(デジタル化を推進する法律の整理)
これまで、4月に成立したキャッシュレス法から遡るような形で、行政手続等のデジタル化を推進する法律を見てきました。また、その後、民民間での文書保存や書面交付のデジタル化に関する法律や、デジタル改革の基本法についても見てきましたが、ご紹介した法律の数も増えて、ごちゃごちゃしてしまっていると思うので、一度、これまで出てきた法律を整理してみたいと思います。
基本法、行政手続のデジタル化、民民間の手続のデジタル化という類型に分けて、時系列で整理してみようかなと思っています。分類などについては、もっといい分け方があるのかもしれませんが、まずは、やってみようと思います。
(基本法)
まず、デジタル化に関する基本法ですが、以下の2つを見てきました。
◯IT基本法(2000年)
◯デジタル社会形成基本法(2021年)
デジタル化に関する基本法としては、このほかに、官民データ活用推進基本法という法律が、2016年に制定されています。2010年代に入って、ビッグデータという言葉が定着し始める中で、データの利活用の重要性から制定された法律で、官民データの活用推進に関する基本理念、基本的施策の提示や基本計画の策定などについて定めています。なお、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」は、この法律の「官民データ活用推進基本計画」も兼ねています。
基本法については、この3つですが、IT基本法は廃止されているので、現在は、デジタル社会形成基本法と官民データ活用推進基本法の2本です。デジタル化に関して基本法が2つあるのは、豪華な気がしましたが、調べてみると基本法と名の付く法律は50本以上あるので、そうでもないのかもしれませんね。。
(行政手続のデジタル化)
行政手続のデジタル化については、以下の3つを見てきました。
◯行政手続オンライン化法(2002年)
◯デジタル手続法(2019年)
◯行政キャッシュレス化法(2022年)
デジタル手続法は、行政手続オンライン化法が改正されたものですので、こちらも現在適用される法律は、2本ということになります。
いずれの法律も、他の法律でデジタル化を認めないような規定がある場合に、これらの法律(デジタル手続法や行政キャッシュレス化法)を根拠に省令で定めることで、デジタル化が可能になるという仕組みになっています。他の個別法に対して、通則法的にデジタル化を可能とするわけですね。
(民民間の手続のデジタル化)
民民間の手続のデジタル化については、書面の保存に関しては、以下の2つの法律が通則法的にデジタル化を可能とするものとして制定されています。
◯電子帳簿保存法(1998年)
◯e文書法(通則法)(2004年)
このほか、個々の法律で、例えば、書面の交付や会議の開催等のデジタル化を可能とするものが数多くあると思いますが、一括法の形で多くの法律を一度に改正した例としては、以下の2つがあります。
◯IT書面一括法(2000年)
◯デジタル社会形成整備法(2021年)
これらの一括法は、いずれも、IT基本法(2000年)、デジタル社会形成基本法(2021年)という基本法が審議・制定されたときに、合わせて改正が行われたものとなっています。
(まとめ)
まとめ、というほどでもないですが、整理すると以下のようになるでしょうか。
こうしてみると、2000年のIT革命の頃に、デジタル化に関する法制度が大きく整備された様子がわかります(青い帯の部分)。また、2020年前後の最近の状況(オレンジの帯の部分)ですが、DXの進展やコロナ禍の中で、2000年頃に整備された法制度が再整備され、デジタル化の推進が加速化されていることが分かるかと思います。
今回は、これまでに見た法律の整理ということで、取りあえずここまでにします。この他にも、電子契約やシステム基盤整備に関する法律などもありますし、より適当な分類や整理ができないか、引き続き考えてみたいと思います。