デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

行政文書管理のデジタル化

(行政文書の管理)

 前回、公文書管理のデジタル化について、少し触れたので、この機会に、関連の法令等について、備忘的に見ておきたいと思います。

 まず、行政文書の管理については、以下の法令等で、ルールが定められています。

 

・公文書管理法

・公文書管理法施行令

・行政文書の管理に関するガイドライン

・各府省の行政文書管理規則

 

 大雑把に言えば、公文書管理法では、行政文書を含む公文書の管理に関する基本的事項が定められていて、各府省が、適正な文書管理のために、行政文書管理規則を策定しなければならないことなども、この法律で定められています(公文書管理法第10条)。

 

(行政文書管理規則)

第十条 行政機関の長は、行政文書の管理が第四条から前条までの規定に基づき適正に行われることを確保するため、行政文書の管理に関する定め(以下「行政文書管理規則」という。)を設けなければならない

 

 また、各府省が、この行政文書管理規則を策定する際の参考にできるよう、内閣総理大臣決定で、「行政文書の管理に関するガイドライン」が策定されており、規定の例や、 その趣旨・意義、実務上の留意点の解説等が記載されています。

 行政文書管理のデジタル化については、このガイドラインで考え方が示されています

 

(行政文書の管理に関するガイドライン

 以下、行政文書の管理に関するガイドラインにおける、行政文書管理のデジタル化に関する部分を抜粋します。

 

第3 作成

2 文書の作成等

(4) 法令等の定めにより紙媒体での作成・保存が義務付けられている場合、電子的管理によってかえって業務が非効率となる場合等を除き、電子媒体により作成又は取得することを基本とする

 

≪留意事項≫

⑪ 2-(4)における電子媒体による「取得」を基本とすることについては、紙媒体での取得を行わないという趣旨ではなく、ガイドラインや規則における規定のみを理由に、国民からの紙媒体での提出を拒否することがないよう留意をする必要がある。

⑫ 職員が電子メールやSNSで発信等した文書についても、行政文書に当たる可能性があり、該当する場 合には行政文書として適切に管理する必要がある。

 

第5 保存

2 保存

(2) 行政文書については、法令等の定めにより紙媒体での保存が義務付けられている場合、電子的管理によってかえって業務が非効率となる場合等を除き、電子媒体により体系的に管理することを基本とする

 

≪留意事項≫

電子媒体で取得・管理できるよう、行政手続のデジタル化を進めることが重要であるとともに、紙媒体で取得した行政文書についても、適切にスキャナ等で読み取ること等により、電子媒体に変換し、当該電子媒体の文書を正本として管理することができる。その際、媒体変換前の紙文書は、第4-3-6①の「別途、正本が管理されている行政文書の写し」に該当するとして、保存期間を1年未満と設定できる。

⑥ 行政文書ファイルの編てつに当たり、相互に密接な関連を有する文書の一部を紙媒体で管理せざるを得ない場合には、電子媒体と紙媒体で一つの行政文書ファイルを構成することが分かる形で管理するものとする。

⑦ 個別的な業務を処理するために運用されている政府の情報システムに格納されているデータについては、行政文書に該当し、公文書管理法のルールに基づく行政文書の整理・保存、移管又は廃棄等の適切な管理が求められる。

 

 以上のように、行政文書の作成・保存ともに、電子媒体で行うことが基本とされています。原本・正本のデジタル化が図られていると言ってもよいかと思います。

 

(行政文書の電子的管理の基本的方針)

 現行の制度等の備忘としては、以上で十分かと思うのですが、行政文書管理のデジタル化については、2019年3月に「行政文書の電子的管理についての基本的な方針」が内閣総理大臣決定の形で取りまとめられています。

 行政文書管理のデジタル化について、端的にポイントが示されていると思いますので、最後に関連部分を抜粋して、ご紹介させていただきます。

 

2.取組の理念

(1) 電子媒体の正本・原本化

 閣僚会議決定を踏まえ、今後作成・取得する行政文書については、行政文書の所在把握、履歴管理や探索を容易にするとともに、管理業務の効率化に寄与する観点から、電子媒体を正本・原本として体系的に管理することを基本とし、そのための枠組みを構築することとする。ただし、法令等の定めにより 紙媒体での作成・保存が義務付けられている場合や、電子的管理によってかえって業務が非効率となる場合は、「電子決裁移行加速化方針」(平成 30 年7月 20 日デジタル・ガバメント閣僚会議決定)や、「デジタル・ガバメント実行計画」(平成 30 年7月 20 日デジタル・ガバメント閣僚会議決定)に基づく取組 の結果、制約が解消された場合には順次、電子的管理を行うこととする。

 

 なお、この基本的方針策定の背景となった、公文書管理を巡る諸問題については、参考欄にあります参議院のレポートをご参照いただければと思います。

 

(参考)

www.archives.go.jp

www3.keizaireport.com