(どんな法律なのか)
工業所有権に関する手続等の特例に関する法律は、特許庁の所管する知的財産権に関する法令に基づく手続のデジタル化を可能とする法律です。
行政手続のデジタル化を通則法的に可能とする法律としては、デジタル手続法の前身となる行政手続オンライン化法が2002年に制定されていますが、それに先行して、この法律によって、工業所有権に関する手続は、通則法的にデジタル化がされていたわけです。
工業所有権と言うとなじみがないかもしれませんが、特許、実用新案、商標などに関する権利の総称と思ってもらえればよろしいかと思います。
(主な規定)
主な規定としては、特許出願等の手続について、「電子情報処理組織を使用して行うことができる」という形で、オンライン化を可能としている規定が置かれているほか、
口座振替等での登録料の納付方法についても定められています。
主務省令で定めることで、オンライン化を可能とするスキームなど、後の行政手続オンライン化法やデジタル手続法に先行するような規定ぶりになっています。
(電子情報処理組織による特定手続)
第三条 手続をする者は、経済産業大臣、特許庁長官、審判長又は審査官に対する特許等関係法令の規定による手続であって経済産業省令で定めるもの(以下「特定手続」という。)については、経済産業省令で定めるところにより、電子情報処理組織を使用して行うことができる。
2 前項の規定により行われた特定手続は、前条第一項の特許庁の使用に係る電子計算機に備えられたファイル(第五条第三項並びに第十三条第二項及び第三項を除き、以下単に「ファイル」という。)への記録がされた時に特許庁に到達したものとみなす。
3 第一項の規定により行われた特定手続については、当該特定手続を書面の提出により行うものとして規定した特許等関係法令の規定に規定する書面の提出により行われたものとみなして、特許等関係法令の規定を適用する。
なお、「電子情報処理組織」の定義規定も置かれています。
(定義)
第二条 この法律において「電子情報処理組織」とは、特許庁の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)と、特許出願その他の工業所有権に関する手続(以下単に「手続」という。)をする者又はその者の代理人の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。ただし、第十三条第二項及び第三項においては、特許庁の使用に係る電子計算機と、同条第二項に規定する情報の提供を受けようとする者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。
(特許公報)
このほか、情報を公告するために発行する特許公報等の発行のデジタル化の規定も第13条に置かれています。
具体的には、第2項で、インターネットで発行できる規定が置かれていて、第3項では、発行時期をいつの時点にするかについて規定が置かれています。
(磁気ディスク等による公報の発行)
第十三条 特許法第百九十三条の特許公報、実用新案法第五十三条の実用新案公報、意匠法第六十六条の意匠公報又は商標法第七十五条の商標公報(以下この条において「特許公報等」という。)は、経済産業省令で定めるところにより、磁気ディスクをもって発行することができる。
2 特許公報等の発行は、特許公報等に掲載すべき事項であって特許庁の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された情報を、経済産業省令で定めるところにより、電子情報処理組織を使用して送信し、これを当該情報の提供を受けようとする者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法によりすることができる。
3 前項に規定する方法による特許公報等の発行は、特許公報等に掲載すべき事項を特許庁の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに入力し、当該ファイルに記録された情報の提供を受けようとする者の求めに応じてその使用に係る電子計算機に特許庁の使用に係る電子計算機から送信し得る状態となった時に行われたものとする。
12月のデジタル臨調で公表された「アナログ規制の見直し工程表」には、官報の電子化についても記載されていて、今後の新法制定についても報道等がされていましたが、このような特許公報のデジタル化の規定ぶりなどが、先例になっていくのかもしれないな、、と思いました。(単なる感想です。。)
(参考)