デジタル化に関する法制度の備忘録

行政手続等のオンライン化やキャッシュレス化など、デジタル化に関する法制度について書いてます。

学校とデジタル化:個人情報とプライバシー(個人情報(7))

(プライバシーとは?)  

 個人情報とプライバシーとは、普段あまり区別なく使っているかもしれませんが、厳密には、違う概念です。個人情報について、ここまで見てきましたが、最後にプライバシーとの関係について、簡単に見ておきたいと思います。

 まず、プライバシーについて、法令上の定義などはありません。総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」では、プライバシーについて、「一般に、“他人の干渉を許さない、各個人の私生活上の自由”をいうと考えられています。いいかえると自分が他人に知られたくない情報のこと」との説明がされています。

プライバシー情報の取扱い|国民のためのサイバーセキュリティサイト

 具体例としては、個人の氏名や住所、写真、私生活上の事実や秘密などがあげられていますが、インターネットでプライバシーに関する情報が流出すると、あっという間に拡散して、完全に消去することは困難ですので、特に注意が必要です。

 

 裁判でプライバシーの侵害が問題となったものとして、「宴のあと事件」(東京地判昭和39年9月28日)があります。この判決では、プライバシー権を「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」とし、以下の3点を満たす場合に権利侵害が認められるとしています。

1 私生活上の事実または事実らしく受け取られるおそれがある事柄であること
2 一般的な感受性を基準にして公開して欲しくない内容であること
3 一般の人々にまだ知られていない事柄であること


 その後、情報化の進展に伴い、学説などでは、プライバシー権が、自己に関する情報をコントロールする権利(自己情報コントロール権)と理解されるようになってきています。

 以上のように、プライバシーの範囲は曖昧なのですが、自己に関する情報が相当に広く含まれますので、プライバシー情報のうち、個人が識別できる情報が個人情報という大小関係(包含関係)が示されている図を見ることもあります。。

 

プライバシーマーク)  

 個人情報の保護体制に対する第三者認証制度として「プライバシーマーク制度」があります。これは、個人情報について適切な保護措置を講ずる体制を整備している事業者等を評価して、その旨を示す「プライバシーマーク」を付与し、事業活動に関して「プライバシーマーク」の使用を認めるという制度です。

 個人情報に関する認証制度の名称に「プライバシー」とついていることからも、個人情報とプライバシーとが密接に関係していることが見て取れます。個人情報保護法は、「個人情報」の適正な取扱いにより、プライバシーを含む個人の権利利益の保護を図るものですし、あまり厳密に区別する必要もないのかもしれません。。

 なお、上記の通り、プライバシーと個人情報は全く同じではないので、個人情報保護法を遵守しているからプライバシー侵害もない、ということにはならない場合があります。プライバシーの権利が侵害された場合には、不法行為による損害賠償請求権や人格権に基づく差止請求が認められています。

 

(ポイント)  

・プライバシーの法的な定義はないが、自己に関する情報を広く含むという解釈。

 (一般的には、個人情報よりも範囲が広いと考えられている。)

・プライバシーの権利が侵害された場合、損害賠償請求権や差止請求が可能。