デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

学校とデジタル化:個人情報を流出した教師の責任(個人情報(6))

(毎年300人前後が処分)  

 教師が個人情報を流出させた場合、どのような責任を負うのでしょうか?

 毎年、教育職員の懲戒処分等の状況が、文科省から公表されていますが、個人情報の不適切な取扱いによって処分を受けている教師は、毎年300人前後にのぼります。

https://www.mext.go.jp/content/20230116-mxt-syoto01-000026693_02_05.pdf

 直近のデータとなる令和3年度では342人、令和2年度は260人、令和元年度は312人となっています。このほかに監督責任を問われた人数は、188人、151人、187人となっています。

 令和3年度の懲戒処分の種類別では、免職1人、停職1人、減給7人、戒告10人です。加えて、訓告等が323人となっています。多くは訓告等ですが、普段一生懸命に教育活動を行っている人でも、落とし物をしただけで処分されてしまうことになりかねませんので、本当に注意が必要だと思います。。

 

(損害賠償額は一人当たり3000円〜5000円)  

 個人情報を流出させてしまった場合、被害者から慰謝料の請求をされることがありますが、裁判では、「情報の項目」「二次被害の有無」「その後の対応」などを踏まえて、個別具体のケースごとに賠償額を決定します。

 流出した情報の項目が一般的な連絡先で、二次被害もない場合は、一人当たり3000円 ~ 5000円程度が相場のようです。(ベネッセコーポレーションの関連会社からの情報漏洩事件の賠償額もこの範囲でした。)比較的定額のように思えますが、✕人数分が必要になりますし、個人で負担するとなると、結構な金額になりますね。。

 

 このほか、個人情報保護法には、刑事罰の定めもありますが、こちらは、故意犯のみが対象で、うっかりで流出させたというような、過失の場合の処罰規定はありません。

 すごく大雑把ですが、個人情報を流出した場合の、行政、民事、刑事それぞれの責任については、以上にしたいと思います。

 

(ポイント)  

・個人情報の不適切な取扱いで、毎年300人前後の教師が処分を受けている。

個人情報流出の慰謝料の相場は、一人当たり3000円 ~ 5000円程度。

・個人情報法で定められている刑事罰は、故意犯が対象。