デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

デジタル改革関連法(2021年)について(1)

(デジタル改革関連法について)

 デジタル改革関連法とは、一つの法律ではなく、以下の6つの法律の総称です。いずれも、2021年の第204回国会で審議され、成立しています。

 デジタル社会形成基本法

 デジタル庁設置法

 デジタル社会形成整備法

 公金受取口座登録法

 預貯金口座管理法

 自治体システム標準化法

 

 デジタル社会形成基本法については、前回ご説明していますので、残りの5つの法律について、簡単に内容を見ていきたいと思います。

 

(デジタル庁設置法)

 デジタル庁設置法は、デジタル社会の形成に関する行政事務の迅速かつ重点的な遂行を図るため(デジタル社会形成基本法第36条)、内閣の下に、デジタル庁を設置するという法律です。

 デジタル社会の形成に関する司令塔として、行政の縦割りを打破するため、他省庁への勧告権など、強力な総合調整機能を有する組織となっています。

 デジタル庁の所掌事務としては、デジタル社会の形成のための施策に関する基本的な方針に関する企画立案や総合調整等(第4条第1項)のほか、デジタル社会の形成に関する重点計画の作成、官民データの利活用、マイナンバー、 国の情報システムの整備等(第4条第2項)の業務を推進することとされています。

 このほか、組織に関して、内閣直属の組織であること(第5条)、長は内閣総理大臣であること(第6条)や、デジタル大臣等を置くこと、デジタル大臣は関係行政機関の長への勧告権を有すること(第8条)などが定められています。

 

(デジタル社会形成整備法)

 デジタル社会形成整備法については、前回の最後でも少し触れました。正式名称は、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」で、様々な法律の改正がセットになっていますが、主なものとしては、個人情報関係3法の統合、押印・書面手続きの見直し(48本の法律を改正)、マイナンバーカードの利便性の向上、に関する改正を押さえておけばいいのかな、と個人的には思っています。

 

 まず、個人情報関係3法の統合については、個人情報保護法行政機関個人情報保護法独立行政法人個人情報保護法の3本の法律を1本の法律に統合を行うとともに、これまで各自治体の条例でばらばらに定められていた地方自治体の個人情報保護制度についても、全国的な共通ルールを設定し、所管を個人情報保護委員会に一元化しています。

 次に、押印・書面手続の見直しについては、手続を定めている個別法48本を改正しています。個々の法律の改正内容については、また機会があればご紹介したいと思いますが、例えば、民法については、以下のような改正がされています。

民法(明治二十九年法律第八十九号)

第四百八十六条 (略)

2 弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。

 

第九百八十四条 (略)この場合においては、第九百六十九条第四号又は第九百七十条第一項第四号の規定にかかわらず、遺言者及び証人は、第九百六十九条第四号又は第九百七十条第一項第四号の印を押すことを要しない

 

 第486条の第2項の追加は、いわゆる領収書の電子交付を求めることができる規定になっています。第984条の後段の追加は、押印を不要とするものになっていますね。(他にもご紹介したいのですが、IT書面一括法のときの反省もあるので、今回は、民法の例にとどめておきます。)

 以上、二点目の押印・書面手続が少し長くなっていまいましたが、三点目のマイナンバーカードの関係では、 医師免許等の国家資格に関する事務へのマイナンバーの利用の範囲の拡大や、 マイナンバーカードの発行・運営体制の抜本的強化について、マイナンバー法等の改正が行われています。

 

 ここまでで、とりあえず、デジタル改革関連法6本のうちの半分を紹介し終わりましたので、残りは次回にしたいと思います。

 

(参考)

www.digital.go.jp