面は、個人情報に当たる教育データの扱いには特に注意する、、ということなのかな・・と思います。。

 

(ポイント)  

・子どもの教育データは、関係者の分散管理が基本(国での一元管理はしない)。

・教育データは誰のものか? という問いに、直接の回答はない。

 (データには所有権の対象にならないので。)

・教育データの取扱いのルールなどは、今後整理されていく方向。

 (当面は、個人情報に当たるデータの扱いに特に注意しておく)